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19・side ソル〜響く声〜



今日はヴァンと合う日





朝、親方が扉に鍵をかけに来るのをルナとソワソワしながら待つ




「お兄ちゃん、今日もちゃんと帰ってきてね?」




ルナは心配性だ

両親がすぐ戻ってくると言って帰ってこなかったあの日から随分と聞き分けもよくなり、わがままも言わない


ただ、俺が外に出る時は必ず『帰ってきてね』と言うのがお約束になった



俺達に与えられた小さなボロ小屋



何も持ってない俺達には2人、寄り添って屋根があるところで寝れるだけでもありがたい

夜、日が沈む前にカチカチになったパンを小屋に投げ込まれるだけでもなんにも無い俺達には親方だけが生きる為のたった一つの光だ



遠くから足音が聞こえ出す




この歩き方は親方・・・と


チッ

ドルゴとガルドも一緒かよ


まあいい。早く、早く!鍵を掛けてくれ!



部屋の隅っこで念の為ルナの前に座り自分の背中に隠す



ただ食料を調達する為だけに森に入ってた

でもヴァンと知り合って森に行く事が1番の楽しみになった



いつもは閉ざされたまま声もかけずに鍵を閉めて去っていく親方は

俺の期待も虚しく建付けの悪い扉を開けた




「おい、ソル。今日は契約前に確認する事があるから行くぞ」




「ル、ルナンも一緒がいい」




親方の後ろからドルゴとガルドがニヤニヤとしている



俺がいないとルナはおもちゃにされ、至る所を怪我させられる

一緒じゃなきゃ行かないと、遠回しに親方に言う




「はぁ?ダメだダメだ、旦那様の前に出せねぇだろそんな薄い色は」



旦那様?俺これから会わされるのか?

なんで?契約まであと7日あるのに



「じゃっじゃあ鍵閉めてくれよ。どうせ今日は閉める日だっただろ?」



俺がおもちゃにされるのはいい、ルナは弟だと言い張ってるけど。いつまで誤魔化せるかわかんねぇし、ドルゴとガルドが遊ぶ気満々のあの顔が腹立つ




「・・・。ふんっいいだろう、さっさと行くぞ」




ええーっ!!とドルゴ達が声を上げる



俺はほっとして一瞬振り返る



「静かに、俺達が離れるまで板でしっかり穴を塞いどくんだぞ」





小声で言い聞かせ、ルナがこくんと頷く



俺は立ち上がり出てすぐ扉を閉める




音でルナが壁に空いた穴の前にコソッと動くのを確認して扉から離れる

親方がそのまま歩き出そうとして俺は慌てて声を荒らげる



「鍵!」



「あぁ、ったくうるさいな」




わざとかけようとしてなかったのは分かったが

目の前でしっかり鎖と南京錠を掛けたのを見届ける




「余計な事言うなよな」




ドルゴにドスッと背中を思い切り殴られる



こんな弱い奴、親方のガキじゃなかったらボコボコにすんのに

ギリィと歯を食いしばりながら

睨み、ドスドス歩いてく親方に黙ってついて行った




後ろから大小様々な石を投げられ、的にされながら

しばらく歩き、薪割りをした時に薪を持ってくる親方の倉庫に着く

いつもは見張りなんて居ないのに今日は倉庫の入口に男が立ってた



その男がでかい扉を開けると親方が光の玉を作ってサクサク倉庫に入ってく




「いやーっすいやせん。お待たせしやした」





「朝一でわざわざ私が来てるとゆうのに、トロトロしないでもらいたい」




親方よりスラッと背が高く、高そうな服を着た薄めのレッドの髪をした男とその後ろに立つ同じ色の子供




さらに奥から真っ黒な木箱を持った嫌な感じのする、ガタイのいいグレーの髪色の男が歩いてくる




「やはり素晴らしいレッドだ、小さい頃より濃くなったんじゃないか?」




親方に背を押され男の前に立たされるとジロジロと上から下まで見られる

初めて会う旦那様とやらは一度俺を見たことがあるらしい




「ええ、ええ!背中の魔痕も見事ですぜ」




服をがばっと捲られ為されるがままに背中を向ける

親方の普段聞かない口調に、旦那様とやらが偉い人なんだと嫌でもひしひし伝わってくる





旦那様とやらに気に入られないと仕事の契約してもらえないんだろうか?

俺、やっぱり要らねえとか言われたらどうしよう

ここから捨てられたら、俺達はどこで寝ればいい?



なんでここに来させられたか分からず不安が募る




「ああ。決まりだ。マルド、その箱を開けろ中のものには触れるなよ」





「へいへい」



くわーっと欠伸をするマルドと呼ばれた男

ひしひしとなんだか分からないが、危ない男だということだけは本能でわかる




「おい、お前達扉を閉めろ」



親方がドルゴとガルドに怒鳴る




ピシッと扉が閉められると俺の目の前に置かれた黒い木箱が開けられた




中には藁の上に置かれた色のない輪っかが三つ

1つは大きく、2つは小さめ


冷や汗がぶわっと全身からでる



危ない

これは触ってはいけないものだ

触ってはいけない


アブナイモノダ




「それを手首、首の順にはめなさい」




「いやだ」



咄嗟に断わる




するとゴッと溝落ちに親方の拳がめり込む


「旦那様が直接、やれと言っているんだ!黙ってつけろ!」




ゴホッゴホッと咳き込みながらもう一度言う


「いやだ」




今すぐこの場から逃げ出したい程の寒気

全身の毛が逆立つような感覚

あれから良くないものが出てるに決まってる


あれはヤバいものだ!

絶対触りたくない!




「これだから獣人は・・・」



ボソッと呟いたあと

はぁ。と旦那様がため息を吐く



「これは恐怖に耐えることが出来るかの度胸試しの道具なのです」



ど、度胸試し?



これはそんな生易しいものじゃない


死にそうな目には何度かあった

魔物にうっかり追いかけられたり

骨が折れたり

何度も恐怖する場面にはあってきた


俺は本能に従いこれまで生き残ってきた


あれは触っちゃいけないものだ

全身が、本能が、触るなと俺に訴えてる



「これは特別に恐怖を与える魔術具なんです。元々、ナルシドに濃いレッドの人材を探してると話したら君の話を聞いてね、私の元で働かせてはどうかと話を貰ったので直接見に来たのですよ」



親方の所じゃなくて、旦那様のところで働く?



「ナルシドより何倍ものお給料を出しましょう。弟くんももちろん連れてきてくれて構いません、君が働く限り、巣立てる歳になるまでいてくれて構いません」



旦那様はにこりと笑い俺に魅力的な話をどんどん投げかける



「住み込みで部屋にはお風呂もベッドも着いています。食事も私の後にはなりますが3食キッチリつけましょう。私は濃いレッドの働き手がどうしても欲しいのです」




「行く!俺っ親方じゃなくて旦那様んとこで働く!」




夢のような待遇

迷いなんてない

屋根があって、お風呂があって、ご飯が3食もついてる

濃いレッドの俺が欲しいと

ルナも守れる


働きたい!





「でも困りました。こちらのマルドのように、いずれは屈強な戦士となり私を守って欲しいのですが、この程度の恐怖に勝てないようであれば雇うことは出来ません」




はあ、と残念そうに旦那様は眉を下げる




「マルド、フタを閉めて下さい」





ドッドッドッ




こんなチャンス二度と来ないかもしれない

ドルゴ、ガルドからも離れられる

あれを付けるだけで

ルナを守る力を手に入れられる



マルドと呼ばれた男が箱を閉めようとする



「まっ待て!」




あの、色のない輪っかを付けるだけ

する事は簡単なんだ


「ほッ本当に、魔道具なのか?」




嫌だ

付けたくなんかない





「ええ。恐怖を感じるだけの魔道具ですよ」





嫌な汗が頬を伝って落ちていく


「お前も、これやったの?」




マルドにも聞いてみた



「ぁあ?俺はやっちゃいねぇよ、でもそれをつけた奴を何人も見てきたぜ、こんなにビビってるのはお前が初めてだな」




ヒャハハッと馬鹿にしたように笑い声をあげる




何人も付けたのを見てきた

なら、大丈夫なはず


落ち着け、俺




恐怖を感じるだけっ

それだけ




歯を食いしばり小さい方の輪っかを手に取る



ドクンと輪っかが脈打ったかと思うとスルッと勝手に手首に絡みつくように張り付いた


同時に気持ち悪くなって吐きたくなるような寒気で全身がガタガタと震える


勢いでもう片方の手も輪っかを握る

それだけで勝手に手首に絡み、張り付く


これ

生きてるみたいだ


気持ち悪い


本当に吐きそう




吐かないように必死に耐えながら片膝を地面に付く



「さあ、最後のひとつも首へ持っていきなさい」




やっぱり何かおかしい

なんでそんな顔するんだ


なんで笑ってるんだ?


こんなに気持ち悪くて

嫌な感じがしてるのに



「やっ、できねえっもうっやめる!」




怖い

ガタガタと震える体に力が入らなくなっていく




「今すぐ付けろ」



そう強く旦那様が言うと

付けたくないのにゆっくりと両手が勝手に動いてデカい色の無い輪っかを持ち上げた




「いやだっやめろっなん、なんで」




輪っかの一部が首に触れた途端プツンと糸が切れたように

体から力が抜け地面に倒れる





俺は目も見えてるし聞こえるのに身体だけが力を失い、指1本動かすことすら出来ない



「さすが旦那様ですぜ、このガキ頑固なんでヒヤヒヤしやした!」




擦り寄るように旦那様の元へ親方が媚びへつらう



「ふん、お前がちゃんと躾とけば私が言わずともつけただろう、手こずらせやがって。マルドそのガキ持って来い」





「わりぃなガキ、つけた奴は何人も見てきたが、外した奴は1人もいねーんだよ」




うあああああああああああぁぁぁ!!



騙された



うごけうごけうごけ



危ないって分かってたのに

本能のままに逃げ出せばよかった


なんで俺はあんな言葉信じちまったんだ



手首も首もジリジリと痛い

首はグッと締められてるような感覚で苦しい



動きたいのに動けない


クソっ

クソクソクソクソクソクソッ!


俺が馬鹿だから

騙された

情けない

悔しいっ

くやしいくやしい!



視線がグラッと揺れて高くなる

マルドという男の肩に担がれたようだ



「あぁ、そうか。そのガキ店の地下のゴミ部屋にでも運んでおけ、弟の処分も任せる」



そんな



「俺ぇ?5歳だったか?数秒で壊れるもんは楽しくねーんだよなぁ。あのガキ共に任せてもいいか?」




やめろ




「私はゴミには興味無い。息の根が止まったかどうかだけはお前の目で確認しろ」



やめてくれ




この際俺はもうどうなったっていい

せめてルナは傷付けないでくれ



頼む




なあ動けよ身体!!



たった1人の家族なんだ



「ナルシドの親方〜。そこのガキどもに弟の方の処分任せるぜーっ」




「しっかり遊べ、最後だからな」




「よっしゃ!ラロルドも行こーぜ」



軽い足音が3つ離れてく




いくないくないくないくな

ルナに触れるな



行くなよ!



誰か!誰でもいい


ちくしょう






うあああああああっ









心の中で何度も自分を罵倒し叫ぶ




本能を信じればよかった

どれだけ身体を動かそうとしてもピクリとも動かない

次第に視界も色を無くし何も映らなくなる




怖い



ルナが死んでしまう事がこんなにも恐ろしい


俺の手でもう護ってやれない


俺が何をしたっていうんだ

たったふたりの家族で

一緒にご飯を食べて笑って生きたいだけだった


それしか望んでなかったのに



ヴァンがあらわれた

本物の友達を知った

楽しかった

まだ沢山話もしたかった

色んなこと教えてやりたかった






幸せが()()壊れた




身体が地面に落とされたような感覚

額がうっすら冷たい





「あとで旦那が見に来るってさせいぜい受け入れずに足掻いとけ、その方が見てて楽しいからな」





ガチャガチャと鎖のような音が鳴った後

その男の気配も消えた





なにも音がしなくなる




何も見えない

何も聞こえない




感じるのは手首の痛み

首が締まる苦しさだけ



どれだけ時間が経ったのかも分からない

心が折れてしまいそうだ






ヴァンごめん

今日会えねーや



ヴァン。

ルナ本当は女なんだ

嘘ついてごめん



ヴァン

俺はいいからルナを助けて



痛い

苦しい

全部我慢する


負けねえから




ルナを助けてくれ


ヴァンっ






繰り返し繰り返し頭の中で届かない願いを叫び続ける

同じ言葉を何度も何度も考え、叫び続ける

考えることをやめたら何かに飲み込まれるような気がしたから




「ーーーーしてるな」




あぁ。

誰か居る



耳まで遠くなってきたのか



男の声が聞こえる

でも何言ってるのかわからな

「抵抗するのはよしなさい、抵抗しなければ弟の命までは取らないと約束しましょう・・・いや、妹の命ですかね」




あああああああああああっ



ルナ、

ルナっ


るなっ!





考える事をやめなきゃ




もう、俺に出来る事はそれしか無い







手首の痛みが増し、腕全体に痛みがジリジリと広がってく

俺、終わるんだな




ルナにもヴァンにももう会えねぇ



寂しい



もうルナの無事を祈る事しか出来ねぇ


兄ちゃん失格だ




1度も祈ったことなんかねぇけど

神様とやらが本当にいるなら

ルナだけは助けてくれ


なんにも知らない


痛みしか知らない体の弱ぇガキなんだ


俺はもう自分を諦める





意識を手放そう

考える事を辞めれば腕まで広がった痛みが俺を飲み込んでくれるだろう



「ーーー!抵抗しー!素直に受け入れちゃダメ!」




幻聴・・・?



ヴァン?


ヴァンなのか?

ここに居るのか?


グッと飲み込まれそうだった意識を手繰り寄せる




「ルナは助けた!!こんな奴らの声に従っちゃダメ!!」







ヴァンだ!

なんで?幻聴ぢゃねえ!


肩から胸に広がろうとする痛みを必死に押し返す




ヴァン!

ヴァンだ!



来たのか?

俺の事まで助けに来てくれたのか?!



俺の事助けてくれっていってねえぞ!



馬鹿だなっ

るなの事しか

頼んでねえのにっ



ルナは助かった




俺の叫びがヴァンに届いてた



ありがとう





ありがとうありがとうありがとうっ





うおおおおおおおっ

負けねえ!



心の中で唸り、叫びながら痛みに抗い

吠える



ガルルルル

負けねぇぞ




手首の痛みが無くなった





首を締められてるような感覚もフッと消えた








パチ

ふはっ



瞼が動き大きく息を吸い込むと、とんでもない悪臭に襲われる

まだ霞む視界の中、色の無い長い髪が俺に垂れてるのが見えた




身体が動くとわかった瞬間

逃げなければ、と




本能のままに目の前の身体を押しのけ走る




足に絡んだ鎖が張り

派手に顔から地面に転ぶ




逃げろ逃げろ逃げろ





「ゔゔゔゔっ」




歯の隙間から唸り声が漏れる

まだ視界がぐらつく中

回らないパニック状態の頭を必死に働かせる





あれ?

ヴァンは?







「そる、るなちゃん、お屋敷に、いるから」





薄暗い部屋に目がなれる頃

俺の視界にはさっき突き飛ばした色の無い塊しかいない



俺の突き飛ばしたその色の無い塊から俺が切望した奴の匂いがする




足に絡む鎖を外す




「森を、ひたすら、進んだ先へ早く行「ヴァ、ン?」





声も匂いも全てがヴァンだった



長い色の無い髪だけが見覚えなく

混乱しながら駆け寄る



「うわあ!匂いがヴァンだ!声も!わりぃ!一瞬分かんなくて!何があった?!なあ!なんでこんなっ」



濃い血の匂い

止めなければ



何があった?

なんでヴァンだけがこんなボロボロで俺と一緒にいる?


まさかヴァンも捕まったのか?

でも風の流れで戸が空いてるような気もする



シャツを脱ぎ、素早く血が流れ続ける足に巻きぎゅっと結ぶ



「いぃっつぅ」





急げ



急げと本能に急かされる




「私はいい、からっ早く逃「なんにも良くない!女の子は怪我しちゃいけねえって教えてくれる奴いなかったのかよ!!つか女だったのかよ!」



歯の隙間から勝手に唸り声が漏れる

ヴァンを置いて逃げるなんて俺の選択肢にねえよ!!



がっと持ち上げると思ったより細く、軽い身体



本能が走れと

上に行けと

廊下に飛び出ると道が分からないはずなのに

迷いなくぐんぐん走り抜ける



「そるぅぅ」



弱々しい声が俺の名を呼ぶ



今度は俺が助ける





迷路のような廊下なのに

こっち、あっち

と足の赴くまま全力で駆け抜ける





ヴァンは女だった





そう自分の中で結論付けるとストンと全てがハマった感じがした

今思えば言動や笑う顔全てが女の子だった


神無しの話をした時の悲しそうに揺れた瞳も

世界を知らない理由も




「ダメだ寝るな!」





ダメだ!

最初はまだ力が入ってたヴァンの身体から力が抜け

どんどん命が抜けていく

確実に零れて落ちていく





やめてくれ


まだ話したい事あるんだ

謝りたい事もあるんだ

お礼もまだ言ってねえ



「俺まだ言いたい事言ってねえ!」





階段を駆け上がると何人もの大柄な男が手に剣や弓を持って走り回っていた



「なんだお前は?!何処から?!」


「奴隷が逃げ出したのか?!」




俺を見つけた男達は口々に悪態をつきながら剣を俺とヴァンに向ける





「邪魔だ退け!」






身体の中に生まれた熱い熱が身体から飛び出す

同時に周りに業火が広がる




うわあっと驚く男達を軽く飛び越え壁を蹴る

あぁ

邪魔だ

早く外に出なきゃいけねぇのに



こっちだ!

水を持ってこい!



飛び交う怒鳴り声

どんどんこちらに沢山の足音が迫る


どうする

迷う時間なんてねぇ





ズルっ





胸に乗ってたヴァンの手が

だらんと力なく落ちた







あぁダメだ




間に合わない





喪失感が胸を刺す



いやだ

死ぬな



死ぬな

死ぬな

死ぬな


もう俺を置いていかないでくれ


父さんも母さんも俺達を置いて消えた



腕の中のヴァンがどんな色でも女でも

大切なんだ



失いたくない




死ぬな!!















『許してやろう』


頭の中に知らない声が鳴り響く

胸から何か溢れて沸いてくる


『使い方は分かるな?』








うん

分かる





ありがとう










視界が真っ赤に染まる

足を踏ん張り思いっきり空に向け吠えた





ドッゴーーーン





身体から溢れた力が天井を吹き飛ばす

煙で周りが見えなくなり

真っ赤な炎に一帯が包まれてた



俺は高く飛び上がり瓦礫を登る






ルナの元へ






鎧を着た集団を見つけ、そこに向け走る



1歩踏みしめる度に

ドンッと加速する


何故かなんて考えない

風より早く駆け抜ける

力が溢れて止まらない俺は今

何だってできる



あきらめない

俺はあきらめないっ

間に合わせてみせる





「おいっあれはなんだ!」



「火の塊?!あっ待て!」



軽く飛び越え何台も並ぶ馬車の奥へ





ピキーン


冷たい風が吹いたと思った





足が止まった

動かねぇ






「ヴァイス!あぁ、なんて事だ」





訳が分からないまま止まった足は膝まで氷に包まれ

地面に縫い止められていた





「ガルルルルッヴヴゥッ」



いつの間にか傍にたってる男へ

お前は誰だ

俺の邪魔をするな


ルナに会わせなきゃなんねぇんだよ!



話そうとした言葉が唸り声となって喉を震わす





「ランスロット!彼女をこちらへ!」





腕の中に居たはずのヴァンが消える

いつの間にか男が抱き俺から凄い勢いで離れていく


見えなかった

いつ取られた?


待て!




おいっ待てよ!!!






身体から熱を解き放ち膝まで絡む氷を一瞬で溶かす




「お兄ちゃん!!!」






濃いブルーの鎧の男の背中へ突っ込もうとしていた足を止める



聞こえた




声のする方へ視線を向けると

ブラックのローブを脱ぐマゼンタとブラックの髪色をした男の後ろに女の人と共に立つマゼンタの色した包帯を全身に巻いた俺の妹



ヴァンを抱いたブルーの鎧の男もそこへ向かってる




フっと俺の中の熱が消えた




勢いよく飛び出そうとしてた勢いのままにバランスを崩し足がもつれゴロゴロと地面を転がる

一瞬で冷えた思考が激しく回り出す


ヴァンをヴァイスと呼んだ

息を吸い込むとヴァンと同じ匂いがブルーの鎧から香る


“ヴァンの家族”



思考が結論に辿り着くと地面に転がったまま俺は吠えた



「助けてくれっ」



目で捉えられない程のスピードでブルーの男は進み

ヴァンはそっと、ブラックとマゼンタの男が脱いだローブの上に寝かされる




溢れ出る力が無くなった俺は少し遅れて鎧の男の後ろからヴァンを見下ろす



「魔力が枯渇しています」



ヴァンの身体がピンクの光に包まれるが直ぐに光が解け宙に舞う




「ダメだ、魔法を受け付けてないッ」



濃いブルーの男もヴァンへ両手をかざし、濃いブルーの光でヴァンを包むが、同じように空中で飛散する



こうやってる間もヴァンからいのちが抜けていくような感覚が伝わってきて俺を焦らせる



早くしねぇと!



「ルナ!!」




本能がルナに会わせろと俺の身体を突き動かしてた

ルナに何が出来るのか分からねぇ

それでもルナに会わせなきゃいけなかった



「離してっ!お願いっ!触らせて!」



駆け寄ろうとするルナを抑えていた女の人が手を離す



足を引き摺りながらとととっと駆け寄ってくる

一瞬迷った様子を見せたマゼンタとブラックの男はスっと横に避ける




「死んじゃダメっ」




ルナの手が迷いなくヴァンの手に触れた途端

色の無い眩しい光がルナを包む





目の前の見たことの無い神秘的な光景に

その場にいた人達は皆

時が止まったかのように魅入った


ルナから溢れる光がヴァンに吸い込まれ

ルナの色はみるみる鮮やかになっていく


なびく短い髪は薄いレッドから鮮やかに

色無眼だった片目も赤く染まっていく


消えかけのような薄い首元の魔痕が大きくハッキリとした色に変わる






光が収まるとルナは涙を零した




「あたしが生まれたのは、この為だったんだ」




そう小さく呟くとふえええっと空に向け大声で泣く





ヴァンからいのちが抜けていく感覚が無くなり

俺も力が抜けてその場に座り込む



助かった





目の前の突然の出来事に言葉をなくしていた大人達も我に返る



「魔力が・・・安定しました。もう大丈夫です」




ヴァンは助かったんだ




するとぐわしっと頭を捕まれ乱暴に撫でられる




「よくやった坊主!!」



涙を目に貯めニカッと笑う濃いブルーの鎧の男の目は

ヴァンによく似ていて

俺も涙を零して


笑った






ちょっとでもいいぢゃん!続き気になる・・・かも!

って思ってもらえるようがんばりまっす!

評価などしてもらえたら

飛び跳ねて喜びます!!

よろしくお願いします!

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