25・中二病
・・・
頭が痛くない・・・
私死んだかな
寒くないし
息も・・・らくだし??
「・・・ぃ」
ん?
なんか聞こえて・・・
「ぴぴいっ!」
パチッと目を開く
胸の上の真っ赤なふたつの瞳と目が合う
ゆっくり身体を起こすとおでこから濡れた布が落ちる
プティが兎の形からドロッと溶けて
鳴き続ける
「ぴぴぃっぴぴいっ!ぴぴぴぴぃぃい」
まるで喜びながら泣いてるみたい
「ごめんね、プティ帰って来てくれたんだね」
よしよしと撫でる
穴の中を見渡すと私が投げ込んだ荷物が解かれ、少し部屋?っぽくなってる気がする・・・
身体には布が掛けてあるし・・・
おでこにも濡れた布が・・・置いてあって・・・
頭がちゃんと回ってなくてぼーっと
穴から差し込む光が綺麗だなー
なんて思いながら
視界に入る物を一つ一つ眺める
私死ななかったの・・・か?
右足の傷口の辺りがモゾモゾと動く
「プティっくすぐったいよ」
ふふっと笑いかけるプティは布の上でスライムのような
トロンっとした姿のままキョトンと私を見あげる
あれ?
身体にかかる布をめくった
「ギャァァァァァアアアア!!!!」
右足の傷口の辺りに紫色のカブトムシの幼虫のような生き物が5匹ぐらいくっついてた
死んだ死んだ死んだ!
私しんだ!
死んだんだ!
でっかいウジ虫が私を食べてる!?
触れない!
触りたくない!
気持ち悪い!
痛くない!
なんで?!
あっ死んでるからか!!
誰かとって!!
虫に食べられてる自分なんて見たくなかったあ!
死後の世界ひどすぎる!!
「どうした!?大丈夫か?!」
ソルが穴からひょっこりと心配そうに覗き込む
「ソル!私死んじゃった!!虫に食べられてるぅぅ!うぅうっう」
泣きながらソルに助けを求める
幻でも何でもいいお願いコレとってよ!
泣きながら取って!取ってえ!
と叫ぶ
「アハハハッ!違ぇよ。溜まってた血吸わせてたんだ。ったくしょうがねえなぁ、アハハッ」
ソルが豪快に笑いながら短剣を出すと虫の身体の一部に刺す
コテっと動かなくなった虫はポロっと私の足から取れた
手早く6匹いた虫を取ってくれると
私はソルに抱き着く
「幻のソルもやざじぃ。もう私、死んだけど!ソルしあわぜになってねぇ」
泣きながら思いを吐き出す
死後の世界でソルの幻に助けてもらうなんて
私どんだけ人恋しかったんだろ
私の声なんか届かないけど幸せになって
まじで
「ヴァイスは死んでねーし、俺幻でもねぇし」
アハハっとまだ笑い続けるソル
「生き抜ぐとか言ってたくせに死んじゃっだ!ごめん、もう、寒くてっ、痛くてっ、ざみしぐてっ、辛くてっ、もうやだって」
幻でよかった
こんな弱音聞かれなくて
本当は顔みれて嬉しくて、言葉が止まらない
本当に寂しかった
「ゾルがっ、みんなが!幸せなら、いいやって!私しんだから、神様がご褒美にソルの幻見せてくれたんだよぉお」
ソルが私をそっと押して離れると、頭を撫でる
「アハハッ。だから、死んでねえって」
ぐすっぐすっと
ぼろぼろと泣きながら
ソルの言葉が頭の中で飲み込めない
「わだし、しんだよ?だってウジ虫が・・・食べて・・・」
だって寒くないし、痛くないし、虫が私の足食べてて・・・
「いーきーてーる!」
ソルが両手で私の頬を包むとむにーっとつかむ
「そろそろ怒るぞ?」
燃えるような真っ赤な瞳が私を映す
私、死んでないの?
え?じゃあなんで
「なんれ、こんな所にいるの?だめだよ、ルナちゃんは?」
止まらない涙をソルが親指で拭って、恥ずかしそうに頭を搔く
「ルナは俺が居なくてももう大丈夫。だからヴァイスを追っかけて来た」
そんな馬鹿な
私は瞬間移動で飛び続けたんだよ?
普通の人間じゃ移動できないような距離を1日で移動したはず
村や街も迂回して、ひたすら進み続けたんだよ?
「部屋に居た変な女、ヴァイスだろ?あの瞬間は気付けなかった。でもアレクシスも変な女見てて、泣いてたって聞いて、胸騒ぎがしてアレクシスと一緒に部屋に戻ったんだ」
ソルは布を1枚引っ張り出して私の肩にかける
「アレクシスがぬいぐるみの中が空っぽだって言い出して、手紙もあるし、旅に出るなんて馬鹿なこと書いてあって・・・気付いたら走ってた」
涙が止まって鼻をすすりながら
どうやってソルを屋敷に返そうか考える
こんな所にいたらダメだ
ソルの幸せを守りたかったのに
私なんかといたら、いつかプロメーテウム様以外の神様に何かされちゃうかもしれない
私のせいで苦しませるような事があるかもしれない
「まあ、走ってたら庭師の仲良いおっちゃんに捕まったんだけどな!おっちゃんの家でゲンコツ食らって『やりたい事見つける時間だって言ったろ!なんの為に勉強して、なんの為に訓練受けてたんだ』って怒られて、なんで勉強やクソだるい訓練を真面目に受けてたのか気付いたんだ」
ソルが自分の手を見つめる
「俺、騎士になりてぇって」
両手を握りしめ、私を真っ直ぐ見る
「俺はヴァイスを守る騎士になりてぇ。だから、ヴァイスが居ない場所で強くなったって意味がねえ、だからお前の行く場所に俺は行くって決めた」
そしてニカッと笑った
「だから何言われても俺は帰らねぇ、俺は俺の夢を叶える為に勝手に来たんだ。だからいつか、俺の夢をヴァイスが叶えろ」
そんな言い方ずるい
ずるすぎる
初めてあった日
獣耳が可愛くて仲良くなりたいだけだった
口が悪くて、妹思い
でも聞いた事何でも答えてくれて
心の優しい少年
色んな事があったからだと思うけど
少し大人びた顔するようになった
カッコ良くみえる
「ごっごめ
ピシっ
と指を口に当てられる
「俺、ありがとうって言葉しか受け付けねぇ。あと、口開けろ」
言われた通り口を開けると、ズボッと口の中に何か入れてきた
1度味わったことのある味と美味しさに鳥肌が立った
焼いた緑化の実だ!!
やっばい!
やっぱりめちゃくちゃ美味しい!!
「これを寝てるヴァイスにどうやって食わそうか、悩んでたんだ。起きてくれてよかった」
ソルをよく見ると子供には大きすぎる剣を背中に担いでて、服装も庭師さんが来ていたようなツナギで灰色、おっきいそのツナギを肩周りを浴衣などで作業をする時に裾を止めるように結び止めて、足元は長い裾を大きく折り返し作業用のブーツのような靴を履いていた
私が口いっぱいに突っ込まれた緑化の実をもぐもぐとしてる間、視線が服装にいっていたのにソルが気付く
「なんか、懐かしいなその目。森の中でよくやってたよな?目でなんで?って聞いてくんの」
プハッと吹き出しながらソルが笑う
勘のいいソルだから気付くだけで、そんなに顔に出てない・・・はず
少し恥ずかしくなって頬が少し熱くなる
「デレクのおっちゃんが持ってけって色々入ったマジックバッグくれたんだ、服もしばらく着れるように俺の着てけって言われてさ」
背中に回してて、見えなかった鞄を外して、私の前に置く。
鞄は濃いブラウンで何かの皮で出来てるような見た目でウエストバッグのような形をしてて全然大きくない
前の世界だと長財布1つに携帯とタバコが入ってジャストサイズって感じ
マジックバッグというフレーズが私をワクワクさせる
「ハハッ。手、突っ込んで」
待ってました!と遠慮なく手をカバンに突っ込む
頭の中に何が入っている物の一覧がイメージ出来る
凄い!こんなにも沢山の物がはいってるの?!
テントみたいな物まであるし・・・シンプルに水?えっ1・・・トン?はっ?えっ。
容量とかそういうのない感じ?!
服も様々なタイプ入ってるし、多分これお金だなっていう物も結構な額に見える
「デレクのおっちゃんさ、ランスロット様とキャロイス様と何人かで若い時に冒険者やってたらしくてその時使ってたものらしいぜ?もう俺は使わねぇからって渡されたんだけど俺には入ってるもの全部はわかんなくて、強くなればいずれ取り出せるようになるっつってたぜ」
あ。ソルにはコレ、イメージで見れてないやつなんだ
お口チャック案件ですね
口の中全て飲み込む
「その剣は?」
「コレは屋敷出る寸前で、ランスロット様の執事のバゼル様が俺に投げたんだ。本当に困った時、この剣を衛兵でも、騎士でも誰でもいいから見せなさいってな、よくわかんなかったけど」
「見てもいい?」
ソルは片手で鞘に収めたままの剣をほらっと私に差し出す
掴むとグラっと落としそうになった
おっも!
え?!
ソルこれ片手で軽そうに渡したじゃん!
重さにビックリしながらシンプルだけど綺麗に装飾された持ち手と柄を見る
そこにはワインレッドの綺麗な石がはめ込んであって家紋のような模様が刻み込まれていた
少し鞘から剣を抜くと綺麗な赤味を帯びたシルバーの刀身に文字が刻んであった
それを見て私は思わず微笑んでしまう
「これ、普通の言葉じゃねぇから読めなかったんだ。なんて書いてあるか分かるのか?」
「ううん。わかんない」
本当は読めたけど、嘘をつく
きっとお父様がいつかソルにあげるつもりで作ってたものなんだろう
本当におとーさまが自分で鍛えて強く育てるつもりだったんだな
と彫られた言葉を撫でながら思う
“ランスロットが刻むその者の名は ソル”
剣には普段使う公用語では無く違う言語でそう、刻まれていた
この石に刻まれてるのは私の家の家紋なのかな?
剣を鞘に戻してソルに返す
「この剣は普段収めてた方がいいかも、この石に刻まれてる模様、多分家紋みたいなものなんだと思う。ダイヤトリンド家の関係者だって見る人が見たら分かっちゃうかもしれない」
「なるほど、だから困った時って・・・。まあ、元々使うつもりは無かったんだけどな。素振りには重てえから丁度いいけど、まだ振り回すにはデケェし」
あ。ちゃんと重いんだ
よかった私が非力なのかと思った
ソルは包帯の様な細長い赤い布を鞄から引っ張り出すと柄と鞘を固定するようにグルグルと巻き付けてしっかり結ぶ
「これでパッと見はわかんねぇだろ?」
そう言ってまた背中に背負う
「そういえば、凄く移動してたはずなんだけどどうやって見つけたの?」
瞬間移動を繰り返してだいぶ離れてたつもりだったけど
もしかしたらそんなに離れてないのかもしれない
それなら足も身体も動くようになったし移動しなくちゃ
「割とすぐ追っかけたけど匂いもほとんどしねぇし、4日走って雨で匂いもほとんど流されて、アレクシスからヴァイスは飛ぶように早く移動できるって聞いてたし。もう追いつけねぇって半分諦めながら走ってたんだ」
待って、4日走ったの?!かすかな匂いだけを頼りに?!
ってか丸一日ちょっと移動し続けたあと私、そんなに寝込んでたの?!
ソルの視線がプティに落ちて私もプティを見る
「ぴぃ?」
「走ってたらコイツがいきなり顔に張り付いたんだ」
アハハっと笑いながらプティを撫でるソル
「いや、息できねぇし。スライムに殺されるかと思ったけど俺が立ち止まったら、ビットラの姿になったから、色が赤いけどヴァイスのだと思って着いて行って、見つけたんだ」
「2回も命救われちゃった」
「いや、熱出してただけで別に死にかけてはなかったぞ?弱ってはいたかもしんねぇけど危ない感じはしなかった」
え?
あんなに死ぬーって思ってたのに?
うわぁ。
すんごい恥ずかしいやつじゃん!
「熱出してる時って心弱るもんな・・・でもさっきの『私死んじゃった!』は・・・」
お腹を抱えて笑い出すソル
私は顔を真っ赤にしながらぺしぺしソルを叩く
「だって虫が!」
「さっき聞いてなかったから、もっかい言うけど。内出血の血を吸わせてたんだよ、ほらっもう腫れてねぇだろ?緑化の実も食ったしもう大丈夫なんじゃね?」
自分の足を見ると6つの赤い点はまだあるけど確かに腫れは引いてて、痛みもほとんど無くなってる
左肩の怪我を思い出して触ってみるけど
こっちも痛みがない
緑化の実凄い!
ふと、足を見てたらあることに気付く
あれ?私パンツじゃない?
上・・・もキャミソール型の下着だ
さっき肩に布をかけてくれたのは服きてなかったから?
「ソル・・・。私の服は?」
「ずぶ濡れだったから脱がしたけど?」
当たり前だろ?って顔で
キョトンとするソルの顔を見て一度深呼吸をする
7歳の子供だし
妹のお世話してたんだし
看病してくれてた
うん
私一応中身は28のおばさんだし?
恥ずかしがる方が恥ずかしいのか?
コレ
「いったん出てくれる?」
「なんでだよ?いきなり出てけって「服着るから一回出てって」
なんで?と聞く赤い瞳を無視して背中をグイグイ押して穴から追い出す
四つん這いになって自分が持ち出した荷物から一度アレクに貸した方の洋服を着る
モノトーンカラーの少年風の服に着替えてダミーの髪の毛無しの帽子を被ろうと、癖で長い髪をまとめようとして
スカっ
と宙に抜ける
あ、髪切ったんだった
帽子を被るのをやめて荷物を穴から外に出していく
「ソル、マジックバッグにこっちのもの入れて欲しい」
穴から出てゆっくり立ち上がる
うん!足、痛くない
大丈夫そう
塩と砂糖が入った箱や、私に掛けてくれてた大きな布
今要らなさそうな物をどんどんマジックバッグに入れてもらう
「全部入れてもいいぞ?」
「いや、一応旅する訳でしょ?いつか人に会ったり、見られた時に何も荷物持ってなかったら変だから鞄は持っとかないと。だからその剣も移動中はマジックバッグに収めてね」
「ん。わかった」
テキパキと準備する私の髪をソルが
サラっと触った
「これどーやって色付いてんの?」
「え?」
そういえばそこの言い訳考えてなかったな・・・
「い・・・いきなり・・・色が」
ど、どうしよう
「ぴい!」
私の頭の上にぴょんっとスライム型のまま飛び乗ったプティ
プティはソルほど深い色ではないけど結構鮮やかめの赤色だ
「もしかしてそいつがレッドになってんのとカンケーあんの?確か色無かったよな?」
「あっうん・・・そう!プティが炎食べちゃって赤くなって・・・私も赤くなって・・・」
やっばい
どうしようもないくらい下手だ
とっさに何にも思いつかなかった!
すぐバレそう、どうしよう
「あか?レッドになったってことか?すげぇな!じゃあ俺たちお揃いだな」
あ。どうにか誤魔化せそう
時々ソルって鋭いのかそうじゃないのか、わかんない時ある
私は布を少し細長く切る
右手にぐるぐるっと巻き付けて手の甲を見えないように隠す
鋭い感覚を持つ者にはバレるっていってたし
ソルは鋭い感覚を持ってる人代表みたいな子供だし
「ん?怪我してたか?」
「私今日から右手に秘密を宿す中二病少女になるわ!」
立ち上がって布を巻いた右手を顔の前に持ってきてちょっとポーズを決めながら言う
ふ、ふざけすぎたかな?
「何言ってんのかさっぱりわかんねぇ、ちゅーにびょー?って何だよ」
大きな剣をマジックバッグに入れ、私が持ってた鞄を2つとも肩に掛けながら立ち上がるソル
「中二病は・・・うーん。説明が難しい・・・」
この世界、中二病が具現化しちゃったような魔法のある世界だし・・・
適当に誤魔化しちゃお
「秘密がバレちゃダメな病気って設定の遊びのみたいなものかな?私の右手には誰にも見られちゃいけない秘密が隠されてるのよ!だから今から誰にも、ソルにも見せない」
「ふーん」
ヤバい、温度差が・・・
まあ、そういうごっこをやってるの!って
言い張ればこの布は巻いたままで過ごせるかな?
ソルは自分の左手の甲を見つめる
ボッ
は?!
「あ、やる前に緑化の実もう一口食えばよかった!まあ、いいや。ほれっ残ったやつヴァンが食え、腹減ってるだろ」
いきなり左手の甲に炎が上がってソルの左手の甲に焦げた跡が見える
何事も無かったように私に焼いてある緑化の実を投げると
マジックバッグから細長い布を出して私と同じように左手に布を巻く
「なっなにやってんの!自分で自分の手を焼くなんて!!」
「俺もちゅーにびょーやるっつってんの!」
さっき私が取ったように左手を顔の前に持ってくる
「俺も今日から左手に秘密を持つちゅーにびょーだ!」
「馬鹿っ!ソルが食べなさい!」
私は投げられた緑化の実を無理やりソルの口に押し込もうとする
「俺はもう緑化の実食わねぇっ!跡が出来ねぇで治っちまうだろ!」
サッとかわされてガバッと肩に担がれる
「わっ」
「スライム!捕まってろよっ」
「ぴぃ!」
頭に乗ってるプティはヘアバンドのように伸びて頭にくっつく
ぐっとソルは屈むと
がっと走り出した
すごい速さで景色が流れていく
私を抱えてこのスピード?!
とんでもないんだけど!!
「ってか今!ヴァンって!」
「俺は今日からデレクだ!ソルって呼ぶなよ!」
どっからデレクって名前でてきたの?!
ソルの影も残ってないじゃん!
ってかヴァンって名前も変えた方がいい気がするし!
でもまずなおすのは
「スライムって言うの禁止!プティ!」
「可愛すぎねぇ?もっとカッコいい名前にしよーぜ!」
単車で走るようなスピードで森の中を掛けていく
2人でギャーギャー言いながら
甘くてとろけるように美味な緑化の実を
ソルに担がれ、不貞腐れながら食べた
ちょっとでもいいぢゃん!続き気になる・・・かも!
って思ってもらえるようがんばりまっす!
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