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ちょっと転移先で終末の魔人を助けてくるか  作者: 榊 ユージン
1章 終末の魔人
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終末の魔人

終末の魔人とはなんなのか。。。


どうぞ、ごゆっくり。

「ふふ。そんなにいっぱい聞かれても、一度に答えられないわ。でも、順番に話しましょう」

俺たちはソンニ村へ向かって歩く道すがら、エアラインから説明を聞いていた。

「まずはそうね。私たちの最後に立てた、作戦について話しましょうか」

「最後に立てた、作戦・・・?」

「ええ。薄々気付いているかもしれないけれど、私たちははじめましてじゃないわ」

「はじめまして、だと思うがな。フィーネは?」

「はじめまして!」

「いいえ。私たちはすでに会っているわ。それどころか、旅を共にした」

「・・・まさか。」

「ええ、そのまさかよ。私たちは時空間転移をしたの。その影響であなたたちは起きたことを忘れてしまっている。いえ、なかったことになっているのだから、当然のことなのだけれどね」

「なるほど・・・。元々、俺たちはこうして旅をして、出会って、そして赤い月に対抗して、そして・・・時空間魔法を使わないとならなくなった。転移する前にあったことを教えてくれないか」

「ええ。あなたたちは今回同様、赤い月が出てすぐに隣村に向かったわ。そしてグレイと合流し、赤い月についてさらに情報を求めて王都に向かった。普段の王都なら私と出会うことはなかったでしょうが、今は王都も赤い月が出て混乱している。魔物も強くなり、王都軍として私も出兵していたわ。そんな中、私たちは出会い、旅を共にするになった。・・・終末の魔神を止めるために」

「終末の魔神・・・!」

「やっぱりか」

「それで、どうなったの!?」

「終末の魔神は赤い月が出てからしばらくの後に出現すると言われているわ。そこで私たちは戦力を強化しながら情報を集めて、魔神の出現に備えたわ」

「まあ、どこで出現するか分からない以上、妥当だろうな。あとは、魔力の濃い土地を探索するとかくらいしか思い付かないな」

「ええ、そうね。私たちもそう考えて行動していたわ。。。そして、ついに魔神と衝突することになった。でも、魔神の力は強大で、私たちはキョウタロウの時間遡行に頼るしかなくなったわ」

「そして、今に至る、か。でも・・・」

「こんなに時間を戻らなきゃいけなかったの!?私たちがそのことを完璧に忘れてしまうほどに??

「ええ。ギリギリの状況下での転移だったから、制御も難しかったのよ」

「その転移は、やっぱり俺が?」

「あなたよ。私は空間転移は使えるけど、時間遡行ができるのはあなただけよ」

「そうなのか?」

「ええ。私は器用貧乏だから」

「空間転移だって、普通は使えませんよ!エアラインさんも超上位の術者です」

「呼び捨てでいいわよ、フィーネ」

少しだけ、寂しそうな笑顔で。その笑顔には理由があったのだ。過去に出会って、そして。。。仲間だった。

「ええと、エアライン、、、ちゃん」

「ふふ、とりあえずそれでいいわ。話を続けるわね。魔神に勝つため、私たちは時間遡行をした。そして、私はその時にちょっとした工夫をして、なんとか記憶を保持することができた」

「それは大手がらだな。せっかく戻っても誰も覚えてなかったら意味がないしな。それにしても俺のミスでこんなに巻き戻しちまって、、、申し訳ない!」

「・・・。」

「大体話が見えてきたな!要は、終末の魔神を倒すために、もう一度、今度は対策を立てながら強化していけばいいってことだな!」

「ええ、そうなるわね」

「わーい!見通しも持てて、なんだか楽しくなってきたー!」

「そうだな。じゃあまあ、とりあえずは予定通り、そのグレイってやつと合流すればいいのか?」

「そういうことになるな」

「あ!見えてきたよ!ソンニ村!!」

「今日はもう日が暮れる。宿に泊まって、グレイのとこを尋ねるのは明日にしようか」

「だな」

話しに夢中で気付かなかったが、森を抜け、林を進んできたようだ。正面にソンニ村が見えてきた。あとは、

「王都に行くなら、流石に徒歩はきついな。グレイと合流してから、馬を借りられないか相談してみよう」

「わーい!馬車好きー!」

フィーネがはしゃいでいる。馬が好きらしい。馬車なら方向を間違えないからかもしれないな。

宿についてから、休憩をしてみんなで晩ご飯を食べることにした。宿屋の一階が飯屋も兼ねている。

「みんなアイスバウンド討伐、お疲れ!」

「お疲れー!」

なんとなく音頭をとってくれるケネス。優しくリーダーシップもあって、でもそれを鼻にかけない。ホントにいいやつなのだ。しかも、あの風の剣撃・・・。

「全く、この筋肉野郎!」

「お前・・・分かってるじゃねえか!そうだ、俺の筋肉は最高だー!」

「ああ、お前の筋肉は最高だ!」

「筋肉万歳!!」

「マッスルマッスル!!」

そんなやり取りを続けていると、

「ホント、あなたたちはいつもそうで、少しだけほっとするわ。こんなに心がほっとしたのなんて、いつ以来かしら」

「エアラインちゃんはどのくらい振りに私たちに会ったの?」

「そうね。もう5年は経つわね」

「5年!ええと、つまり時間遡行で5年巻き戻したってこと?」

「正確には6年近く遡行したのじゃないかしら。出会ってから1年くらい旅をしてたはずだから」

「6年!それまで1人で大変だったでしょ?」

「そうでもないわよ。やることはたくさんあったから。でも、そうね。夜になると不安だった。ホントにこの最後の時間遡行の先に、未来をつなげられるのかが・・・。」

「エアラインちゃん・・・。」

随分と、重いものを背負わせてきてしまったんだな。そりゃそうだ、自分だけ記憶を残して過去にやってきたんだ。周りは誰もそのことを覚えてない。時間遡行をした俺は当然、全員が記憶を失くしている。

「そう言えば、いつもは時空間転移で俺が忘れた記憶は、みんなが教えてくれていたのか?」

「ええ、そうよ。あなたが魔法を使った後は何か記憶が抜けている。けど、何の記憶が抜けているかは分からない。だから、私たちはなるべく会話の中でこれまでのことを話して、記憶の補填をしてきたの」

「なるほどマッスル!じゃあ今後もそうしよう」

こいつ語尾が・・・。まあいいや。

「ただ、それは知識として分かるというだけで、体験した記憶が、思いがそのまま蘇ることはないわ。忘れてたしまったものは、完璧には取り戻せない」

「・・・そりゃそうだよな。なら、やっぱりこの魔法はいざって時にとっておくべきなんだろうな」

「ええ。ただ、あなたが死んでしまえばもう時空間転移は使えないわ。そして逆に、あなたが死なない限り、、、」

「俺たちが全滅することはない、か」

「その通りよ」

俺の責任重大だな!!

「なるべく節約しなきゃいけないけど、使うべき時には絶対使わないといけない、ってことか」

「責任渋滞だね!」

「うん、重大な!!」

「ハハハ!」

「・・・。」

夕食を終えた俺たちは、部屋に戻って各自明日に備えることにした。

(トントントン)

「はーい?」

「エアラインよ。少し話があるの」

「ドキドキ」

「そういうのは今いいから早く」

「はーーーい」

(ガチャ)

昼間のローブ姿ではない、シンプルなシャツにスカートのような服だ。まあ、当然可愛い。

「当然可愛い」

「声に出てるわよ。まったく。。。あなたには話しておいた方がいいと思って。ホントはフィーネにも話したいのだけど・・・。後であなたから話しておいてちょうだい」

「つまり、ケネスには話せないことってわけ?」

「・・・ええ、そういうことよ」

「なんだ、俺らは協力していかなきゃいけないんだから、隠し事は少ない方がいいと思うぞ」

「私もそう思うわ。ただ、これだけはケネスに話せないことなの。なぜなら、この旅の根幹に関わることだからよ」

旅の根幹に関わる・・・?

「一体なんだ??」

「うん・・・。私たちは終末の魔神を倒すために旅をして、そして終末の魔神を倒せずに時間遡行をしたわ」

「そういう話だったな」

「ええ。。。私たちは終末の魔神に会ったわ。いえ正確には、終末の魔神ではなく。魔人だったの。終末の魔人とは、人の間に生まれる魔だったのよ」

嫌な感じだ。

「それはつまり・・・」

「終末の魔人は、ケネスだったのよ」

今度こそ、俺はなにも言えなかった。

読んでくれてありがとうございました。

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