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27・S級パーティ





_______________

ベディヴィア・ジェイ・カルカロフ

28 ♂8.9 red

《業火の隻腕》カルカロフ侯爵家三男

シルバーシティギルド所属:特級冒険者

S級パーティ シルバーウインド・リーダー

_______________

状態》白化の禁呪:427

_______________





「殺した命は責任を持って使わないとな!」



フードで見えなかった顔が見えて頭の上に文字が浮かぶ

明るい朱色のような短い髪をなびかせハッハッハと

爽やかに笑う、でも髭が長めで少ししか口元が見えない

前の私と同い年、でもとてもそうは見えないおじさん感

貫禄もあるし、何より筋肉もムキムキでゴッツイ


鑑定さんで気になるのは《業火の隻腕》の文字と最後の状態の欄


隻腕って片腕って意味だよね?


さっきも私に赤い何かをかけてたけど腕はあったと思う

左腕が真っ赤な包帯でぐるぐる巻きではあったけど

あ、包帯で巻かれてる所が白化の禁呪って奴を受けてる所って事?

それに427って何だろう?



「ベディヴィア!説明をしなさいってば!」




水色のローブの女性が肘でベディヴィアを小突く



「でも早くしないと痛むぞ?私はそっちやってるからルティーナに任せる。説明が終わったら手を貸せ、デュードもこっちでレーンは引き続きビットラに警戒だ」




そういうとマントを脱ぎながら颯爽と歩いて行ってしまった




「もーう!ごめんなさいね。現実的というか、大ざっぱなのよ彼」




そう言いながら水色のフードを両手で下ろし、私の前にしゃがむ小柄な女性

パステルカラーの水色と淡いピンク色が交互に混ざる可愛らしくくるっとふわっとしたボブの髪型

ぱっちりした目はオッドアイで髪色と同じで水色と淡いピンク

顔の左側全体に水色とピンクの混ざり合う痣が首の方まで伸びている


「私はルティーナ、そこの弓をかまえてるのがレーンよ。さっきの大きいのがベディヴィアで、奥で作業してるのがデュード。さっきデュードが言ったけど私達はS級パーティで、依頼を受けて二本角のビットラ、ラビートクイーンの討伐に来ていたの」



_______________

ルティーナ・カルカロフ

27 ♀6.30 magenta×cyan

カルカロフ侯爵家三男 ベディヴィアの妻

シルバーシティギルド所属:A級冒険者

S級パーティ シルバーウインド・メンバー

_______________




まだ頭がこんがらがってる私は何も言わないまま、左手で顔を拭い

じんじんと痛む右手をソルに添えてる

草はもう伸びておらず足に絡んだまま

全身、ルティーナさんとベディヴィアさんにかけられた赤いドロっとした液体を浴びてぐっしょりしてる

赤黒い水溜まりの中で女の人の瞳を見つめる



プティ、何があっても出てきたらダメだからね

お腹の辺りで微かにプティが震えた

多分伝わったと思う



「ラビートクイーンは数年に一度産まれるこの森の希少種で繁殖力が異常に強く、ビットラの大量発生を招くの。今回ラビートクイーンの発見が遅れて大量発生が既に起きてしまってて・・・体内の匂い袋を何も知らない旅人が稀に、破いてしまう事故が起こるの。そうなってしまうと匂い袋の液体を浴びてしまった冒険者は大体命を落としてしまうの・・・」



命を落とす・・・確かに最初に空中に逃げてなかったらあの雪崩のような数避けられなかっただろうな

ソルが気付かなかったら即死だっただろう



「私達も念の為、匂い袋を破いてしまった時用にビットラの天敵であるリズリーグの血を用意してたけど、用意してて本当に良かったわ」




コレ血ですか

やっぱりというか、そうだろうなとは思ったけど

天敵の血を被ることで匂いを消すってことなのかな?

さっきベディヴィアも匂いを消さなきゃって言ってたし



「デレクは、大丈夫ですか?」



ヒュン

ヒュン

と後ろで弓を放つ音がまだする



「彼、凄いわね!ベディヴィアの威圧にも屈せず突っ込んできたの!あっあっちにいるデュードの眠りの魔法で眠ってるだけだから安心して?2人ともこんなに小さいのによく頑張ったわね」




「ルティーナ、もうこっちに来るビットラ居なくなった」





「じゃあ血、とっちゃいましょうか!レーンも手伝って」




ルティーナさんは立ち上がると両手を広げた




ピンポン玉ぐらいの水の玉がルティーナさんの前に出来ると、どんどん大きくなっていく

足に絡む草がパラパラと枯れていくと

私の体がフワッと風に乗るように浮かぶ



えっ

まって

もしかして



私よりも大きくなった水の玉に風で押されドボンと入る


そのまま洗濯機にでも入れられたかのようにぐるぐる、ぐしゃぐしゃに掻き回される



息ーーー!っっ




水の玉からペッと吐き出されると

弓をかまえてた男の人の足元に倒れ込む


ゴホッゴホッとむせる

頭グラグラする

上下左右がぐるぐるって

目が回って気持ち悪い




「おい、ちびっ子。他に助けられる奴はいるのか?」



言葉の意味が分からなくて、手で頭を押さえながら首を傾げる

他にってどういう意味だろう?



「もろに体液かぶってたら、寄ってくるのがこんな数少ねぇ訳ねえし、爆心地からココは離れすぎてる。何人殺られた?お前らみてえにバラけて逃げてんのか?それとも囮にでもされたか?」



しゃがんで私に目線を合わせた弓の男の人、フードを深く被ってるけど

顔がハッキリ見えた



_______________

レーン

66 ♂11.21 green × yellow

シルバーシティギルド所属:S級冒険者

S級パーティ シルバーウインド・メンバー

_______________



はっ66!?

えっこんなに若いのに?!


色白の肌に黄緑の鮮やかな長いさらッとした髪

切れ長の目にスっと通った鼻筋、どう見ても10代にしか見えないイケメン

口調も1番若い感じなのに多分1番年長者!!



「ちょっと!レーン直球すぎ!まだ子供なのよ?」



「このチビの服はそうでも無いが、そっちのは上等な作業服だ。どっかのお抱えなのは見て分かってるだろ。まだ助けられる人間がいるなら、早く行かねえと」



「それなら、大丈夫です。私達2人だけだから」



右手をお腹に抱えて左手で濡れた髪を軽く絞って立ち上がる

えっと、レゼルちゃんが前にリアムさんにしてたように・・・


1歩片足を引き、膝を曲げて腰を少し下げて目線も下げる

レゼルちゃんが言ってた、これは敬意を態度で示してるって


「この度は救って頂き、ありがとうございます。貴女方の依頼の邪魔をしてしまい大変申し訳ありませんでした。デレクに掛けた眠りの魔法を解いていただければ、私達はすぐにここを離れますので」



助けてもらったのは嬉しいけど深入りされたくない

早くこの人達から離れないと


それにレーンって人、ソルの服を見ただけでどっかのお抱えだって言ってた

お抱えが私の思う意味と合ってるか分からないけど

貴族の元で働いてるって思ってると思う


ソルは気に入ってるから悪いけど今度服をどっかの街で調達して

旅人っぽい格好しなきゃダメだな



「あらっ可愛い!貴族語がお上手なのね!でもごめんなさい、そういう訳にも行かなくて、ギルドに報告しなくちゃいけないし、もう日もそんなに長くないわ?あなた達だけじゃ心配だしこのまま私達と一緒に居て貰えないかしら?話を聞かせて欲しいの」




顔をあげてルティーナさんの顔を見る

優しそうに微笑む彼女

お願いされてるけど実質、この状況なら私とソルに選択肢はない

ソルにはまだ草が絡んだままだし

隙をついて瞬間移動も出来そうにない


「わざわざ助けたんだ、俺達は見殺しにだってできたのにしなかった。それが事実だ。今日は大人しく俺達に守られてろよ」



そう言うとレーンが私の髪をぐしゃっと撫でた



「俺も元々はワケありだからな、悪いようにはしねえよ」



ワケあり?年齢詐称ですか?


キョトンとしてると

小さくため息をついてフードを下ろし、長い鮮やかな黄緑色の髪を耳にかけた

人とは違う尖った耳


エールーフーーー!?


初エルフ?!獣人がいるならいるかもと思ってたけど!!

キャーーっ初エルフ!そりゃ美形だよな!

エルフで弓で色白で!!

もうイメージそのまんまじゃん!

しかも長命ってことよね?その年齢!

まてよ

エルフも獣人もいるならドワーフとかもいるのかな?

是非この目で拝みたい!



心の中で興奮が収まらない


「プッ。さっきまでの警戒はどこいったんだよ」



ハッと左手で口元を隠す

また顔に出ちゃった?

でも俺もワケありって言われて少し不信感は減った

少しならこの人達と一緒に居てもいいのかも

何となく悪い人達ではなさそうだし



レーンは人差し指を立ててくるっと回すとソルに絡んでた草が解けて宙に浮かぶ


「俺は匂いのこねぇ風上の方で夜営の準備してっから、ルティーナとお前さんはベディヴィアとデュード手伝ってこい」




ぽんっと背中を押されると風が私の周りにぶわっと渦巻く

するとずぶ濡れだった全身から水が弾き飛んでいき、ほとんど乾いた


魔法かっくいい!

羨ましいっ



「デレク君、かな?彼は起きてから洗いましょうね。溺れちゃうから」


ふふふっといたずらっ子のようにルティーナさんが笑う

起きてても溺れるかと思ったよ?私


レーンは後ろ手にヒラヒラと手を振り、欠伸をしながらフードをまた被って血まみれのソルをふわふわと浮かべたまま歩いて行った




ルティーナさんが歩いてく後をついて行く



右手に巻いてる布の隙間をこっそりのぞく

手の甲が腫れてる

段々と痛みが増してる気がする

アドレナリンが無くなってきたからかな?

初めて本気で人殴ったけど、テレビで聞いた事あるボクサー骨折とか言うやつかな?


まさか私が人を殴るなんて

それも、自分が怪我する程強く殴るなんて想像もつかなかった


それ程必死だった

ソルが殺されちゃうって思って・・・


軽く布を解いて指をあまり動かさないように少しキツめに巻き直してしっかり結びなおした



「この数全部血抜きするつもりですか?!ぶっ倒れますよ!」




「血抜きだけはしておかねば、後でギルドに頼む時、解体場が血まみれになってしまうだろう?可哀想じゃないか?」




「せめて半分です!それ以上は僕やりませんからね!」




「おっ来たな!ルティーナとちびさんは角を集めてくれ。私は魔石を集める」



ベディヴィアさんの頬をみる

赤くなってるけど特に酷くはなさそう

私の全力は全然痛くなさそうだ

・・・でも




「すみませんでした。助けてくれようとしていたのに殴ってしまって・・・」



「そんな事気にしなくていい、君達に誤解を与えるよう動いてしまった我々が悪い、まさかこんな子供がと最初はな・・・。まあ、話は後でいくらでも出来る!今は奪った命をちゃんと使えるようにしなければな!最低限の処理でいい、日が暮れるまでに終わらせるぞ」



「ベディヴィアさん誤魔化さないでください!半分ですからね!」



「出来ないことは言わない。お前が出来る事しか頼んで無いはずだ、早くやらないと飯に遅れるぞ?」



「うぅー!ずるいんですよ!もう!」




デュードと呼ばれる濃い緑のマントを羽織ったままの人は箸のような木の棒を懐から出すと小さい声で何か呟いて積まれたビットラの死体の山の前で指揮者のように手を動かす


するとビットラの死体の山から血が宙に集まり始める

ビットラの山の上に血の玉が出来てどんどん大きくなる



魔法すげぇー!!

使い方次第でなんでも出来そう!!



「私達はベディヴィアのそばで作業しましょうか」



ルティーナさんは死体の山の1つに歩いていくとしゃがんで手早くポキっと簡単に角を取る


そんなに簡単に角って取れるの?

じっと見てると


「あっコツがあるの。鼻先をこうやって押えて生えてる方向と逆に力を入れると簡単よ」



隣にしゃがんでやってみようとつい左手で鼻を押さえて右手で角を握ろうとしてしまい、いったん手が止まる

あっ無意識に利き手使おうとしちゃった

力入んないし絶対痛いなコレ


右手の手のひらでどうにか鼻先押さえて、左手で角を持ってグッと力を入れる

ポキっと割と簡単に取れた


少し手に響くけど、これなら大丈夫そう

足踏まれた時の方が痛かった!大丈夫!

明日別行動してから緑化の実探そ



それからは話しかける事もかけられることも無く

黙々とお互いの作業に没頭した


__________




日が沈みはじめ、空が赤く染る




ようやく全部の角を取り終えると

ベディヴィアさんがすべてマジックバッグに収めた



ビットラの死体はひとつも残ってない



「ふぅ!終わったわね!」



「皆、よくやった。だが、ここは血で穢れすぎてるな」




ベディヴィアさんが周りを見ながら呟く


穢れ?

確かに地面や木の周りは血だらけだ



「少し離れましょう」




ベディヴィアを木の下に残して3人で私とソルが燃やしてできた焦げた線の外に出る



赤い包帯を巻いてない方の腕に炎が宿る

ベディヴィアはそのまま木を燃え上がる右手でドンッと殴った


一瞬で木が炎に包まれでっかい火柱が上がる



「わっ」



身体が浮き上がりそうなほどの強い熱風が木を中心に走り抜ける




凄い!

これが特級冒険者!

その落ち着き、堂々とした振る舞い

純粋にカッコいい


「血が沢山流れると良くない魔力のたまり場になる事があるの、だからそういう場所は燃やすの」


ルティーナさんが少しうっとりとした瞳でベディヴィアさんを見つめる



フードが熱風で脱げたデュードと目が合った

クリーム色のような少し濁った明るい灰色の髪

上は短いけど襟足周りだけ長くて後ろの低い位置で結んでる

眼鏡を掛けていて身体は細く魔法使いって感じの風貌をしている

キラキラとベディヴィアさんを見つめる視線は、憧れを見つめる眼差しだった



_______________

デュード

20 ♂10.10 green × magenta

シルバーシティギルド所属:B級冒険者

S級パーティ シルバーウインド・メンバー

_______________



灰色に見えるけど緑と紫なんだ?

へぇ

と思いながら私も火柱に視線を戻す



火力が強かったのか火柱は収まり始めて、葉が燃えおちた黒い焦げた木が見えてくる



ベディヴィアがこっちに歩いてくると足元も火がつき出す

まるで炎の海を歩いてるみたいでゴッツイ身体の雰囲気とか

ちょっぴりプロメーテウム様みたいだな


なんて考える






「離せ!ユーリはどこだ!!」




あっ



視線を声のする方へ向ける



「馬っ鹿!お前!血まみれだっつの!あっちにいるって!わっ!!」



暗い森の中にソルが全身を炎に包んでる姿が見えた



「デレクーっ」



手を振ろうと左手をあげようとした瞬間



ぎゅんっと私にむかって飛び込んでくる



わっ!これまた私血まみれになるやつじゃね?!


もうすぐ目の前まで来たソル

ちょっぴり身体に力を入れて体当たりと血まみれになる覚悟を決める



「女の子には優しくしないとダメじゃないか」



「なっ!お前っ!離しやがれ!」



さっきまで木のそばにいたはずのベディヴィアさんが包帯を巻いていない方の手でソルを目の前で捕まえてた

血まみれを予想してたソルは血が乾いてて肌や髪の毛にこびりついてる

そっか、流石に乾くか


「デレク!この人達は大丈夫!私達を助けてくれたんだよ」



「でもコイツ俺に殺気飛ばしてきたんだ!あぶねぇからユーリ離れろ!」



「ハッハッハッ。すまないね、怪我させたくなかっただけなんだ。このまま暴れるならあっちのデュードに拘束させるが?」



「僕はもう魔力残ってないんでルティーナさんに頼んでくださいよー」



「ぅがぁぁあっ!はーなーせー!」




「デレク!落ち着いて!本当に大丈夫だから!」




ソルのそばに駆け寄る

私が左手を伸ばしてソルの右手を握るとピタッと暴れるのを辞めた



「離すぞ?」



ベディヴィアさんがソルを下に下ろす



ソルが私を見つめる

いつ瞬間移動してもいいぞ

と私に目で訴える


ソルがギュッと私と繋ぐ手に力を入れる

でも私は視線をそらしてそっと体を引いた


「彼女はルティーナさん、眼鏡かけた人がデュードさん、デレクを捕まえてたのがベディヴィアさんで、起きて最初に会ったあっちの人はレーンさんだよ」



そう言って視線をソルに戻す

大丈夫、逃げようと思えばいつでも逃げられる


ギュッと手を握り返す

私、瞬間移動しないよ

とハッキリ意思表示をした



したのに!




「なんでこうなるの!」




私を肩に担いで森の中を走るソル

相変わらず凄いスピードで走る


「一瞬でいいから2人きりで話したかったんだ!脅されてねぇか?プティは?」



「脅されてないし!プティもちゃんといるよ!」



「ぴっ!」



「ユーリの判断なのか?無理矢理じゃねぇか?」



「大丈夫!!」




ゆっくりと足を止めて私を肩から下ろす


「本当に?怪我は?ほっぺ切れてんぢゃねえか!あっ角が当たった場所は?!」



やばい。ソル超心配してるじゃん

右手が痛いなんてとても言える空気じゃないな



「大丈夫だってば!私より、デレクの方がどっか怪我してないの?見た目でいうとデレクの方がヤバいよ」



ふふっと私が笑ってソルの頬に着いた乾いた血を少し取る

ソルはホッと、少し肩の力を抜く



「俺は大丈夫」



「次の街には寄って色々調達しなきゃね、私も強くなりたいって思ったから、弓とか何か私が出来そうなもの練習する」




左手でソルの手を引く


「ほらっ戻って話聞こ!分からないこといっぱいだから勉強するつもりでさ!」





私とソルの身体がふわっと浮くと木の上まで上がった

レーンさんが空中に立ってて面倒くさそうに欠伸する


「戻るぞー」


レーンさんを先頭に

風に乗って煙の上がる大きな木へ飛んでいく




「コイツとゴツい奴、強えよ」



コソッとソルが耳元で言う



「うん。そうだと思う」



「俺、ずっとそばに居るから」



‘’だから逃げる時はすぐ俺掴んで逃げろ”



ソルは途中で言葉を切ったけど私にはちゃんと続きの意味が分かってた




__________





「はいっどうぞ」




ルティーナさんから木のお椀を渡される

湯気が出るお椀の中は琥珀色の透明なスープに大根とズッキーニのような野菜とお肉がゴロゴロッと入ってて、凄くいい匂いがする



そういえば私、昨日の夜からほとんど食べてない

昨日の晩御飯、焼死体だったし・・・



火を囲んでみんなで座り、大きな鍋にはたっぷりのスープ

ソルも黙って隣でお椀を受け取る


顔はムッとしてるように見えるけど

風きり音が聞こえそうなほどしっぽをぶんぶんと振ってる

美味しそうだもんね

わかるっわかるよ!


クッソ可愛いなオイ



風に乗って戻ってきたあとソルはしっかり洗濯機のように洗われて

自分で水を飛ばして不機嫌モード

一言も話さないまま

私のそば、いつでも掴める位置で周りをじとーっと睨んでた



みんなにお椀が回るとレーンが今度はスプーンを配る

左手でおわんを持って痛む右手でバレないようにそっとスプーンを受け取る

指を使わないように手のひらと親指だけで上手に受け取れた




「レーンが今日は作ってくれたわ、召し上がれ」



ルティーナさんが言うと私とソル以外が食べ始める



「「いただきます!」」



スプーンで汁すくえる気がしなかったからお椀を直接口にもってきて1口飲む



おっいしい!!

あっさりとした琥珀色のスープ

味付けは塩だけだと思うけど鶏ガラよりは何だろう?

お肉の香りがしっかり着いててシンプルに美味しい!!


ソルも夢中でがっついてる



「変わった挨拶だね?いただきます?」



デュードが不思議そうに私に聞く



「“いただきます”は命をくれた生き物や植物、手間をかけた人、料理を作ってくれた人に対しての感謝の気持ちを表す言葉で、食べ終わったら“ご馳走様” 。多くの生き物の命をごちそうになった、ごちそうを食べられたことへの感謝の言葉なんです」



家を出てからすぐにソルに教えたんだよね

日本のいい文化だし、私もつい言っちゃうし



「素敵な言葉だな。私もこれからは言おう、いただきます」



「私もっ!いただきます」



「「いただきます」」


みんながそれぞれいただきますと言うと

ルティーナさんがパンを出してスライスしてベディヴィアさんに渡す


「そろそろちゃんと名前を聞いても良かったかしら?」



私達にもパンを渡しながらルティーナさんが優しく私に聞く



右手で受け取るのが難しそうだったので私はパンを遠慮する

ソルはパンを受け取るともうスープが空っぽになってた



お玉が宙に浮いてスープを一杯すくってソルの前に浮かぶ



「食えよ、腹減ってんだろ?まだまだあるし」


レーンさんがチラッとソルを見ながら言う

レーンさんの魔法って細かい事までできるんだな

そんな片手間な感じで魔法使う人を見るのなんか新鮮



ソルはペコっと頭を少しだけ下げてお皿を差し出すとお玉から上手に注がれ、またソルは黙々と食べ始めた


「私はユーリ。彼はデレクです」



スプーンでゴロッとしたお肉を掬おうとして重くてお椀の中にお肉が転がる

むぅ。このままじゃスープしか飲めないぞ

どうしよう



「じゃあ、二本角のビットラ、ラビートクイーンをどうやって捕まえたのかから話を聞いてもいいかしら?」



「そんな名前のビットラだと思わなかった、ユーリが料理したいって言ったから、1番でかかった奴を選んで生きたまま捕まえた。それだけ」


私がソルに視線を向けると口の中を飲み込んだソルがぶっきらぼうに言い放つ



「ラビートクイーンはとびきり足が早い。だが、さっきの君の走りを見ると確かに捕まえられそうだな」



「じゃあ本当に捌こうとして匂い袋破っちゃっただけなの?」



私はコクコクと頷く



「でもそれだとここに集まってた数が少なくないですか?」



「匂いで追ってきてるってデレクが言ったから誤魔化すためにお酒をかぶったんです」



「そのお酒はまだ手元にあるか?」



私の腰にあるマジックバッグに手を入れる

まだ50本近くあるけど、出すべき?

いや、もし凄い高いお酒だったらどう言い訳しよう?



何かのドラマで言ってたっけ

人に嘘を信じさせたい時は本当と嘘を混ぜて話すと

真実味が増すって・・・




私は1本お酒を出してベディヴィアさんに渡す

栓を開けてベディヴィアさんが匂いを嗅ぐ



「ほう、これは中々。ラピス地方の上物だな」



少し飲んじゃったけど確かに不味くなかったもんね

やっぱりいいお酒だったのね

そんなものを何故子供が?

と視線で問われる



「このマジックバッグは私達が出発する時、デレクが師と仰いでいたとある貴族に仕えていた使用人に頂いたものです」



嘘と事実を混ぜるんだよね



「とある貴族に服従の首輪と隷属の腕輪を付けられそうになったデレクと、私は隠されて育てられたその貴族の隠し子。デレクに付けられようとしていた所をたまたまデレクと仲良い私が見てしまい。殺されそうになった所を、その使用人に逃がしてもらったんです」



ルティーナさんが息を飲んだ

隣でソルも驚いてゴホッゴホッとむせる



「その貴族の名を

「言いません。私を逃がす為に命を懸けてくれた人達を守りたいので」



ルティーナさんの問をスパッと切る



重い空気が流れる



ソルが‘’??”をたくさん顔に浮かべて私を見つめる

どこまで本当を話すのか?

首輪や腕輪の事を話しても大丈夫なのか?と



「そうか、だから私の威圧にも怯まず飛び込んできたのだな。一度死線をくぐってる者や、守る者が居るものは怯まぬからな・・・」



「いつから2人で旅をしているの?」



「一月と少し前です。デレクの足のおかげで遠く離れることが出来たのでもう私達を追ってはいないと思います。屋敷を離れてから人は避けて進んでたので失礼な態度を取ってしまったこと謝ります。すみませんでした」



「そんな境遇なら仕方ないわ」



ルティーナさんは私の隣まで来ると私の髪をさらっと触る



「2人で助け合って生き抜いてきたのね」




嘘が混ざってるけどいきなり考えたシナリオとしては良かったんじゃないかな?



「解せねぇな。デレクの方はわかる、確かに将来有望だ。魔力量も高ぇし、感も良い、そう言う人材をガキのうちから貴族共は首輪を付けて飼いたがる。だが何故、()()も逃がして貰えたんだ?」



黙って聞いてたレーンが私を睨む



「あくどい事してる貴族の屋敷から逃すっつうのは1人でも簡単じゃねぇ。隠し子程度、ただ仲良いってだけじゃ一緒に逃がさねぇだろ」



「レーン」



ベディヴィアさんが低く名前を呼ぶ



「それにデレクの態度だ。常に俺達に意識を向けて警戒してる、全てをユーリの判断に委ねてる。ユーリを守ろうと常に動いてるし、口調も使用人目指してた奴のもんじゃねぇ、作業服は高度な守りの魔法まで掛かってやがる」



「おっちゃん・・・」



庭師のおじさんソルのこと大事に思ってたんだ

沢山ものが入ったマジックバッグ

守りの魔法が施された作業着

そんな凄いものをソルに持たせて出発させた



「私は・・・」



確かにそう言われるとソルは将来有望でさ

助けて貰って納得できるよね

でも私はうっすら赤いだけ、隠し子以外で隠されてた上手な理由も思いつかないし

助けて貰える理由も薄すぎる



この人達をある程度信じても大丈夫なのかな?

自問自答する


すると服の中でプティが震えた


良いってこと?

えっ待って!

私はお椀にスプーンを入れて急いで地面に置く

プティがスルッと膝の上に出てきてしまった



「攻撃しないで!」



咄嗟に身構えた大人達にプティを守るように両手をつき出し、叫ぶ

ソルもバッと構えて私の服を掴む



「私のギフトなんです!」




ギフト

後天的に神様から特別な能力を貰うこと



勝手に出てきた赤いプティを私は咄嗟に

自分のギフトだと叫んでいた









ちょっとでもいいぢゃん!続き気になる・・・かも!

って思ってもらえるようがんばりまっす!

評価などしてもらえたら

飛び跳ねて喜びます!!

よろしくお願いします!

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