時空間転移
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目覚めると、いつもの白い天井。ではなく、見慣れない木目の天井。
「ああそうだ。俺は美少女に転移魔法で飛ばされて歪みを抜けたと思ったら空から真っ逆さまで死ぬ寸前にケネスに助けられたんだ」
全く意味がわからんが、そういうことだった。
「おはようございます!キョウタロウさん!」
「おはよう、フィーネ」
部屋に入ってきたのはフィーネだ。淡いブルーの服が可愛らしい。
「今日は隣村に行きますから、朝ご飯は包んですぐに出掛けましょう」
「ああ、分かった。すぐ行く」
隣村は朝早く出て、2日くらいで着くそうだ。赤い月が出ている現状では、すぐにでも隣村と連絡をとりたいのだろう。俺たちは支度をして、外に出た。
村長のカマネが見送りに来てくれた。
「慌ただしいことになってしまって申し訳ないですが、どうぞ、孫たちをよろしくお願いします」
「ああ、フィーネのことは全て!俺に任せてくれ」
「・・・。ケネス、頼みますよ」
「ああ、もちろんだ。フィーネは誰にもやらねえ!」
「おばあちゃん、行ってきます!」
慌ただしく別れを済ませ、俺たちは旅立った。フィロ村は海が見える村だが、隣村はここより少し内陸にあるらしい。
「さあ、じゃあ行くか。あの馬鹿のいるソンニ村に」
「しゅっぱーつ!」
「疲れた、もう無理だ。少し休んでいこう、すこしだけ、な!」
「お前、体力ないなー」
「キョウタロウだらしなーい!」
散々な言われようだ!しょうがないじゃないか!引きこもり気味大学生に、こんな旅は荷が重いんだよ!なんだよ俺が悪いのかよ、俺が・・・、俺が悪いのか!?
「しょうがない、あそこの木陰で少し休もう」
しかし、疲れてはいるが、とても清々しい気持ちだ。何せ、景色がいい!コンクリートジャングルで育った俺は、こんな自然の中を歩くことはまずなかった。
「気持ちいいなあ」
「気を抜きすぎるなよ、この辺りにはあまりいないが、魔物はどこに出るか分からないんだ」
「え!魔人意外に魔物もいるのかよ。一体どうなってんだこの世界」
まあ、異世界らしいと言えば、らしいのか。
「っ、言ってるそばからほら!来てますよ!」
「!」
フィーネの指す方を見ると、犬のような、しかし明らかにもっと獰猛そうで大きな生き物がいた。
「バウムドッグだ、お前は後ろにいろ」
ケネスが前に出た。
「お前らにはこれで十分だ」
言って、ケネスは軽やかに走りだし、バウムドッグに近づくと、剣を一振り、二振り、、、一瞬にして全員倒してしまった。
「すごいな!お前強かったんだなー!」
「俺の筋肉をなめるなよ」
確かに、この筋肉から導き出される剣技はそうとうなものだった。
「それにしても、魔物がこの辺りにいるなんて。いつもなら、もっと森の方に行かないと大体出てこないんだけどね」
「赤い月の影響だろうな。活性化してやがるんだろ。気を付けて行くぞ」
休憩を終え、再び歩き出す。日が落ちる直前まで歩いた。
「今日はこの辺りで休もう。明日朝一から森に入る。順当に行けば、明日の夕方には隣村に着くはずだ」
質素な食事を済ませ、早めに休むことにした。
「そう言えば、この辺りには金髪碧眼の美少女っていないか?俺を転移させたのが、その子なんだが、多分この世界に来てると思うんだけど」
「金髪碧眼?そんなやつ、ここいらの村にはいねえな。いるとしたら、フィーラデルフィンの王都だろう」
「貴族か王族じゃないかな!」
そういう二人は、茶髪にダークブラウンの瞳だ。
「貴族か王族・・・。あいつに会えば、何故俺を転移させたかも聞けるんだがな」
地道に進んでいくしかなさそうだ。王都に行く機会があれば探してみよう。
「さあ、今日はもう休もう。俺が見張りをする」
ケネスがそう言ってくれるが甘えてばかりもいられない。
「途中で代わる。声かけてくれ」
「お、そうか。じゃあ、たのむ」
次の日も朝早くから歩き出した。もう大概体力のない俺は疲れて来たが、休憩休憩ばかり言ってるわけにもいかない。
「見えてきたぞ、あの森を抜ければソンニ村だ」
目の前に広がるのは、大きな森だ。森だが・・・
「いつもと様子が違うな」
森には霧がかかり、中の様子が伺えず、、、あまりいい雰囲気ではない。
「魔力が溢れてる。こんなに強い魔力、この森で感じたことないのに」
「これも赤い月の影響、か」
「しかし、ここを抜けなければ隣村には行けない。引き返しても状況はこれ以上良くならない。進むしかない」
「そういうこと!行きましょ!」
「待てフィーネ!」
「何!?敵!?」
「いや。・・・そっちは海岸だ」
「・・・。し、知ってたよ、当然!」
天然属性につきものの、方向音痴か。流石、可愛いもんな、フィーネ。
そして俺たちは森に入っていく。
「いつもこんなに寒いのか」
「いや、そんなことはない。これは異常だ」
森の外と随分、気温差がある。日が射さないからというレベルだろうか?さらに進むと、
「見て、これ!」
「っ!これは・・・!」
木々が抉れているのだ。なんの跡だ?・・・爪?
(ヒュン)
「っ危ない!」
「っ!」
フィーネの声に反応して、何とか避けられた・・・!
「なんだありゃ・・・!」
それは、木ぐらいの高さがあろうかという、巨大な狼のような魔物だった。
「あれはアイスバウンド!?こんな上位の魔物までいるの!?」
「逃げるぞ!」
全員で走り出す。しかし、相手は巨大な狼だ。逃げ切れるはずもなく。
「俺が引き付ける。お前ら、行け!」
「お兄ちゃん、流石にあれは無理よ!あんなのと正面から戦ったら」
「いいから、行け!キョウタロウ!」
ケネスと目が合う。本気の目だ。
「っ行くぞ!」
「待って、待って!」
フィーネを無理やり立たせ、走らせる。振り返らない!
「来いよ、化け犬!」
アイスバウンドはケネスに襲いかかる。大丈夫だ、ケネスは強い
「っ」
あんなに強いケネスが一瞬で吹き飛ばされた・・・っ!
「っお兄ちゃん!!」
フィーネが叫び止まってしまう。
「スローテンポ!」
「やめろ!フィーネ!」
静止を振り切り、フィーネが魔法を放つ。しかし、多少動きが遅くなったようだが、あまり効いているようには見えない。そして、
「っいいやああああーーー!」
「・・・うそだろ」
フィーネの体も噛みつかれ、一瞬で血が・・・っ!
「やめろーー!!!!」
俺は叫んだ。しかし、叫んで何が変わるわけでもなく。けれど俺は戦い方も知らない。魔法もない。
「・・・何もできないのかっ!」
そうこうしてる間にもフィーネは倒れ、動かなくなる。ケネスも気を失っているのか、動く気配がない。
「なんだよなんだよ、なんなんだよ・・・!」
さっきまで一緒にいた仲間がやられていく。なにの何もできない。体力も限界。吹っ切れた俺は、アイスバウンドに向かっていく。何もできなくても、逃げることはできない!!が、そこへ
(バーン)
「ヴヴーー!」
「なんだ?」
突然現れた炎に、アイスバウンドが怯んだ。
「もう、無謀と勇敢は違うわよ」
「っお前・・・!」
「助けに来たわ」
あの少女が立っていた。ローブを翻し、近づいてくる。
「っ。遅いよ。遅い!!二人が、二人が。。!」
「遅くない」
「っ」
何を言ってるんだ。この期に及んで遅くないなんて。。流石にもう手遅れだろう。それとも、
「蘇生魔法とかあるのか?」
「ないわよ」
ならダメだ。
「もういい」
「諦めてしまうの?こんなところで?」
「こんなところでって!!」
「とひあえず、一旦引くわ」
そう言って何か魔法を唱えると、爆発が起こった。
「こっちよ!」
「待て!二人が・・・!」
「二人も助かるから」
彼女に手を引かれ、その場を去る。動かないケネスとフィーネを置いて。
森から出たところで少女は止まった。
「危なかったわね。でももう大丈夫」
「何が大丈夫なものか。ケネスとフィーネは・・・!!」
「助けるわ。あなたが生きてる限り、二人は絶対に助けられる」
「どういうことだ!?」
「端的に説明するわね。あなたは魔法を使える。・・・時間遡行、そして空間転移。それがあなたの魔法よ」
「っ?なんだって?時間遡行?空間転移?そんな力、俺は持って」
「持ってるわ。ずっと前から。あなたはその力のことを忘れているだけよ」
「忘れている・・・?この世界に来たばかりだから力が使えないんじゃないのか?それに、なんでそんなこと知ってるんだ?君はそもそも、誰なんだ!?何故俺を転移させたんだ!」
「いろいろ聞きたい気持ちは分かるけど、これが解決してからにしましょう。今は二人の救出が先」
「力に関わることだけ、かいつまんで話すわ。あなたの力は今も使えるはずだけど、おそらく使い方を忘れているのよ。何故忘れているのかというと、それこそがこの力の代償だからよ」
「代償・・・?」
「そう。小さな力には小さな代償が、そして大きな力には大きな代償が必要なの。普通の戦闘魔法なら、大抵は魔力を代償として発動させることができるわ。だけど、あなたの魔法、時空間転移は、とても強力な力」
「強力な力には、大きな代償が必要」
「そうよ。代償は2つ。1つは膨大な魔力。転移する時空間が離れるほど、魔力も必要になる。そしてもう1つは、、、記憶よ。転移する度に、術者の記憶を奪う。それが時空間魔法の代償よ」
「記憶を奪う。。。それで、俺は魔法の使い方を忘れてるのか」
「そう。それだけではないのだけどね。転移が大きくなるほど、奪われる記憶も多くなるわ」
「なるほど。だが分かった。時間遡行をすれば、あの二人を助けることもできるってことだな」
「ええ、そうよ。詳しい説明は後でするわ。まずは、二人を助けてきて」
「分かった。だが、どうやって魔法を使えばいい?使えることは分かったが、やはり使い方はわからないぞ!」
「落ち着いて。私もあなたほどではないけど空間転移魔法が使えるわ。私があなたの魔力に働きかけて、一緒に術を構成する。そうすれば、あなたも使い方を思い出せるはず」
「なるほど。でも君ができるなら、君、えーと、今さらだけど名前は?」
「ふふ。エアラインよ」
「エアライン。君が転移すればいいんじゃないか?」
「あなたがした方がいい理由は2つ。1つはあなたに魔法の使い方を思い出してもらいたいから。そしてもう1つは、私は空間転移はできても、時間遡行はできないのよ。だから、二人を助けるにはあなたの時空間魔法が必要なの」
「・・・分かった。なら、早速頼む」
エアラインが手を伸ばしてくる。
「手を握って」
その手を掴む。普段ならドキドキものだが、今はあまりに余裕がない。2人の手を中心に周りが光始めた。
「あの時の光・・・」
「体の中の魔力の流れに集中して!血の流れを感じるように、魔力も流れているの。それを中心に集めるイメージよ!」
「中心に、集める・・・!」
「そう、そして充分に集まったら、魔法が具現化するイメージを持つの。今回は二、三時間遡行すればいいはずよ。具体的に場所と時間をイメージして」
「イメージを、具体的に・・・!!」
「そして、解き放つ!!」
「!!!」
光が強くて、何も見えない。ただエアラインが、笑っているように見えただけだ。
楽しくなってきました。




