友達
どうぞ、ごゆっくり。
部屋の中はいやな静けさだった。
「嘘だろ・・・?ケネスが、終末の魔人・・・?」
部屋には俺とエアラインの二人だけだ。夕食の後、話があるということで・・・。
「ええ。そうなるわ」
「それはつまり、ケネスを倒さなきゃならなかった、のか。過去の、いや未来の?俺たちは」
「そう。そして、私たちにはそれができなかった。迷いがあった。全力で戦っても勝てない強い相手に、その状態では・・・」
「話にならないわけだな。それで態勢を整えるためにも、時間遡行をしたと」
「その通りよ。私たちはセオリー通り、なるべく短い時間遡行で何とかしようとした。でも、何度戻ってもケネスとの戦いは避けられず、、、!」
「そして、最後に大きな時間遡行をしたのが、今に至るわけだな?」
「どうしようもなくなった私たちは、大きな賭けに出ることにしたの。ケネスが魔人になるのをどうにか止められないか、と。私たちの記憶がはっきりしている範囲では何度チャレンジしてもダメだった。そこで、私たちの出会った頃から再スタートして、なんとかできないかと考えたの」
「それでこんなところからやり直しているのか。本当に、エアラインが記憶を保持してくれていなければ成り立たない話だな」
「・・・。ええ、そうね」
「ん?どうかしたか」
「いえ、何でもないないわ。そういうわけで、私たちは何とかしてケネスの魔人化を止めなければならない。もし、今度も止められないようならば・・・その時はケネスを殺す。その覚悟を全員が持たなければならないわ」
・・・っ!魔人化を止める。止められなければ、殺す・・・。そうしなければ、ケネスは世界を滅ぼす。俺たちは選択しなければならない。
「魔人化を止めるって、具体的な方策はあるのか?」
「正直言って、ないわ。分かっていれば、すでにやっている。ただ、私は考える時間だけはあったから、可能性としては考えてることはあるわ」
「教えてくれ」
「1つは、問答無用である時が来たら、魔神が人の誰かに乗り移り、魔人ができるという可能性。ケネスは魔人になってから人格も変わっていたわ。この可能性の場合、ケネスが魔人になったのはたまたまであり、例えばケネスを殺したとしても、他の人が魔人になるだけ。もう1つの可能性は、何か魔人になる素質のようなものを秘めた人が魔神の力を得て魔人になるという可能性よ。・・・おそらく、後者ではないかと考えているわ」
「その根拠はなんだ?」
「ケネスが人一倍正義感が強く、みんなを助けたいと願っているからよ」
「それのどこが根拠なんだ?逆じゃないのか?」
「いいえ。ケネスは強い正義感をもっている。でも正義とは、立場が変われば悪になるの。私からみた正義は相手から見た悪であり、相手の正義は私からした悪なのよ」
「それは分かるけど・・・」
「ケネスは本当に、多くの人の幸せを願っている。でもその分、不幸が訪れたところを見て胸を痛め続けてきた。私は、おそらくそこに魔と共感してしまうものがあったのだと思っているわ。強い正義の心に、彼のまた優しい心も消耗し続けなければならなかった」
「・・・もし、そうだとして、俺たちにやれることってのは?」
「ケネスの心を、真意を知り、そしてその正義の心が優しさを挫くのではなく、魔のちからにも流されない真の強さを身につけてもらうようにすることよ」
言うのは簡単だが・・・。
「赤い月ってのはどうなんだ。これが出たら、もう魔人は生まれるって話じゃなかったか」
「ええ。そういう話よ」
「じゃあもう・・・」
「それでも!私たちは彼を助けると決めた!そのために世界を何度も何度も!やり直した!それでもどうにもならなくて、こんなに巻き戻すことにした!・・・それに、これに一番こだわって絶対に譲らなかったのは、他でもない、あなたよ」
「俺が・・・?」
信じられなかった。だって、俺が?誰かのことをそれほどに考えていた?
「それはさすがにないだろう。いくら一年間一緒にいたって、そんなに俺が誰かに執着するはずない」
「っ!そんなことない。あなたは」
「俺のことは俺が一番分かってる。俺は友達のために、なんて本当に思って行動しないやつだろくに友達だっていなかったしな」
「そんなこと、ないのに・・・!」
「エアライン。君は確かに超可愛いが、これだけは譲れないよ。ありがとう。今日はもう寝るから」
「・・・おやすみなさい」
エアラインが下を向いて部屋をでていく。悪いことをしただろうか。しかし、自分のことはよく分かっている。1年旅をしたからといって、そう変わるものでもない。
「・・・寝よう」
今日も疲れた。すぐに眠りに落ちた。
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部屋を出て、そのまま宿の外に出た。星が綺麗だった。
「ごめんなさい。。。アラン」
赤い月がなければいいのに。
ありがとうございました!




