7・緑華の実
_____________。
「ヴァーーーーーン!!」
「ソル!おはよー!」
ソルの為に薪を集めていた手を止める
初めて会った日から2週間が過ぎ、だいたい3日に一回のペースで会っている
ソルは森に来ている日はお昼ごろまで薪拾いをしたり、食べられる木の実や果物を集めたりしているので、瞬間移動で森のど真ん中にすぐに来れる私はソルと会う日は薪になりそうな乾いた枝を拾って待つようにしていた
あの日ソルが持って帰ったアボカドのような実は“緑華の実”というらしく万能治療薬であるポーションの生成に使う薬草の一種らしい
アボカドのような実の真ん中に黄緑色の水が少量入ってて、“緑華の水”といい、それを飲むことでもちょっとした切り傷や、体調を良くしてくれたりする効果があるらしい
ソルには弟がいるみたいで、弟に飲ませてあげたくて森の奥まで探しに来ていたらしい
ソルめっちゃいい子!
ソルと会うようになって少しずついろんなことを教えてもらっている
「さっきマッドスライムが通った跡みかけた、今日は川辺から離れんなよ」
「了解!」
森は奥へ行くほど大きく、凶悪な魔物がいるそうで、ソルと会った日見たマッドスライムも凶悪な魔物の一つで、切る、殴るなどの物理攻撃は全く効かない。あと、ドロッとしている見た目と違って割と素早いらしく、魔法が得意ではない冒険者は見かけたら逃げるのが鉄則なのだそう
そしてほとんどのスライムは水に入れないらしく、水へ逃げると怪我をしないで済む
マッドスライムが良く出るこの森では川を中心に狩りをしたり、採取をするのが基本なのだそう
ふと私の集めた薪を大きなかごへ入れているソルが普段と違う感じがした
「ソル、足怪我してる?」
「あ゛?・・・なんでもねーよ。つか、ヴァン一体何時に家出りゃこんなに集まんだよ…。ったく」
ソルが森へ来るのは大体9~10時。私は瞬間移動で遅くても8時頃には来れちゃうからね~
あははっ
怪我の有無はぐらかされちゃったけど、絶対右足かばってるよね
ソルは長ズボンで膝から下、足の裏までをテーピングのような感じで布でぐるぐると縛っていて靴は履いてない
靴は履かないの?と聞いたとき、地面を直接蹴れる方が俺は早く走れる、って言ってたっけ
獣人あるあるなのかも??
「ソル。はい、これ」
私は鞄から緑華の実を3つ取り出す
「来る途中、たまたま見つけたから」
「んな!・・・はあ。それ、すんげえ貴重なんだぞ?俺なんかに渡さないで、店で買い取ってもらえよ」
そう言ってソルは差し出した私の手を押し返す
「いや、たくさんあるからソルに使ってほしい!もともとあげようと思ってたし」
「は?」
何言ってんのコイツ?と顔に言いたいことが張り付いてるソルに鞄の中を開いて見せる
「わ!ヴァンすっげえな!!!」
例の第五感様が活躍してくれているのだ
”なんかあの辺ありそう”と直感的に思うとだいたいあの花が咲いているのだ、小さな傷なら治るって言ってたから見つけたら掘るようにしてる。一応、貴重らしいし、一つの花から複数掘れるので一個は残して埋めてる、また花が咲くようにね
たまに違う物を見つけることもある第五感様、そういうのは布にくるんで鞄の奥に入れてる
いつか、役に立つかもしれないしね!
「20個以上はいってね?これ」
「あはは」
実のところ、今もあっちの方になにかありそう~と第五感様が言ってる臭いけどこれ以上とっても使い切れる気がしないからちょっとだけ無視してる
「・・・じゃあ、1個だけ、もらう」
あげるついでにどうやって中に入ってる水?飲むのかしっかり見ておかなくちゃ
ソルは鞄から一つとるとアボカドのような実のへたのようなところをリンゴのようにかじると、ぺっとその辺に吐き出す
じーーーっと見つめる私の視線に気付いたソルはかじったところを私に見せてくれた
私がどんな些細なことでも聞きまくっているので、じっと見つめてる私をみて、察してくれたんだと思う
「かじると真ん中が空洞っぽくなってるんだ」
アボカドみたいな実は中身もアボカドのような感じで種があるはずの所が空洞になっていて緑色の液体が見えた
「これを飲むんだ」
ソルはくいッと飲み干すとニカッと笑う
「ありが「まだ足りないと思う」
ギクッと肩があがる
やっぱりね
「これ、水じゃないところは食べるの?」
「ん??たべねーよ?」
ソルの握ってる実をソルの手ごと引き寄せてためしにちょびっとかじってみる
んーーー。。。。なんか、しゃくッとして・・・生のじぇがいも?っぽい?
ほんのり苦くて・・・いや、だんだん苦みがっ
「ぺっ。しろよ?まずいだろ?」
少し俯いて考えてると私より、ほんのちょっとだけ背の高いソルが覗き込む
ソルの耳もピクリと立って、私の様子をうかがってるみたい
ぐっはぁっ。かわいい!
「っ!いやっうん!なかなか苦い・・・ねえ、ソルって火作れる?」
苦い口の中を無理やり飲み込む
「焼くのか?まっずいぞ??」
ま、まっずいの?まぁ、なんでもやってみたいお年頃ってことで
「やってみたいから、ほらっもう1個飲んで!」
ずいっと有無を言わさない態度で実を差し出す
「いや、1個でも「焼いた後ふたりとも1個ずつ食べんの!!」
「わ、わかったよ」
ソルが飲んでる間にぱぱっと枯れ葉で小さな山を作る
小枝も少し入れて・・・っと
「んじゃ、この山に火、よろしく!」
ソルはオッケーのように指で丸を作ると、シャボン玉を吹くかのようにふーーっと息を吐いた。シャボン玉の代わりのように炎が噴き出すと、枯れ葉の山に火をともした
「わあーーー!ソルすっごい!カッコイイー!!」
すぐ見様見真似で私も丸を作って息を吹いてみる
炎は出てこない
「バッカ!お前ブルーなんだから出るわけないだろ!ぶはっ」
お腹を抱えて大爆笑のソル
帽子の鍔につけている毛が青なので、ソルは私がブルーの魔痕持ちだと思ってる
いや、出ないのは、わかってたよ!でもやってみたくなるじゃん!炎がそんな形で出てくるって思ってなかったし!
「むぅ・・・」
つぼったのか笑い続けてるソルを放置して、さっそく焼いてみる
このまま火にぶっこんじゃうと焦げ焦げになるし・・・
近場に転がってた石を何個か火の中へ入れてみる
石が鉄板代わりにならないかな?ん?というより石焼き芋みたいな感じっぽい。直接火に当たらなければ大丈夫かな?
火が消えないように枯葉をたし入れながら石にソルのかじった実を2つと、かじってない実も2つ入れて様子を見る
かじった穴の中から見えていた緑色が紫色に変わっていく
火が入ると色が変わる感じなんだ!にしても、なんておいしくなさそうなお色で・・・
「はぁ、はぁ、・・。すっげえまずそう」
ようやく落ち着いたソルが後ろからひょこっとのぞき込む
「笑ったバツ!ソルから!」
「うげぇ。」
枝にさしてソルに差し出す。器用に歯で皮を剥ぐと小さく1口かじった
べっっっ
「まずい。モーレヅにまずい」
なんどもべっべっと口の中を吐き出してる
・・・。たべるのやめて「おーい!そりゃねーだろ!!」
にやーーっと私にも枝に刺さった実を差し出す
えーい、女は度胸だ!子供に食べさせたんだしわたしだって・・・
「俺は、最初にまっずいって言ったからな?」
ぐべあっ
オエっ
魚の内臓煮込んでマッシュしてさらに発酵したチーズを・・・
・・・これ以上はご想像にお任せしていおこう・・・
「ゾル、ごべんなざい」
「わかればいい・・・って!もったいねえ!飲んでねー奴も焼いてんじゃん!」
あ、忘れてた。まだ激マズ爆弾が・・・ん?
少し焦げて皮が割れてるところから見えている中の色がさっきと違う
小枝にさして、少し熱いけど手で皮をむいてみる
「「おおぉーー!!!」」
さっきとは全く違う、凄く熟れたサツマイモのような濃いオレンジ色でほくほくしてて、こっちは別物のように美味しそう!!!
「ちょっっ!ちょっとまてっ俺も一緒に食う!」
ほのかな甘い匂いが鼻をくすぐる
ソルも大急ぎで歯で器用に皮をむく
「「せーーの!!」」
んんんんんんんんnnnnぅん!!
うんまあぁぁあぁああいい!!
この世界に生まれて食べた、どんなものよりも美味しい!!!
蜜の詰まった極上のサツマイモ、でも食べ進めると中心にあるはずの空洞がなく、コクのある優しい香りの濃厚なバターのようなとろみ・・・
ほどよい良い甘さが口の中であふれて、口の中がとにかく幸せっ
はっ!!
いつの間にかもうない!!!あれ?もう食べちゃったの?!
ソルとピタッと目が合う
「「やこう!!」」
ソルはシュバババッっと枯葉を集め、私は鞄の中の実をどんどん石の上へ出していく
あっ
「ソル足・・?痛くない?」
「あ、そーいや水飲んだ時は痛いがちょっと無くなった感じだったけど・・・」
ソルはズボンを止めてた紐をほどいて自分のズボンの中を覗き込む
「?!ありえねえ!!すっげえ!!! 俺!昨日の夜!!・・・ここ!!。でっけえ火傷してて!でもみろよ!」
そう言ってズボンを下ろして右足の太ももを指さす
ちょっまっ!!
よかったパンツはいてた!!って28のおばばが一瞬照れちゃったじゃな・・・
ヒュッ と、頭が一瞬真っ白になる
「ど、どうやって、、、そんなでっかく火傷した・・・の?」
「へ?」
指さした先、右足の太ももの外側に手のひら3つ分はありそうな太く、大きな棒状のやけどの跡。
左足にも、紫に変色した打撲痕や切り傷の痕が複数見える
私はソルの着ているシャツへ手を伸ばした
ちょっとでもいいぢゃん!続き気になる・・・かも!
って思ってもらえるようがんばりまっす!
評価などしてもらえたら
飛び跳ねて喜びます!!
よろしくお願いします!