3・リバース
えっえええええ!?
「っっ!!!」
何が起きたのか、考えるよりも先に ゴンッ とひどい頭痛に襲われる
片手で頭を抱えながら目の前の木にもたれて、頭痛と闘う
な、なにがおきた?
できた?・・・
手のひらに感じる木の感触を確かめる
あはははっ 外に出れてる!
頭は痛いし、視界もグラグラで体調サイアク。
でもサイコー!
よかった!私、魔法使えたんだ!
でもとにかく頭がヤバい、今まで味わったことない頭痛のひどさに汗がにじむ
ううぅ。せっかく外に出れても、こんなんじゃ探検できない・・・
とにかく一回部屋戻んなくちゃっ
ボソッ「瞬間っ移動・・。」
・・・・。
あれ?なんも起こらない
さっき口に出して言ったのが、魔法ができた原因じゃない?
だめだっ頭痛すぎて、うまく考えらんないっ
ちゃ、ちゃんと、かんがえて・・・っ
私の部屋・・・大きなベッド・・・ふかふかのあの、枕に、
ぼふっと!!
また、電気が走るような感覚がした
触れていた木の感覚が無くなって ふわっと横になった体勢でベッドに包まれた
やったっっっぃあああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!
先程とは比べられない程、激しい頭の痛み。さらにはひどい吐き気まで。
頭を抱え込みながら何とかベッドの端まではたどり着いたけど、我慢できず胃の中の物を床へ吐き出してしまう
ベッドの横の呼び出し・・のベルを・・・・
今まで一回も鳴らしたことない、ベルへ手を伸ばし・・・
目の前が真っ暗になった
___________・・・・・。
「・・・嬢様!!!!!」
ん・・・レゼルちゃんの・・・声が・・・
ぼんやりとした意識の中、頭がトンカチで殴られ続けてるような激痛が響く
「・・・まさか?!毒っ?!・・・もう知られたというのか!?」
「いや、身体から毒の色は見られません」
お父さんの声・・・?あとは誰?
重たい瞼を薄っすらと開ける
涙が滲んでよく見えないけど、濃いピンク紫のような色が見える
「ヴァイスお嬢様・・・。何して遊んだんですか?この症状は・・・。まぁ、今はゆっくりお眠りください」
おでこにひんやりしたものが当たって、一瞬ピリッとしたと思ったら頭痛が少し和らいで私はストンと眠りに落ちた
__________
「あっお嬢様!!おはようございます!」
ゆっくり起き上がるとレゼルちゃんが嬉しそうに駆け寄ってくる
「ヴァイスお嬢様、おはようございます」
聞きなれない声がそばで聞こえてビクッと肩が上がる
ぱっと横を見ると目元に黒い布を付け、髪が濃いピンク紫のような色と左側は黒の2色の髪色で全身黒色のローブ?のような服を着た、不思議な雰囲気を纏った怪しげな人が座っていた
「レゼル、まだ朝早いですがランスロット様を呼んできていただけますか?」
「かしこまりました」
レゼルちゃんは頭を下げるとタタタっと部屋を出ていく
ガチャリ
レゼルちゃん・・・こんな怪しい人がいてもしっかり鍵を閉めてっちゃうんだ
「これで二人きりですね」
ニコッと男の人が笑う
「私、こう見えてもそこそこ腕の立つ医者としても有名なのですが、もともとは様々な研究を主軸に活動をしております。お嬢様がお眠りになってから5年間。定期的に訪問し、診ておりました」
男の人はにこやかにさらっと言いながらベッド脇に置いてあった水差しからコップへと水をそそぐと指でコップのふちを一周撫でる
そそがれた水がピンク色の液体へと変わると、そのコップを私に差し出す
え?これを飲めと??なんだかすんごい抵抗があるんだけど・・・
それになんかこの人何かぞくっと来るような嫌な笑顔してるし
差し出されたコップを仕方なく受け取るけど、飲みたくなくてコップをじっと見つめる
「大丈夫ですよ?甘くしましたので」
甘く・・・。まあ、さっき私を診てくれてたって言ってたし、お父さんももう少ししたら部屋に来るんだろうし、変なものではない・・・と信じてみよう
恐る恐る口をつけて一口飲む
ゴクン
あっ甘っ
ぱあぁ
一口飲んだ瞬間首からピンクの光がぽわっとあふれ出す
「ふふっこの毒はこのような反応を見せるのですね」
どくっ?!え?飲み込んじゃったよ!
とっさに持ってたグラスを投げつける
投げたコップは簡単に手ではじかれてしまう
喉からまだ光が出てる
口に突っ込んではきださなきゃっ
がばっと手を口に突っ込む
ぱしっ
「やっぱりある程度言葉わかってらっしゃるんですね」
両手をしっかりと捕まれてしまう
早く吐き出さなきゃっ
「嘘です。これは喉の緊張を解す薬です。声が出しづらいと聞いてましたので」
両手を捕まれ、暴れていた手を止める
く、薬?・・・嘘?
喉からの光が消える
「ぁ・・・・あーーーー。」
本当だ。今は苦しくない・・・でもなんで毒なんて嫌な嘘を?
戸惑いながら布に隠れてる男の人の目のあたりをじとっと睨む
私を掴んでた手が離れる
「ずっと気になっていたんです。ランスロットから聞いていた話である程度予想してたのですが、一般的な7歳の子供と変わらないか、それ以上の知識、考え方ができているように思います。間違いなく2歳の子供の考え方ではないですね。毒を吐きだそうなんて」
くすくすっと悪びれた様子もなく楽しそうな男の人
毒発言にパニックになっちゃったけど、よく考えたらさ。
このひと結構とんでもないこと言わなかった?
7歳の子供以上の考え方ができてるように思うって言ってなかった?
キッと男の人を睨む。
ガチャリ
「ヴァイス!身体はもう大丈夫か?」
さっとベッドのそばまで来てくれて、優しく頭をなでてくれるお父さん
コクコクとうなずいて、わかりやすく男の人をまたキッと睨む
「オイ。リアム・・・。なにした?」
「嫌ですね~怖い顔しないでくださいよ。ほんのちょっとお喋りしていただけですよ」
「はぁ・・・。私が来るまでは何もするなと・・・まあいい。ヴァイス、こちらは私の友の リアム・ビー・バトラー だ」
「気軽にリアムお兄さんと呼んでください」
ニッコニコと顔を覗き込んでくるリアムさん
私はお父さんの方へスススッと身を寄せて裾をくいっと掴んで引き寄せる
私のお父さん、貴族?っぽいし、
「ぉとーさまっ。このひと怖いです」
お父さんの顔を見上げてつぶやくと、キョトンとした顔からぱあっと顔が明るくなる、と身体がふわっと浮いた
「そーかそーか!!!声が!よかったなヴァイス!!おとーさまは声が聞けて嬉しいぞ!」
ガハハッと全力で笑いながら私を抱き上げくるくると回る
見た目は7歳でも、中身は28歳。
はっ恥ずかしい!!
「ゴホンッ。ランス、彼女の顔が真っ赤になってますよ」
「おおっと!すまんすまん」
満面の笑みのままそっとベッドへ降ろしてくれた
「ああ、それと。彼女の様子ですと、しっかり言葉、理解できいるようです」
「そうか、ここ数日、部屋での様子を見てそうだろうとは、思ってたんだ。2歳で眠ってしまってたが、誰にもわからぬ魔法がかかっていたことだし、もう何も驚きはしないさ。まあ赤ちゃんの頃も手のかからぬ賢い子だったしな」
2歳からずっと眠ってたら、普通考え方とかも2歳のままのはずだもんね。
ぐうううう。
「ぶはっ」「くすくすっ」
「ーーーーーっっ」
私のおなかの虫が飯をくれと大きく鳴く
昨日の午後前から眠ってて、今朝だからほぼ1日食べてないもん!
心の中で言い訳しながら、恥ずかしくて枕に顔をうずめる
「まずは皆さん朝食にして、その後改めて昨日のお嬢様についてと、魔力について話をしましょうか」
扉の前に控えていたレゼルちゃんはさっと朝食の準備を始め、お父さんとリアムさんは部屋を出ていく
そして再び部屋に集まった時
私はこの世界について少し知る
ちょっとでもいいぢゃん!続き気になる・・・かも!
って思ってもらえるようがんばりまっす!
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