星の降る町
某県にある某町は人口数千人ののどかな田舎町。
この町には特に強みとなる観光名所がないため、町おこしになる要素がない。
ただ、世界で唯一、この町にしかない不定期イベントがある。
「拓也も物好きだよなー。こんなしょぼい町で流れ星なんか見てどうするってんだ」
「近場から見れるんでしょ? 最高じゃん」
そう、この町には定期的に星が降ってくる。
そのことから【星の降る町】と呼ばれている。
「ふっ、お前はこの町のことをちゃんと調べてないようだな。しかとその目で見て驚愕するこった」
「うん! 楽しみは取っておきたいからさ」
東京に住む拓也はこの町に住む少年の京とは親交がある。普段は京が東京に遊びに来るのだが、今回は拓也の方が京の住む町までやってきたのだ。
「楽しみ、ね……」
京は含みのある言い回しをしてきた。
「なに?」
「いや」
濁されてしまったけど、今は星だ。
「さぞかし幻想的な光景なんだろうなぁ」
双眼鏡を首にぶら下げた拓也が瞳を輝かせて述べるため、京は口をつぐんだ。
「最近の科学技術はすごいね。星が降ってくる日と座標位置が分かるなんてさ」
今や星がいつどこに降ってくるのかが事前に分かる世の中だ。科学の力は偉大だ。
「衛星から星の軌道を計測して到達日時と場所を割り出してるらしい。詳しい仕組みは知らんけど」
感嘆の声を漏らす拓也に、京が空を見上げながら解説してくれた。
「そろそろ降るぞ。覚悟しておけよ」
「わくわく」
「………………」
ウキウキ顔で空を眺める拓也の横顔を見た京は苦笑した。
「……あっ」
夜空に煌めく物体が見えてきた。
それは徐々に大きくなっている。こちらに近づいているためだ。
「――今夜は鈴木さんの家か」
「何か言った?」
星に夢中の拓也に京の呟きが拾えるはずもなく。
「いや、なんでも」
京は手を大袈裟に広げて首を横に振った。
燦爛と輝く星がこちらへと近づいてくる。
近づいて――――
町の一軒家に落下した。
屋根を突き破り、けたたましい音が辺り一面に響き渡った。
「ちょっ、大丈夫なの!?」
拓也は写真を撮ることはおろか、風流に観賞することも忘れて京に問いかけた。
「あぁ。事前に分かってたことだからな」
京の反応はなんてことはないとばかりに冷静だった。まるで生活の一部で気に留める要素はないかのように。
「そんな悠長な!?」
「これがこの町の日常だからな」
京はあっけらかんと言い放った。
「この前は山本さんの家が破壊されたんだよなぁ」
「道路に落ちると通行止めになるから勘弁願いたいよね」
思考がショートした拓也は一周回って冷静沈着になっていた。
その後、破壊された鈴木さん宅に落ちた流れ星――――直径三メートルほどの隕石を二人で眺めたのだった。
流れ星。
星が降ってくる。
星の降る町。
響きは風流だが、現実問題として間近で物体が落下してくるのはたまったものじゃない。
そんな大きなリスクを背負ってもなお、それでもこの町が好きな物好きな町民だけがずっとこの地に住み続けるのだ。
星の降る町という幻想的な肩書きと引き換えに、町民たちは日々星の動向を追う使命に駆られているのだ。
読んでいただきまして、ありがとうございました!
不定期で家や道路等を破壊する隕石が降ってくる町……住みたいですか?
僕は住みたくないです。




