2・魔法!
起きている私をお世話できるのが嬉しいのか、レゼルちゃんは積極的にたくさん話しかけてくれるし、色々と動いてくれる
「ちょっと切りやすいように移動しますね」
コクコクと私はうなずいてニコッと笑う
まだ話すのは喉がつらいので人が部屋にいるときは声を出さないようにしてるのでレゼルちゃんとまだおしゃべりはできてない
伸びっぱなしの長すぎる髪の毛うっとおしかったからすんごく嬉しい!
「私、切るのはとっても得意なんです」
私を抱き上げ、一人用のソファーへ移動させてくれると自信満々で言う
ヘアブラシで丁寧に髪を梳いてくれた後、一本のハシのような棒を取り出す
??ハサミ・・・は??
不思議に思ってじーっと見つめていると
スッとそのまま私のおでこの前で横に動かした
パラパラパラ・・・
それだけで今までうっとおしかった前髪が下へ落ちていく
え?待って。え?
えええ!!
戸惑っている間にレゼルちゃんはゆっくりと私の周りを歩く
と、スッと頭が軽くなる
「はいっ!できましたよっ」
ニコッとレゼルちゃんが笑うので自分の周りの床を見てみると長すぎた髪が落ちてた
「ほっほー…いっと」
棒を一振りすると落ちていた髪がふわっと浮いて私の周りをまわり、一つにまとまると、レゼルちゃんの手の中におさまった
「あれ?お嬢様??そんなに驚いた顔して・・・あ!初めてでしたか?魔法をみるのは」
キャーーーー!まほう!!魔法!!!!
なんてこった!そんなの嬉しすぎるぅー!!
いや~!いろんな転生もの読んでたから、もしかしたらって思ってたけど!!
私はレゼルちゃんへ手を伸ばす
その棒があれば私も魔法つかえるのかな?!
この7日間、部屋に一人でいる時ステータスオープンとか、鑑定とか、ありそうな魔法の名前を苦しいけど声に出してみたりしてみたけど、何も起こらなくて・・・
諦めそうになってたけど
あったよ~ほんとによかった!
「クスクスッ なんだかそんなにキラキラした目で見られちゃうと照れちゃいますねっ」
いや、違う違う!!棒っ!棒が欲しいの!!
「そ・・・れっ!」
レゼルちゃんの持ってる棒を指をさしながら声を絞り出す
もしかしたら!ってちょっとくらい考えちゃうよね!
俺ツエーーー!的な!転生チート!!!
しかも5年眠ってた変な身体だし、何かあるんじゃないかって・・・
期待はしちゃうよね!・・・よね!
私が棒を欲しがっているとわかるとレゼルちゃんはハッとして、表情が暗くなる
「お嬢様には・・・。ちょっと、・・・難しいかもしれませんね」
私からそっと目をそらしながらレゼルちゃんはそっと棒を差し出してくれた
まっほう!まっほーう!
棒を受け取ると今では胸のあたりまでとなった髪を一束手に取って見よう見まねで棒を横に振ってみる
・・・
何も起きない・・・。
あれ?この棒がないと魔法が使えないとか、そーゆー感じじゃないのかぁ・・・
じゃあ教会的なところで洗礼みたいな儀式受けなきゃいけないとか、そっち系なのかな?
少し大げさに首をかしげて、レゼルちゃんを見上げる
と、レゼルちゃんは目に涙を貯めて私を見ていた
え?なんで??
「ま、まだお嬢様には早いですかね?」
目が合うとぱっと視線をそらして苦しそうに、弱弱しく笑ったレゼルちゃんを見てこれ以上なにもできなくて・・・そっと棒を返した
嫌な考えが頭をよぎる
「あ。お嬢様!お昼ご飯から少しお食事が増えて、味もよくなるみたいですよ!頑張って食べられてるのでよかったですね!あ、あと明日から少しずつ体力づくりを・・・」
何事も無かったかのようにぱっと話を切り替えて他愛のない話をたくさんしてくれるレゼルちゃん
あーあ。せっかく魔法のある世界なのに・・・
それだけは違うと思いたい・・・な・・・。
__________
「ではお嬢様、お手洗いや御用がありましたらベッド横のベルを鳴らしてお呼びください。魔道具ですので、私がどこにいても鳴らしていただけましたら、すぐに来ますので」
そう言って扉を閉める
ガチャッ
そして鍵の閉まる音
レゼルちゃんは部屋から出ると必ず、鍵をかけていく
ちょっと過保護すぎるよね・・・?
まあいいや、魔法はいったん置いとこうかな
魔法があるのがわかって嬉しかったけど、さっきのレゼルちゃんの様子だともしかしたら私は魔法が使えないのかもしれない・・・
すっごい嫌だけど!!でも、そういう転生ものも読んだことあるし・・・
レゼルちゃんは何も言ってなかったから呪文や詠唱が必要なわけでもなさそうだよね‥
教会的なところで何か儀式的なものしてもらうとか‥・も可能性としてはあるよね・・・
うん。やっぱり魔法に関しては今、何にもできないな
私の1日は朝ご飯を食べてレゼルちゃんが私の体調の確認や身の回りのことを一通りしていくと、必ず部屋に鍵をかけていなくなる。お昼になるとレゼルちゃんがご飯の用意をしてくれ、部屋の掃除をはじめて、
お父さん、 ランスロット・ディー・ダイヤトリント
お母さん、 キャロイス・デア・ダイヤトリント
の2人が時間を見つけて会いに来てくれて、紅茶を飲んだり・・・
と、お昼を過ぎると1人になる時間が無くなる
朝ご飯の後は貴重な1人時間なのだ!
私はいそいそとベッドから出て立ち上がる
まだ身体はきしむようで素早く動かせないけど、早く部屋から出て家の中とか自由に歩き回りたくて1人でせっせとリハビリ?的な筋トレをしている
目が覚めた日の次の日から暇だったのでやってたんだけど、やりすぎてぐったりしてたらすごく心配されちゃったんだよね
だから筋トレしすぎないようにほどほどにしてるけど、もうこの広い部屋の中を普通に歩き回るぐらいならできるようになった
「ぁぃぅぇぉ。・・ぁっぁあ゛ーーっ」
んんー。まだ声出しずらいな、苦しくなっちゃう・・・
一人時間中は声も出すようにしてるけど、まだ小さな声しか出せない。すこしでも声を張ると濁声っぽくなっちゃう
レゼルちゃんやお父さん、お母さんの前では布団から出たがらないすごーくおとなしい子でいるようにしてる
決して、こっそり抜け出したいが為だけに、
『お嬢様は大人しくて、とってもいい子なので鍵かけなくてももう大丈夫ですね!』
って思わせる為に、隠してるわけじゃな・・・いんだから・・・うん!
ふと日課になりつつある、一人時間の最初は
窓まで歩いてって外の景色を眺める
綺麗に整えられた広い庭。庭はヨーロッパ風で、まだこの家の中見たことないけど、
庭の大きさで考えるとちょっとしたお城くらい大きいんだろうなあ
庭の奥に広がっているカラフルな木々、流れる水色の雲…。何度みても、この景色だけでここが異世界なんだ、と実感させられる
窓にそっと手を当て、黄色や、ピンク、オレンジの葉をつけた遠くに見えてる森の木を見つめる
あーぁ。
魔法がもし・・・・使えたら
あの森の、あの、木の下へ
ボソッ「瞬間移動、できたら…」
ビリッ
身体の中で電気が走るようなそんな感覚がした
と思ったら私はさっきまで遠くに見えていた木の下に立っていた
ちょっとでもいいぢゃん!続ききになる・・・かも!
って思ってもらえるようがんばりまっす!
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