第1話
「イタタタ…あれ?痛くない?」
おかしい、確実に病院の屋上から落ちたはずなのに、血すら出ていない。
というか、見えてる景色もおかしい。辺り一面真っ暗だ。
なのに自分の姿ははっきり見える。どうなってんだ?
とりあえず、ここがどういう場所かわからないとな。少し歩いてみるか。
そう思い、立ち上がろうと手をついたとき。
(ふにゅぅ)
「あ?」
何か柔らかいものを踏んだ感触がした。
は!まさか、さっきの女もいるのか!ということは、お約束のパティーンじゃないんですか⁉︎
俺は今の状況のことも忘れ、興奮しながら手元を見た。
そこにいたのは、仰向けで頬に手をめり込ませながら憤怒の顔でこちらを見ている悪魔だった。
「キャアアアアアアァァァァァァ‼︎」
俺はあまりの恐怖に女々しい声を出してしまった。我ながら情けない。
その悪魔は、俺の手をどけてもしばらく動かなかった。
そして、ゆっくりと起き上がったかと思うと、一言。
「ここはどこ?」
静かな声でそう聞いてきた。
俺はあまりの恐怖に声が出なかったので、精一杯首を横に振った。というか、こいつさっきの女か。今気づいたわ。
「そう、ならいいわ」
何かを悟ったようにただその一言を呟いて黙ってしまった。
もういっそ、めちゃくちゃキレてくれよ!
もう、この空気に耐えられない。誰か助けて!
そう思っていた矢先、先程まで何もなかった空間に光が差し込んできた。
あまりに突然だったため、呆気にとられていると、光の中に人が現れ始めた。
俺は直感的にいわゆる神だとわかった。それは、この女もそう思ってるようで、先程までの表情が嘘のように消えている。
むしろ、恍惚な表情になっている。
しかし、もし本当にこいつが神だとしたら、聞かねばならないことがある。この女には、悪いがな。
それはなぜ、俺たちをここに連れてきたか、だ。