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終わりのノベル  作者: 皐槻 壱和
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この世界に花束を



 

 この世界は救われた。

 ある少年と少女の多大なる貢献によって。



 大地は荒れ果て、煙が立ち込めていた。

 その中心に少女を抱き抱える少年が1人。

 10代後半だろうか、まだあどけなさが残る顔つきを覗かせている。

彼の黒い髪の毛は土を被り、青を基調としたロングコートは汚なく破けている。

 抱いている少女は白い可愛らしいワンピース着ているが、何故か体が透けているのだ。

 少女は金色の瞳を少年に向けた。



「ここでリタイアかな……」



 苦笑いを浮かべ、少女は少年に問う。

 彼女の表情に少年は眉を潜め、今にも泣きそうな顔をした。

 少女は笑う。


「最終話の、その先を歩みたかった」



「……生き返るかもしれないだろ」



 少年はポツリ、と呟く。まるで祈りのように。



「どうだろう。すべては創造主たる作者の気まぐれだし」



 その言葉を聞いて、抱き抱える手のひらを強く握りしめた少年。



「なんのために産み出したんだろうね」



 笑顔と、一滴の涙が頬を伝う。

 少女は少年の手のひらから消え、光の粒へと変化した。

 ソレは大地を揺らがせ、世界を白へと包む。



 視界が少しずつ元に戻ると、荒れ果てていた大地は芽吹きの緑へと容姿を変える。

 まるで少女の命と引き換えに世界が元通りになったようだ。


                    


 少年はゆっくりと立ち上がり、空を見た。 




ーー終わりのノベルーー




 ある遺跡。

 草木が生い茂っている。

 忘れられた建造物は時間を止めていた。

 しかし1つだけ、歩く、という動作をしている生き物。

 青いロングコートを着ている少年だった。

 


「ここは……?」



 少年は歩みを止める。

 目の前には壁。そこには魔方陣らしき模様が描かれて、中心には白く大きい鉱石らしきものが埋め込まれていた。

 無言で壁面に近づく少年。

 海を思わせる青い瞳は、その鉱石を見つめる。



「…………」



 少年はその鉱石に触れた。

 すると風が吹き始め、その鉱石へと吸収される始める。

 風は徐々に轟きに姿を変え、少年に瞳をつむらせた。



 爆風が止み、少年はゆっくりと目を開けた。



 目の前には1人の幼い少女。

 雪を思わせるような長い髪が重力に逆らい、浮いている。

 白いセパレートドレス、首には先程の鉱石を思わせる、石が付いたチョーカーを身につけている。



(とこ)しえの少女(ドール)……」



 少年はポツリと呟いた。

 ドールと呼ばれた少女はゆっくりと瞼を開ける。

 その瞳は銀。

 異質なその色は少年を見つめた。

 


「貴方がこの【小説】の主人公(ヒーロー)……?」



 少年は目を見開き、幼い少女を見つめた。

 しばらくすると彼は目線を下げる。



「葉月が表れるのは絶望的か……それにーー」



 拳を握りしめる少年。



「ちょっと主人公(ヒーロー)、聞いてる?」



「聞いてるよ……始めまして、新しい登場人物(ヒロイン)



 短い笑いを吐き捨てると、少年は目の前の少女を見つめた。



「ねぇ、主人公(ヒーロー)



「なんだ?」



「私はこの小説を……この世界を書いて、現実世界にいる作者を殺したいの」






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