8・友達
伸ばした手をパシっとはじかれた
「あ。」
咄嗟に払ってしまったのかソルの視線が泳ぐ
私は伸ばした手をそっと引っ込める
「俺、とーちゃんも母ちゃんもいねーから、とーちゃんのダチだった鍛冶屋の大将の所で世話になってて。まあ、アツアツなのが足にあたっちまっただけ」
バツが悪そうにはにかみながらそそくさとズボンを上げて紐を結ぶ
「でもっそれ「んな事よりっ!俺が言いたかったのは!!さっきまでグズグズだったとこがもう傷跡になってて!!緑化の水の時は痛みが引いただけって感じだったのに、すげぇってことが言いたかったんだ!」
これ以上聞いて欲しくないのか私の言葉を聞く前にばばっと言い切るソル
さっきの火傷の痕はあたったというより押し付けたように見えた
本当にあたっただけなのだろうか?
「緑化の水は、実ごと食べた方が治んのかもしんねぇ。まだ、食うんだろ?」
ワクワクした瞳で私を覗き込むソル
私と変わらないぐらいの幼い子供があんな大怪我した状態で、私に気付かれないように振舞っていた現実に目頭が熱くなる
痛かったろうな
辛かったろうな
なんで会った時すぐに怪我してること言ってくれなかったの?
なんでそんな怪我の中緑化の実を1つだけって言えたの?
俺なんかより店で買取ってもらえよなんて、なんで言えるの
子供なんだからもっと我慢しないで『欲しい』って言えば良かったのに
なんて、優しい心なんだろう
ソルはいい子だ。
零れそうになる涙を前髪と帽子で隠す
「全部焼くから全部たべろ!」
「なんでだよヴァンも食えよ?一緒に食う方が美味いし!」
屈託の無い眩しい笑顔を直視できない
黙々と焼いてはソルに差し出す
「いや、だからヴァンも食えって」
「食ってる食ってる」
最初の4個を除いて23個焼いた
私は3個、ソルは12個ペロッと食べて残りは弟に食べさせてって無理やりソルに押し付けた
「ふはーーっこんな美味いもんこんなに食べたの初めてだ」
大満足!と立ち上がって、んーっと伸びをするソル。私も立ち上がり満面の笑顔につられて笑う
「足。どう?」
「んーーー。・・・お!綺麗になった!!」
ほらっ!とズボンを下ろして見せてくれる
先程の大怪我が嘘のように綺麗な両足が見えた
「よかったっ」
もう怪我を見てから私は気が気じゃなくて、味なんかわかんなくなってたよ
本当によかった!!
「ありがとな!」
ニッと少し照れながら笑うソルの笑顔がたまらなく可愛い
「友達なんだからもう隠すなよ?」
木の棒で灰の山を崩しながら火が残ってないか確認してるとソルが固まってることに気付く
顔を見ると目を見開き、嘘だろ?と言うような切ない顔で私を凝視してた
えっ?なに?私なんか変な事言ったかな?
「ヴァンは俺の。と、トモダチ・・・なのか?」
ギリっと歯を食いしばり怖い顔で胸に右手を当てギュッとシャツを握り込み苦しそうに言葉を吐き出す
えっ違うの?むしろ友達だとだめ?ん?この世界では友達って悪いものなの??あっ言葉遣い時々素になっちゃうからもしかして女と思われちゃったとか?
「俺たち友達じゃない・・・のか?俺はソルといると楽しいよ!友達って、ほら!たまには喧嘩もするけどすぐ仲直りなんかして!冗談とか言い合ったり。ソルの為だったら緑化の実だってこれからも探すし、あげるし!また一緒に美味しいもの探して食べたい!」
いざ友達を説明しようとするとうまい言葉が見つからない
ソル。そんな悲しい顔しないで
「ソルが悩んでたら話聞きたいし、俺が悩んだら俺の話も聞いて欲しい!友達ってそういうもんじゃないの、か?」
ソルの真っ赤な瞳が揺れる
「俺の友達・・・は。俺の・・・大事なものを奪ってく人だ」
「そんなの友達じゃない!」
潤んだ瞳。苦しそうに絞り出したソルの言葉が信じられない
ソルの周りはどうなってるの?
力が込められたソルの手に両手を重ねて真っ直ぐソルの瞳を見つめる
「そんなのがソルの友達なら俺はソルの友達になんか絶対ならない!ごめん!!」
私が何気なく言った友達って言葉はソルを傷付けちゃったんだ
ソルにとって、友達は自分のものを奪っていく存在
私がこれからソルの大事なものを奪っていくとおもわせてしまったんだ
「・・・ヴァンにとっての友達ってのは、一緒にいて楽しい奴なのか?喧嘩もして、美味しいもの一緒に食べたりするのか?」
「うん!大事なものなんか絶対に奪わない」
「ヴァンのいう友達ってのには、俺。なりたい・・・な」
くしゃっと瞳を細めて笑うとポロポロっと真っ赤な瞳から涙が零れた
ソルの左手が私の手に重なると顔を隠すように俯いて小さくソルの肩が揺れる
「俺の言う、友達ってのは助け合うもんなんだ。もうソルには森のこと教えて貰ってさ、沢山助けて貰ってるから。ソルが助けてって言ってくれたら、助けるよ」
「なんだよそれっ。勇者みたいだ」
眉をさげて困ったような、嬉しそうな笑顔
「俺が助けてってもしも言ったらな」
ピリッ
「「わっ!」」
ソルと私の重なった手から赤い光と白い光がふわっとでてくると二人の間で目の高さまで浮かび、ふたつの光が混ざると空中に溶けるように消えていった
「何?今の」
「友達の儀式??」
「え、そんなのあるの?」
「ない・・・と思う・・・」
2人してよく分からず目を丸くする
「ま、よくわかんねーけど、嫌じゃなかったな!」
「うん!綺麗だった!」
2人で木陰に座り、ソルが前に作ってくれた木の水筒で水を飲んでいるとソルはぽつぽつと話し出した
「俺の弟の名前、ルナンっていうんだ」
少し遠くを見つめて呟く
「1年ぐらい前、とーちゃんと母ちゃんが家に帰ってこなかった。俺とルナンは家でずっと待ってたんだけど、鍛冶屋の大将がうちに来て俺達の面倒みることになったって鍛冶場に連れ出してくれて・・・でもルナンはまだ4歳で、俺みたいにパキッとした色じゃなかったから存在してないみたいに扱われてる」
ソルが話してくれた話は
私が想像してたよりも過酷で残酷なこの世界の話だった
「鍛冶屋にレッドの魔法が使える人間は必須。今働いてる弟子達にはあまり強いレッドの人間がいないらしくて、大将は俺が7の神の日に鍛冶場で働く契約するならって事で俺達に食料と寝る小屋準備してくれたんだ」
「7の神の日って何?」
ソルはびっくりした顔をした
「7歳にならないと人間って認められないだろ?」
え、そうなの?
「7歳になるまでは人間じゃない。だから7歳じゃ無ければ例え殺しても罪にはならない、神に人として認められてねぇから。だから7歳にならないと仕事も出来ねえから、親がいない7歳以下の子供は普通じゃ生きられねぇ。大将はとーちゃんや母ちゃんみたいに優しくねえけど、ルナンと生きる為には俺はなんだってやらなきゃいけないんだ」
「た、例えば7歳だって嘘ついて働いたりはできないの?」
「ん?だってそれじゃ契約出来ねえだろ?」
この世界では仕事するのに契約しなきゃいけないのか、なるほど。で、人間って認められてないとそもそも契約が出来ないってことか
それにしても7歳までは人間じゃないって・・・
恐ろしい・・・
前は、子供は守られて当然だった、何も出来ない子供を大人が手を差し伸べ助けるべきなのに・・・。
親が死んだら子供も死ななきゃいけない世界だったなんて・・・
聞きたいことや理解したくないこの世界のシステムについてもっと知りたいけど、言葉を飲み込む
「ソル、森に来ない日は何してるの?」
ソルの日常を知ることの方が大事
「最近はだいたい薪割り」
思ってたより普通だ、よかった
「鍛冶屋だからなのか、馬鹿みたいに使うし、いくらあっても困んないんだ。薪割りは斧持ってやるからあんまりドルゴ達・・・大将の息子達が近寄ってこないんだ。ルナン守るのに丁度いいし、薪割りなんて皆やりたがらねぇから」
よくなかった!理由は超現実的だった
弟の体が弱いって話は前、緑化の実あげた時に聞いたな
「でもいいんだ。あと少し・・・。あと10日で俺の7の神の日なんだ。神の日になって契約して、契約が身体に馴染んだら俺にちゃんとした部屋を用意するって大将も言ってた。そこでルナンと暮らしていいって!飯も今みたいな屑パンじゃなくてちゃんとしたものになるし、給料もくれるって。あと10日なんだ、ルナンに暖かい部屋で休ませてやれるっ」
へへっと嬉しそうに笑う
「今ルナンは大丈夫?」
「おう、3日にいっぺん必ず旦那様って人が来る時?と、旦那様の所に行く時もあるみたいだけど、俺とルナンは小屋に閉じ込められるんだ。1回閉められたら1日は絶対あかねえから、大丈夫。そんときに森で食いもんとか、外で焚き火出来るように薪になりそうな木あつめてんの」
「と、閉じ込め・・・」
「隠してっけど、穴空いてんの。壁に。だから閉じ込めてられてるフリ、だな」
ニカッとソルは笑うけど、そんな笑顔で話すような内容じゃない。
これが親のいない子供にとっては普通の事なのだろうか?魔法があるこの世界で私もまあ、閉じ込められてはいるけど、子供を守る為の貴族?の常識かもしれないし
この世界の庶民?ん?平民?になるのかな?この世界の常識をレゼルちゃんやお父さんお母さんに聞かなきゃ
「ま!俺の話はこんな感じ!あと少しだし心配すんなって」
ソルは私に手を伸ばし帽子をポンポンと叩く
「ヴァンも色無眼で苦労してんだろ?さっきハッキリ目あった時見えた」
「色無眼?」
「瞳に色がないって事。髪の色濃い癖に目元隠すのよくわかんなかったけど、だから森のこともなーんも知らねえんだって、納得した!」
「納得・・・?」
「7の神の日まで隠されてたんだろ?神無しって言われて殺されない為に」
え?
神無しだと殺されるの?
突然のソルの言葉にドクンと心臓が跳ねた
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