グレイ
暑い日が続きますね。お体にお気を付けて!
「キョウタロウー!起きてー!」
元気な声で目が覚めた。これまた見慣れない天井だ。
「・・・最近は天井が見慣れないことに慣れてきたな。」
「何言ってるー?おはようキョウタロウー!」
「おはよう、フィーネ」
朝から元気いっぱいなのは、もちろんフィーネである。天真爛漫な可愛さが売りだ。だから、それでいいのだ。いいのだが・・・。
「朝はもう少し静かに起こして欲しい」
「静かに声かけても起きませんでしたー!」
なら仕方ない。
「そう言えば、エアラインちゃん、先に王都に行かなきゃならないからって、出発したみたい!」
「え。そうなの!?」
それでフィーネに伝えてって言ってたのか。というか・・・!
「なんか緊迫した場面が多くて、あんな可愛いエアラインと、普通の会話をしてない!!あああーー!!なんてこった!!」
「何言ってるの?」
フィーネが冷たい目で見てる。
とりあえず着替えて顔を洗い、階下に降りていく。簡単な朝ご飯が用意されているのでそれをいただく。相変わらず不思議な食材だが、それも少し慣れてきた。
「この卵みたいなのはなんだ?」
「ドラトカゲの目玉焼きね!」
「トカゲかよ。こっちのキャベツみたいなのは?」
「キャベリンね!」
どっかの薬みたいだな。
「でもうまいな!キャベリンうまうま!」
「でしょー!」
「フィーネ、キョウタロウ、おはよう」
「お兄ちゃんおはよー!」
「・・・おはよう、ケネス」
ケネスも降りてきた。昨日の話を意識してしまう。ケネスが魔人か。でも、まだ魔人になってない、んだよな?
「ケネス、体調はどうだ?」
「なんだよ、別に普通だが?」
「そうか。ならいい」
「なんだなんだ、心配してくれてんのか俺の筋肉を!?」
「ばかか、お前は。脳ミソまで筋肉か?」
「そうだろそうだろ!俺は全身筋肉だろう!!」
「いや今のは誉めたわけじゃねー!」
「あっはは!」
くだらないやり取り。くだらなくて、でも楽しい。昨日会ったばかりなのに、なんとなく気が合うケネス。こいつが世界を、、、。
「ケネス、俺はこの世界のために全力を尽くすことに決めたぜ」
「おお。お前が協力してくれりゃ百人力だ!」
「ね!キョウタロウの力は助かるよ!それに、私はキョウタロウと旅ができて、嬉しいし!」
嬉しいことを言ってくれるやつらだ。
「俺も、二人と協力できるのが楽しみだ。改めて、よろしくな」
「おお!」
「うん!」
となれば、
「まずは仲間探しだな。グレイだっか?」
「ああ、あいつは昔馴染みでな、一緒によく鍛えあった仲だ。ちょっと鬱陶しいと思うかもしれないが、悪いやつじゃないから」
「そうそう!私もよく遊んでもらったなあ!ちょっと癇に障ることがあるけど、悪い人ではないから!」
「・・・。なんか、あんまり会いたく」
「さあ!行きましょう!」
「そうだ!世界が待ってるぞ!」
うわあー。嫌な予感しかしないんですけど。
宿を出て、村の中を歩く。少し内陸に来たからか、フィロ村よりは栄えている印象だが、まあどっこいどっこいか。
「お、あれはなんだ?」
「あれは海モモウだ」
「桃なのかブドウなのか、はっきりしてくれ!」
「食べてみるか。うまいぞ」
「・・・じゃあ少しだけ」
見た目的には、小ぶりの桃のような果実?がたくさんついている。まさしく、『海モモウ』の名に相応しい見た目だ。
「ん!・・・うまいな!」
「だろ」
「味は桃とリンゴの中間?てきな」
「私も食べたいー!」
「ほらよ」
俺たちは海モモウを食べながら進んでいった。
村はずれまで来て、家もまばらになってきた頃だ。
「あそこだ」
「久しぶりだねー!」
ドアを叩いて呼び掛ける。
「おおーい!グレイーー!!」
「遊びに来たよー!あ、違った!」
「ふっ。こんな時だというのに、君たちはいつも通りだね」
あ、なんとなく二人の言いたいことが伝わってきてしまう。
中から出てきたのは、長身で細身の男だ。やはり俺と同じくらいの年だろうか?顔立ちも整っている、青い髪の青年だ。
「はじめまして。俺はキョウタロウだ」
「僕はグレイ。二人と一緒に来たということは、君はフィロ村に滞在していたのかい?」
「キョウタロウは、一昨日異世界から転移させられてきたんだ」
「それをお兄ちゃんがナイスキャッチーして、一緒に来たんだ!」
「っ・・・異世界からやってきた?しかも一昨日?赤い月が出た次の日か」
「そういうことらしい。俺も、まだ事情がはっきりと分かっていないんだ」
「転移させられた、ということは他の誰かの意志が働いているということだね?」
「ああ、俺を転移させたやつがいる。詳しく話をしようか」
「是非。だけど、急いでもいるんじゃないかい?赤い月が出てすぐここへやってきたんだ。目的は僕との合流、及び情報収集、で合っているかい?」
「そうだ。とんでもないことになっちまったな。できれば俺たちはお前と行動を共にし、終末に対抗する戦力を整えたいと思っている。どうだ、グレイ?」
「ああ、もちろん協力させてくれ。赤い月が出てからどれくらいの猶予が残されているのか分からないが、できることはしたい」
「よし。じゃあ決まりだな」
「今から馬車を用意して、昼前には出られるだろう。それで、どこへ向かう?」
「王都に行って、赤い月と終末の魔神の情報を集めたい。それに王都には強いやつもいるだろう。戦力になるやつもいるかもしれない」
「分かった。なら、まずはスラニーベルグへ向かうといいだろう。あそこならそこそこ大きな町だし、人も情報も集まりやすい。王都に行くならスラニーベルグを経由するのがいいだろう」
「ああ、それがいいと思いマッスル。では各々準備をして昼前には出発しよう。馬車は俺に任せてくれ。フィーネ、キョウタロウの装備を整えてやってくれ」
「はーい!」
「たまにマッスルが混ざるのは何、発作かなんかなの?」
俺たちは武器屋に向かった。しかし、
「ここは?」
「武器屋です!」
「どうみても違うよな!野菜売ってんじゃねーか!」
「てへぺろ!あ、こっちだった!」
フィーネが走っていく。どうしよう、不安しかない。
「ここだーー!たのもー!」
「あ?」
「失礼しましたー!」
ボカッ
「痛ーい!何するのよ!」
「おま!俺たちの目的地は武器屋だ!今のは酒場だろーが!」
「ちょっと間違えちゃっただけよ!似てるし!」
「似てねー」
分かった。フィーネについてきたのが間違いだ。フィーネに道案内は無理だ!
「あ!こっちこっち!」
「いやもう、ちょっと、いやー!」
武器屋に着いたのは一時間後だった。
「・・・はあ、はあ。一番いいのを頼む」
「スラニーベルグで大きな武器屋があるし、そこで強化したらいいから!とりあえずは、その服をなんとかしましょ!」
さらっとスルーされた。
「・・・だな」
そう、なんといっても俺の服は来た時のままだ。シャツにチノパン・・・。まあ、戦うには不向きだろう。
「この人に最低限の装備をお願いします!」
「はっはっは。いらっしゃい。確かに、変わった服だが、戦闘には向いてなさそうだ。どうだい、服屋にながしてやるから、その服置いてくなら多少安くしてやるよ」
「よろしく頼む」
「よし。それなら、、、これなんかどうだ。一般的だが、動きやすい服だ。それから、武器は何を使えるんだ?」
「いや、今のところ何も使えないが・・・。ただ、俺の魔法が重要らしい。すぐ発動できる魔法触媒とかあるか?」
「杖の類か。それならこれだ。特別な早さってほどじゃないが、多少詠唱速度上昇効果がある」
「じゃあそれを」
「あと、これはおまけだ。何もないよりはいいだろう」
短剣も寄越してきた。いい店主だ。
「どうだ?」
「キョウタロウ、いつまの格好もいいけど、その服も似合うね!」
「・・・。うん。手に馴染む。服も動きやすいな。ありがとう」
「ああ、いいんだ。。。終末に対抗するんだろ?気を付けてな」
「ああ」
「おじさん、ありがとうー!」
俺たちは店を後にした。
「さて、と。忘れ物はないか?」
俺、フィーネ、ケネス、そしてグレイが集まった。
「ええ。あなたが忘れていなければ、誰も忘れていないでしょうね」
「ああ!?」
「まあまあ」
なんとなくグレイが鬱陶しいという意味が分かってきたかも。
「じゃあ、出発だ!」
「しゅっぱーつ!」
「フィーネ、そっちはフィロ村だ!!」
まったく、この子はまったく!可愛いなあ、おい!
さあ、スラニーベルグへ!!
ありがとうございました!




