ケネスとフィーネと俺と村
続きです!
「あそこが俺の村だ」
しばらくすると、男の村が見えてきた。やはりというか、少なくとも現代日本の村には見えない。大体、学校帰りに謎の発光系美少女の光でこれまた謎の歪みトンネルを抜けてきたこの場所は、一体どんな場所なのか。
「これはひょっとすると・・・別世界か?なんか、発光美少女もユーシャサマって言ってた」
そうだ。
「だから空も飛べると」
そう考えると辻褄が合う。
「おい、何ブツブツ言ってんだ?・・・ああ、俺の筋肉か?これは地なんだ」
「ちげーよ!それに筋肉を髪の毛が茶髪でああ、地なんだ、みたいに言うんじゃねーよ」
「照れんなよ」
「照れてねー!」
やばい、ちょっと変なやつだぞ。
村に着いたようだ。
「そういえば、お前名前は?」
「恭太郎。橘恭太郎だ」
「キョウタロウ。変わった名前だな。俺は、ケネス・ガウディだ。ケネスと呼んでくれ。よろしくな」
手を差し出してくる。
「・・・ああ、まあよろしくな、ケネス」
村にはちらほらと人がいて、こちらを注目してる人も多い。その中心に降り立つ。
「帰りましたか、ケネス。」
とっても村長っぽい人が話しかけてきた。村長Aと名付けよう。
「ああ。亀裂は生じてすぐに消えた。そしてそこから人が落ちてきた。キョウタロウだ」
「亀裂から人が・・・?」
「こんにちは村長A。キョウタロウです」
「はじめまして。この村の長をやっております、カマネと申します・・・ちなみに村長は1人です。キョウタロウ様は、どちらからいらっしゃったので?」
「日本です、村長A」
「だから村長は・・・ごほん。ニホン、聞いたことのない場所ですね」
「・・・。」
やっぱり、異世界っぽい。
「あなたはその亀裂からやってきたのですか?」
「そうみたいです。発光少女の光で飛ばされたんだ」
「光で、ですか。おそらく転移魔法の一種でしょう」
「そうなのか・・・」
なんだか不安になってきた。なんなんだ、あの少女は。ただの俺のこと大好き美少女ではないのか・・・!?いや、これもツンデレなのかもしれない。
「立ち話もなんです。うちにてお話をお聞かせ願えませんか。大したもてなしもできませんが」
「そちらには美少女はいますか?」
「・・・、こ、こちらです。」
あ。無視された。なんだいなんだい、美少女がいるかどうか教えてくれたっていいじゃないかい。村長A宅は歩いてすぐの場所だった。
「お兄ちゃん、おばあちゃん、お帰りなさい!・・・そちらの方は?」
「亀裂から落っこちてきた、キョウタロウだ。こちら、妹のフィーネ」
「キョウタロウ、さん・・・はじめまして!」
「はじめまして、フィーネさん。わたくし、キョウタロウと申します。以後、お見知りおきを。」
「フィーネでいいよ!・・・キョウタロウさんは、いつもそんな話し方なの?」
「いや。というか多分こいつ馬鹿なんだ」
俺より少し年下だろうか。愛嬌があって、とても可愛らしい。いいじゃん、異世界!!
「よろしくお願いします、プー太郎さん!」
「プー太郎じゃねえ!!」
ちょっとの違いで大違いだ!案外そそっかしいのな!まあ、可愛いから許すけどな!
自己紹介も終わった俺たちは、中に入っていく。中は小綺麗になっていて、客間なのだろう、机と椅子が用意されている。
「いやー、それにしても、ケネスがいなかったら、確実に死んでたよ。ありがとう」
「礼なら妹に言ってくれ。フィーネが歪みを感知して知らせたから、俺は様子を見に行って、たまたまキョウタロウを拾ったけだ」
なに・・・!?
「私は感知魔法が得意だから!」
「それで、俺の愛を感知してくれたのか」
「ちょっと、何言ってるのか分からないわ」
「・・・キョウタロウの世界には魔法はないのか」
「ああ。魔法はない」
「不便だな」
「そうでもない。その分、科学技術が発達してるから」
「砂漠秘術?」
「全然違う!まあ、いいや、可愛いから。そう言えば、この世界では俺も魔法を使えるのかな?」
「おそらくは」
特にこれまでと変わったような感覚もないが。
「魔力が沸き上がってくる、とかもよくわからんしな」
「まずは、自分の内にある魔力を感じることが必要ね!」
異世界に来たからって、すぐに魔法が使えるわけでもないらしい。不便すぎる!大体、
「俺はなんで異世界に飛ばされたんだ?その、転移魔法?で」
「その理由は、明白じゃないか?」
ケネスが教えてくれる。
「この世界は、もうじき終わると言われてるんだ」
・・・え?
「それって、どういう・・・?」
「終末の予言です」
カマネが続けてくれる。
「この世界には、終末の予言というものが古くからあります。それこそが、おそらくあなたをわざわざ別世界から転移させてきた理由ではないかと」
「その、終末の予言ってのは一体なんなんだ」
「『赤い月が太陽をお掃除する時、終末の魔神が世界をホロホロにする。』そう、言い伝えられているわ」
「うん。それじゃあ終末の魔神ていうか、週末の家事手伝いだから。『赤い月が太陽を覆う時、週末の魔神が世界を滅ぼす』な」
やばい、この子可愛いけど、かなりきてるな。
「ごほん。そうでした。そして今、この世界は赤い月で覆われているの。昨日から」
「・・・っ。昨日から?」
「そうだ。昨日からだ。だから、村中、国中大混乱だし、俺たちも周囲を警戒していた。そこにあの歪みができて、お前が出てきた」
「・・・なんで・・・」
「なんで!そんなタイミングで転移するんじゃーーー!!」
ビクッ。みんな唖然としている。
「だってそうだろ!?こんな美少女のいる世界!もっとエンジョイして、ワイキキしたかったヨ!!俺の春はこれからなんだ!!・・・なのに。なのに!」
「・・・もう終わる、なんて」
・・・ん?みんながどん引いている。
「ええと!だから、きっとあなたは終末に対抗する力を持ってるんじゃないかって、私は密かに期待しています!」
「いや、そんな、俺は何も力なんて・・・。」
「あるいは、終末の禍いをもたらす存在か」
ケネスが目を細める。え??え???
「と思ったが、魔力の流れが分かってないってのも本当のようだ。腕っぷしも強そうには見えない。まあ、なんだ。。間違って来ちまったのか?」
「おおおおい!!俺だってそんな気分だけど、人から言われると流石に傷つくんだぞ!!!」
「ハハハ!」
このやろう。
「とりあえず、この世界の置かれてる状況は分かった。なら俺のすることも決まった」
「なんだ?」
「美少女のいる世界を守る」
「・・・なんか納得いかねえな」
「でも良かった!それじゃあ、、、。私、もうお腹ペコペコ~!ご飯にしましょ!」
疲れている俺に気を遣ってくれたのだろう。可愛さに加えてその優しさ。素敵女子だ。
「そうですな、では準備を致しますから、キョウタロウ様はゆっくりなさっていてください」
俺はその言葉に甘えさせてもらい、部屋で休むことにする。今日はあまりに疲れた。
「夕食の支度ができたら、呼びに行くから!」
部屋に着くなり、すぐ眠くなった。
夕飯は、質素だが美味しい料理だった。見たことない食材も多く、はじめはちょっとビビっていたが、意外と美味しくて箸が進む。
「明日からどうするか」
「良ければ、一緒に隣の村に向かってみないか?」
ケネスが提案してくる。
「実はお前が来なくても、もともとそうするつもりでなあ。さっき言っただろう?昨日から赤い月が出てるって」
「ああ」
「終末の予言に従えば、世界はもうじき終わるんだろう。だが、ただ黙ってやられるつもりはねえ。できることは全てしたいんだ。あの日の俺の筋肉に誓って」
ケネスの瞳は真剣だ。筋肉の話がなければうるっときてるところだ。
「そこで、だ。まずは何が起こるかわからんからな、戦力を強化したいんだ。隣の村に知り合いの槍使いがいてな。こいつは馬鹿だが、槍と魔法の腕は確かだ。そいつと一緒に行動しようと思っている」
「お前に馬鹿って言われるってどんなやつなん」
「私も行くわよ。感知魔法は、こういう時には絶対に役に立つんだから!」
「なら俺も行こう。」
「・・・。フィーネはお前にはやらねーぞ!」
「なんだとこの石頭兄貴!」
まあ、もとの世界に帰るにしても、発光美少女を探さないとな!
「お前たちについていって、強い奴を探すのが最短だな」
他に手もなさそうだ。
「よろしく」
「こちらこそ、よろしくな!」
「わーい!よろしくキョウタロウ!」
二人が握手を求めてきた。俺はその手をとり、なんだか温かい気持ちになった。人と握手をしたのが久しぶり過ぎて、不思議な気持ちになる。それとも美少女の手が柔らかすぎて、幸せなのだろうか。
しかし、今日はもう疲れた。早く寝るとしよう。そのまま部屋にもどり、ベッドに横になった。
「異世界、か。」
なかなか落ち着いて考えられなかったが、改めて実感が沸いてくる。
「でも、フィーネやケネスに出会えて、それにあの発光美少女にも。案外悪くないかもしれないな」
そんなことをニヤニヤ考えながら、眠りについた。空には、月が真っ赤に輝いていた。
続く




