29・フローラルトシティ
「ユーリちゃんおはよう。あら?・・・私何か見逃しちゃったのかしら?」
「ルティーナさんおはようございます!えっと・・・気にしないでください」
頬を膨らまし鋭い目付きで少し離れて立つレーンさんを睨み、私の服を掴んで一歩後ろを付いて歩くソルを見てクスクスとルティーナさんが笑う
私とレーンさんはあの後、街から少し離れた場所へ降りた、壁に囲まれた街が見える場所にある少し大きな石を私が覚えて、そのままこっちの焦げた木の下へ瞬間移動で帰ってきたのだけれど
ソルがカンカンに怒って待っていた
何故俺を起こさなかったのか、なんの為に一緒に寝たんだよ!と、私は怒られ、ソルにがっちりホールドされたまま眠った
そして起きてからソルはこの調子だ
ソルが手に持っていたうっすらピンク色の枕をルティーナさんに渡す
「・・・これで大事な時おきれなかった、魔法かかってるじゃねぇか」
むーっと口をふくらませ、ぶっきらぼうに言う
「えっ魔法?いたずら・・・じゃ?」
あれ?魔法かかってたの?この枕
「なんの事かしら?よく眠れたなら良かったわ」
ルティーナさんは笑いながらマジックバッグへ枕を収める
ソルのしっぽがバシッバシッと自分の足を叩いてる
不機嫌だなぁ
自分の足を叩いてる感情ダダ漏れしっぽ・・・
かんわいい・・・
「お前たちも食べるか?」
シャクっとリンゴを齧るような音をたて、ベディヴィアさんが後ろからぬっと現れた
右手には赤いリンゴっぽい果実を持っててシャクッシャクッと食べ進める
包帯を巻いてる左腕に5つ程乗せていたのでそっと2つ取る
「ありがとうございます!頂きますっ」
この世界のリンゴ!初めて見た!
1つソルに渡して、シャクッと齧る
真っ赤なリンゴは中身も真っ赤で味もリンゴのようだけど、前の世界のリンゴよりも、とびきり甘い!甘いのにスッキリしてる
美味しぃ〜!!
こういうリンゴでジャムとか、パイとか作ったらたまらない美味しさだろうなぁ
スイーツ、何でもいいから作りたいなぁ
こっちの世界に来て、御屋敷で食べたのってパサっとした紅茶のカステラみたいなものぐらいなんだよねぇ・・・
紅茶を飲むティータイムにお菓子を食べる文化が無いのか、それとも我が家ではださないだけだったのか?
果物もオレンジっぽいのと桃っぽいの食べたぐらいだし・・・
森の中で取った果実は酸っぱめで、すももっぽいのやパイナップルのような味したものが多かった
目を瞑り、様々なスイーツのレシピを頭に浮かべながらシャクッシャクッと食べ進める
いつか、スイーツ屋さんでもやったら生きていけるかなぁ
あっでも酵母とかベーキングパウダーとか作り方わかんないな
「・・・ーリ」
バターはこの世界にあるんだろうか?
生クリームとか作りたいなぁ〜ってかミルクって白いよね?
この世界では違う色なのかな?
貰った砂糖まだ見てないけどグリーンシュガーって言ってたっけ?緑色なんだろうなぁ〜
「ユーリ!」
ハッ
と目を開けビックリしながらソルを見る
「ご、ごめん。美味しくて考えごとしてたの」
「いや、いいけど・・・ロン毛の幼女好きが呼んでる」
「誰が、ロン毛の幼女好きだ!この野郎」
レーンさんがグリグリとソルの頭を乱暴に撫でる
「触んじゃねぇ」
ソルはレーンさんの手を振り払うと、私の服ではなく、私の手を握る
「ったく・・・ユーリ、さっきベディヴィアと話したが、何人まで同時に瞬間移動できるんだ?わかんねぇなら実験も兼ねて、みんなで昨日行った所まで行ってみねぇか?」
焚き火の跡を綺麗にしたベディヴィアさんもレーンさんの隣に来た
「自分の魔法の限界を知ることは大事だ、本当は道中でやりたい事もあったが、街に着いて依頼を受けて実戦形式でやるのもいいと思ってな」
「はい、やってみたいです」
やりたいことは昨日言ってたソルに森での生き方教えるって奴かな?
3人同時に瞬間移動は出来るんだよね
私とアレクとルナちゃんで瞬間移動できてるし
何人同時に行けるのか私も知りたかった
リンゴのように芯を残して食べ切る
ソルが私の手からンゴリの芯を取ると自分のと合わせて手のひらの上でボッと燃やした
一瞬で灰になり風に飛ばされた
「あっ熱くない?怪我しないでね?」
「こんぐらいの火じゃ怪我なんてしねぇ」
ぎゅっとソルの手に力が入った
「2人ともおはよう、聞いたよ?ユーリの瞬間移動ですぐ街へ行くんだって?」
「おはようございますデュードさん、できるか分からないですがみんなで行けなかったら2回に分けて行こうって思ってます」
「いいなぁユニーク・・・、僕ブラックの癖に苦手な魔法多くて・・・。ブラックの魔法は全然使えないし・・・もっと修行しないとだめだなぁ」
アハハっと力なく笑うデュードさん、昨日もちゃんと魔法は使ってたように思うけど、苦手な魔法もあるんだ?
でもそもそもさ、
「デュードさん、ブラックじゃないからブラックの魔法は使えなくてしょうがないんじゃないですか?」
だって頭の上に浮かぶ鑑定さんにgreen × magenta って書いてあるし
絵の具とかで緑と紫混ぜたら確か灰色っぽくなってたような気がする
パッと見ではまあ、灰色っぽいからブラックって思ってもしょうがないのかも?
「??・・・ブラックじゃなかったら何色ですか?」
キョトンと目を丸くするデュードさん
「グリーンとパープル?あ、違う、淡いグリーンとブルーが混ざったようなマゼンタ?だとデュードさんのようなクリーム色っぽいブラックのような色になると思いますよ?」
英語で色を表現するの難しいな
デュードさんのクリーム色がかった灰色の髪を見つめて言う
「まさか、ねぇ・・・アハハ・・・うん・・・」
少し首を捻りながら考え込んでしまった
私余計なこといっちゃったかな?
「さ、そろそろ行きましょうか?」
ルティーナさんの声で私の周りにみんなが集まってくる
「試してみたいことがあるので、みんなで輪になって手を繋いでみてもらってもいいですか?」
アレクとルナちゃんで瞬間移動した時は確かどっちとも私が触れてたんだよね
輪になって手を繋いで飛べるか試したい
瞬間移動の条件が私が触れてるか触れられてるか、なら手を繋いでだと飛べないという事になる
この瞬間移動の条件は早めに知っておいた方がいいと思うんだよね
私とすでに手を繋いでるソル
私の隣にレーンさんがスっと入って私に手を差し出す
その手をソルがべシッと払った
「ルティーナがいい!この変態とは繋ぐな!」
「このクソガキ」
2人の間に激しく火花が散る
ルティーナさんがやれやれ、と笑いながら私の手を取る
ソルが怒ってるのも分かるけど、私のせいでもあるし
レーンさん別に何にもしてな・・ちょっとイジワルはされたけども
「デレクちょっと言い過ぎ、もう怒るの終わり」
フンっと私からもそっぽを向くソル
「手を繋いだぞ」
みんなで輪になって手を繋ぐ
よし、イメージ・・・
この輪っかのまま昨日覚えた、街を囲む壁の見えるあの石へ
・・・
あ。だめだ
「ごめんなさい、ダメでした。もう一個試してもいいですか?」
今度はエイエイオーとするように円になったままみんなで真ん中に手を重ねるようにお願いする
この重なったみんなの手を上と下から両手でがっちりと挟んで
みんなの指に私の手が触れるようにする
触れてるよね
これで、あの場所をイメージすれば
「・・・出来た」
みんなで瞬間移動出来てしまった
「えっ?!凄いです!何の衝撃もなく一瞬で?!」
「まあ!凄いわ!」
皆の驚く声
体から抜けた魔力も2人で瞬間移動するのとあまり変わらないような気がする
これで1つ分かった
私が触れてないと一緒に瞬間移動出来ないんだ
「あっあの!ついでにもう1つ実験を・・・」
今度は中心に私、みんなにわたしの服をちょっとずつ握ってもらった
私が触ってなくても、服を掴んでいたら全員で飛べるのかを・・・
今度は焦げたあの木の下にみんなで立っているのをイメージ・・・
「目を瞑らないようにしてたのに!分からなかったです!」
出来てしまった!!
私の服を掴んでいる事、私が触れている事が
条件なんだ!
しっかり覚えておこう!!
フワっと私に大きな水色のローブをルティーナさんが掛けてくれた
「さっき忘れてたの、これから街に行くから2人ともしっかりフードも被っててね」
ソルにはベディヴィアさんが濃い茶色のローブを渡していた
「ではもう一度頼む」
ベディヴィアさんがローブ越しにわたしの頭のをぽんぽんっと撫でる
もう一度円になって皆手を伸ばす
私はまたしっかりとみんなの指に触れてるか確認して
あの石を思い出す
手を離して街を囲む壁、遠くに見える門に並ぶ列を見つめる
怖い気持ちもある、お父様やリアムさん達の関係者がいるかもしれない
せっかく1度離れたのに見つかって連れ戻されたらどうしようって思う
でも街を見て歩くのは正直楽しみで仕方ない
食べたことの無い食べ物も沢山食べたい
ワクワクドキドキしながら私は1歩踏み出した
__________
「割り込みーー・・・ベディヴィアの旦那じゃねえか!早かったな!」
列をすっ飛ばしていきなり門まで歩いて行ったベディヴィアさん達の後ろをソルと手を繋いだまま歩く
門には5人ほど簡易的な鎧を着た門番さんが居て、街に入る人や、荷車の中身をチェックしたりしていた
割り込んだにも関わらず並んでる人達も、わあっと声を上げ、本物だ!などと声が聞こえてくる
ベディヴィアさん達有名人??
これ私達も目立っちゃうんじゃ・・・?
「御苦労、依頼が早く終わった。この子等は私の親しい友人の子達でギルドへ登録に来た、身元は私が保証する」
「ベディヴィアの旦那の保証なら何も問題無いだろう、オイ。仮カード2枚持ってこい」
門の内側に向かって大声で叫ぶ少しにごった水色の髭もじゃの門番さん
フードを深く被ってて顔までは見られないようにレーンさんの後ろに隠れてる私達
教壇?みたいな細長い四角い柱のようなものに占い師が使う水晶玉のような透明なスフィアがクッションに乗せて置いてある
ベディヴィアさんは首からギルドカードを手に持つとその水晶玉にコツっと当てた
ルティーナさん、デュードさん、レーンさんもギルドカードをその水晶玉にコツっと優しく当てる
「お二人さんはちょいと待ってくれよ?」
ベディヴィアさんを残して3人が先に門に入ってしまう
ドキドキしながら水晶玉の横で仮カードというのを待つ
「待ってる間に顔見しといてくれ、一応門番なんでな」
少しだけフードを上げておじさんと目を合わす
_______________
ザッシュ
48 ♂1.30 cyan
フローラルトシティ所属:D級冒険者
南門警備責任者
_______________
「田舎から出てきたばかりでな、こういう街も初めてなんだ、あまり怖がらせないでくれ」
D級冒険者で門の責任者?
デュードさんは20歳でB級だったはず
この人が弱いのか?ベディヴィアさん達が凄く強いのか?
ギルドの中で余裕があったら周りをよく見ておこう
ソルの頭にベディヴィアさんが手を乗せて、少しだけフードをずらす
耳が上手に隠れてる
「悪ぃね僕達、これもおっちゃんの仕事だからな」
「最近変わった事はないか?」
ベディヴィアさんが門番のザッシュさんに話題を振る
私とソルはサッとフードを戻した
「いやー特に・・・あっでも変わった事といえば、少し前に領主様から新顔を通す時は顔を見ろってお達しが来たんだよ。まぁ、元々そういう決まりなんだが、わざわざ言うなんて王都の方でなんかあったんじゃねぇかって噂にはなったな」
「実際、王都で何かあったのか?」
「いや、それがてんで情報が入ってこねぇもんで。ただの警備体制の見直しだったんだろうなぁ」
ガハハっと笑う門番さん
私とソルは暗い顔でその話を聞いてた
若い人が門番さんに紐の着いた透明なタグ、仮カードを2つ受け取ると私達に差し出す
「1人づつカードを握ってくれ、自分の魔力を込めるんだ」
ソルがタグに触れると一瞬で真っ赤に染る
「こりゃ将来が楽しみなガキだな!ベディヴィアの旦那」
「ああ、私が仕込む予定だしな」
私は恐る恐るタグに触れる
一瞬で真っ白に染まってしまった
どうしよう
ヤバいっ
門番さんもえっ?と目を丸くしてる
腹巻のようにお腹に巻きついてたプティが腕に登ってくる
見えないように伸ばした手の下を伸びていくと、私の掌からちょこんと見えないようにタグに触れた
真っ白だったカードが少しだけ赤みを帯びた
良かった!ありがとうプティ!
「まっまあ、お前さんも頑張れよ」
だいぶ焦ったけど大丈夫そうだ
門番さんも苦笑いしながら、どうぞと水晶の前へ通される
みんながしていたようにコツっと優しくタグを水晶に当てる
「ようこそ、フローラルトシティへ!楽しめよ!」
門を潜り、視界が開けると大きな噴水のある広場、
レンガや大きなブロックでしっかり舗装された道
1度見た御屋敷の近くの街よりも人の賑わう声が響く活気のある街並みが拡がっていた
「わあっ」
思わず声が漏れる
「この街はこの辺じゃ1番大きな街だ、ここから中央までが市民街で一番活気のある場所だ」
噴水の前で手を振るルティーナさんの所へ2人で手を繋いだまま駆け寄る
「あっ来たわね!さぁ行くわよ!」
スタスタと歩いて行くルティーナさん
「ギルドですか?」
人の多さにドキドキする
もうギルド行くんだ
もうちょっと街並みを見て回りたかったかも
ソルがふわっと浮いたと思ったら手が離れてベディヴィアさんがソルを肩ぐるました
「おっ降ろせ!」
かぁっと顔を赤くして照れるソル
包帯を巻いてない手で今度は私を軽々と抱き上げる
「我々はルティーナに付き合わねばな」
ハッハッハと笑うとルティーナさんに続いて歩き出す
「まずは買い物よ!」
「僕、調べたいことあるんで後でギルド行きますね!」
デュードさんが走って行ってしまった
「俺もパス、いつもの宿屋で寝てるわ」
レーンさんまでスっと歩いてく
「ルティーナ張り切ってるから長くなりそうだな」
るんるんで歩いていくルティーナさんを優しい目で見つめるベディヴィアさん
お買い物!
私は凄くワクワクしていた
__________2時間後_
「やだもーぅ!ユーリちゃんもデレク君もどれも似合っちゃうから困っちゃうわ〜」
ソルはぐったりと椅子にもたれて座り込んでいた
「ル、ルティーナさん・・・私、動きやすい服が・・・」
今着せられてるのは御屋敷で着ていたような少しお上品なワンピース
私とソルはすっかり着せ替え人形にされていた
さすがに慣れない行動で気疲れしたけど、もしお母様と来てたらこんな感じなのかな?とか考えちゃったりもした
サクッと試着室でまた着替える
ソルのお坊ちゃん姿は正直眼福以外の何者でもなかったけども
真っ赤な顔、獣人用の坊ちゃん服はしっぽが出る穴もバッチリで
そりゃもうしっぽも、激しく恥ずかしがってたもんで
やば萌でしたよ
うん。
お金稼ぐようになったら絶対1着・・・いや、何着か買うんだ
ルティーナさんと店員さんが話し込んでるので私はグタッとしてるソルの所へ行く、ほかの店に行っていたベディヴィアが丁度帰ってきた
「楽しんでるかい?」
「はい」
「・・・もういい」
「ハハハッ。ルティーナも楽しそうで何より。最後にこれに着替えておいで」
薄汚れた濃い茶色の布の包みをそれぞれ渡される
「代金は君たちが討伐したビットラの素材を買い取ってもらった時に貰うから気にしないでくれ、冒険者ならその辺はキッチリしなければならないからな」
一瞬貰っても良いのか?と迷ってる私とソルの顔を見て当たり前のようにベディヴィアさんが笑う
大人の余裕ってやつなのかな
先回りして、私達が気にしそうな事をさらっと解決してくれる
「ありがとうございます」
私がくるっとまわって試着室へ行くと、ベディヴィアさんがソルに何か教えていた
私は特に気にせず試着室の扉を閉めた
・・・ヤバい
一気に冒険者っぽい!
今の私の髪の色に合わせ、薄い赤、濃い赤が全体的に使われてて
濃いめのくすんだ赤のタイトめな長ズボン、膝下まである少し大きめの動きやすそうなハイブーツ
腰には少し固めで太いベルト
ハイネックの薄い赤の長袖に、何かの皮?でできてるような胸当てと手の甲から肘までを守るプロテクター的な奴
服を包んでた薄汚れた布はマントで羽織って首元をベルトのようなものでとめる
プティが静かにゴロゴロと足元で転がって遊んでる
コンコン
「ちょっと入っていいかしら?」
「はい!」
ルティーナさんがサッと試着室に入ってきた
「しっかり冒険者の装いになったわね」
ニコっと笑う
「髪が短い間は男として振る舞いなさい?女の子は髪を伸ばすもの、と思われてるからよっぽど女の子のように振る舞わなければ顔が可愛くても男として見られるはずだわ」
そう言うと襟足の少しだけ長い部分をまとめて紐で括ってくれて、サンバイザーのように鍔だけついた帽子を私に被せる
「これで大丈夫。ギルドではできるだけ帰属語を使わないようにね?」
帰属語、敬語の事だよね
「みんな帰属語使わないんですか?」
「私やベディヴィアは貴族の方々と話すこともあるからいいけど、貴方のような子供がすらすらと話してるのは不自然なのよ?」
クスクスっと笑うルティーナさん
「最後にマントの内側を見てくれる?えっと・・・コレコレ!ポケットが着いてるでしょ?プティちゃんにってベディヴィアがさっき付けてもらったみたいなの」
マントの内側、右脇腹の辺りに蓋付きの大きめなポケットが付いてた
「わあ!ありがとうございます!」
プティも聞こえてたみたいで私の足を伝って登ってくるとトゥルンっとポケットに入った
「ぴっぴぃ!!」
嬉しそうに震えてる
可愛いっっ
「ベディヴィアハイネックを選んだのね、これからの季節少し暑くなるかもしれないけど、ハイネックはぐっと伸ばすと口元も隠せるわ、顔を隠したい時はぐっと伸ばしてね?あなた達のこれからのこと考えて選んであるみたいで良かったわ」
「何から何まで本当にありがとうございます」
私はぺこっと頭を下げ、借りていた水色のローブを返す
「気にしないで?私達がやりたくてやってるんだからね」
私は今まで来ていた服をマジックバックに収めて、ルティーナさんに続いて試着室を出る
「わあ!デレク?!」
試着室を出ると雰囲気が変わったソルが立ってた
いつも爆発してる髪がワックスのようなもので整えられ、毛先が濃い黒に染まっている
私と同じサンバイザー的な帽子を付けてて、耳がなくなってる!
いつもの活発な雰囲気からガラリとかわって大人びて見える
私と同じマントを手に持ってて服装は濃いめの赤と黒に近い灰色のツートーンで私と同じ胸当てに腕のプロテクターを付けてる
しっぽも見えない
私と色違いコーデだ
「すっごい!似合ってるよ!これ耳どうなってるの?」
顔が真っ赤で可愛い
耳があるはずの場所に手を伸ばすと見えないけど、耳がある感触
「獣人用のイヤーカフって奴らしい、見えなくしてるだけなんだってさ」
イヤーカフ!
魔道具的なものなんだろうな
あ。あれか、アレクが作ってた姿を隠すマントみたいな原理なのかな?ミラースライムの何かとか言ってたっけ
「デレクは色が濃い分目立つだろう、だから見た目の印象を変えておいた方が都合がいいと思ってな、容量は大きくないがマジックバックももう1つデレクに渡しておいた、その中に髪をまとめるブラックジェルも入れてある、街にいる間はユーリがまとめてやってくれ」
「ベディヴィアさんありがとうございます!」
毛先が黒いのはジェルでなんだ!
なんか凄いな
めっちゃ自然
マントを羽織るソル
ベルトを止めるのに苦労してるので私がとめてあげる
「お揃いで嬉しい」
「デレクは文字書けるか?」
「おう」
「なら大丈夫だな、これからギルドに登録に行くが、ギルドカードを握る時、刻みたい名前を文字でしっかりイメージして魔力を込めろ、間違っても魔力だけを込めたらダメだぞ?」
‘’刻みたい名前を文字で”
その言葉にすこしひっかかりを覚えながら
ルティーナさんがまた小さい声で店員に何かお願いした後
4人で店を出た
割と門の近くの店を3件程ウロウロしていた私達は門とは反対に奥へ向かって歩き出す
あとでベディヴィアさんに武器屋みたいな所があったら行ってみたいって言ってみよう
弓矢か、何か飛び道具を見てみたい
一応、お金はマジックバックに入ってる
多分かなりの金額が
出来るだけ使わないようにしたい、もしどうしてもお金が必要になったら1回借りるという形にして冒険者として依頼を受けたりして必ず返そう
うん。初期投資で借りるだけ
ソルを大事に思ってくれた人が渡してくれたこの鞄はいつか帰れるようになったら必ず返したい
「この先に、街の中心を示す大噴水広場、それを囲むようにぐるっと冒険者ギルド、商人ギルド、騎士待機所、衛兵詰所、王都立図書館、大教会と並んでいるんだ」
メインの建物が集まってる広場になってるんだ
30分ほどのんびりレンガの建物の街並みを行くと一気に視界が広がる
「ここがこの街の中心、大噴水広場よ」
門からひたすら真っ直ぐ
綺麗な大きな噴水が見える
そして人も凄い
噴水に腰掛け、出ている屋台を食べ歩きしてる沢山の人
貴族は馬車の中なのだろう
正面奥の大きな門の前で何台もの馬車が並んでいる
「あの門の両脇が衛兵詰所、門の先が貴族街になっている。隣のブラックの建物が騎士待機所だ。まぁ近付かないのが無難だな」
「左手のこれが冒険者ギルドよ」
ドンっと茶色のレンガで作られてる横にも縦にも大きい建物
道にはみ出て机や椅子が並び
屈強な薄汚い男達が朝から酒を片手に飲んでいる
ファンタジーの世界の冒険者ギルドって
1階が酒場になってるイメージある
不思議だ
道を挟んで奥にはマスタード色のレンガの建物
多分これが商業ギルドかな
道沿いに馬車が停められるようになってる、宅配便の中継所みたいに何台も荷馬車が並んでる
グイッと手を引かれて振り返る
「ベディヴィア達が行っちまう」
ソルがなんか違う人みたいで一瞬ドキっとする
「ごめんごめん」
少し離れてしまったベディヴィアさんの後ろへ2人で駆け寄る
「中に入ったら離れるんじゃないぞ」
ベディヴィアがギッと扉を押して中に入った
ルティーナさん、ソル、私と続いて入る
ベディヴィアさんは堂々と歩く
人がベディヴィアさんを避け、奥に見えるカウンターへ真っ直ぐと
騒がしかったギルド内がシンっと静まり返った
コソコソと声が聞こえる
「おい、あれってシルバーウインドの2人か?」
「もうあの依頼片付けたのか?」
「受けてからまだ数日しかたってねえぞ?」
「後ろのガキ共は誰だ?」
やばいくらい目立ってるよ!?
「シルバーウインドのベディヴィア様、御苦労様です。ご依頼はもう済んだのですか?」
「ああ、確認してくれ」
カウンターに着くとピンク色の髪からうさぎの耳がだらんと垂れた可愛いお姉さんがいた
やっばぁあ!
うさ耳とか激ヤバ!かんわいいじゃん!!
しかもピンク!!萌え萌えはんぱないやつ!
___________
ノルルン
31 ♀3.9
フローラルトシティ所属
冒険者ギルド職員:B級冒険者
___________
ん?31?思ったよりも年齢が高いけど
可愛いは正義
可愛いは正義です。はい
ベディヴィアさんはカウンターに並ぶ水晶の玉の1つにギルドカードを当てる
「確かに依頼完了を確認・・・ん?確かに依頼は達成されてますが、ビットラクイーンを討伐していません、それにパーティでのビットラの討伐数が異常に少ないです。どういう事でしょうか?」
シンと静まってたギルド内に受付のお姉さんの声が響くと
ザワザワと周りが少し騒がしくなる
そんなことまでそのカードで分かるんだ?ん?この流れって・・・
「ああ。それなんだが、実は私の親しい友人の子、この2人とこの街で合流する予定だったのだ。だがこの街で合流する前にこの2人が間違ってビットラクイーンを討伐してしまったんだ、なので事実確認の為にもギルドカードを2人に作ってくれ」
「えっ?!この子達2人がですか?!」
ザワザワがどよめきに変わる
「あんなちっせえガキ2人でか?!」
「有り得ねぇだろ?!」
「あのベディヴィアの親しい友人の子だって?嘘くせぇなあ」
少し大きめの声が周りから聞こえてくる
怖くて周りが見れない
「シャキッとね」
ニコッとルティーナさんが笑顔で周りに聞こえない声で囁く
隣のソルを見ると真っ直ぐベディヴィアさんを見上げてる
私もシャキッとしなきゃ
少し姿勢を正す
「か、かしこまりました少々お待ち下さい」
「見届け人は私だ」
「えっ?」
一瞬ギルド内を沈黙が走ると
えええーーー!!!
っと色んな角度から大きな声が響く
「誰の見届け人にもならなかったあのベディヴィアが!?」
「王族の見届け人も断ったと聞いてたぞ?!」
「ベディヴィア本人は見届け人にはならないとずっと言ってたのに!」
「あのガキ共何者なんだ?!」
1度カウンターの奥へ引っ込んだうさぎお姉さんはカウターの一部を外す
「えっと、1度奥に・・・」
「いや、ここで渡してくれ。皆も気になっているようだ、私が嘘を着いていると思っているようだしな」
少し声を張り、周りに鋭い眼差しを向ける
再びギルドの中に重い沈黙が
奥からうさ耳のお姉さんが私達の前に木のトレーを持って歩いてきた
トレーには紐の着いた真っ白なギルドカードが2枚
紐を通す穴のない白いカードが2枚載せられていた
カウンターの中ではベディヴィアさんより少し低いぐらいだったのに私より少し高いくらいの身長で、とっても小さかった
カウンターの中では椅子に座ってたのかな?
ちっちゃいな
可愛い
「これは初級・・・G級冒険者のギルドカードです、今は色がありませんので自分の魔力を込めてください。魔力を注げば名前が自分の魔力の色で浮かび上がります。その後にこちらの穴のないカードに名前の浮かんだカードを当ててください」
登録するのはギルドで説明を受けてからでもいいってベディヴィアさん言ってた、でもとてもじゃないけど説明をお願い出来る雰囲気じゃない
それにベディヴィアさんがさっき言ってた
‘’ 刻みたい名前を文字でしっかりイメージして魔力を込めろ”
っていうのは魔力だけ込めると本当の名前で刻まれてしまうからって意味なのかな?
何だか、なんでもお見通しって感じがして少し不安になる
「こちらの穴のないカードはギルドで預かります、生存確認の為のものです。この後記入して頂く時に詳しく説明させて頂きます」
「冒険者として命を燃やす我らの一員となる者に、神々の祝福を」
そう言うと木のトレーを私達へ差し出す
私とソルは紐の着いたギルドカードへ手を伸ばした
ちょっとでもいいぢゃん!続き気になる・・・かも!
って思ってもらえるようがんばりまっす!
評価などしてもらえたら
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よろしくお願いします!




