表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

メイドティー

楽しんでね!

今、我が家には、メイドさんとその妹が住んでいる。

メイドとは、朝起こしてくれたりご飯を作ってくれたり、洗濯やらをしてくれたりする人のことだと思う。

もしかしたらここにいるのは、ただの居候(いそうろう)なのかもしれない。

(かえで)さん(かえで)さん。私、すごい能力を手に入れましたよ!」

「手を使わずに冷蔵庫を開けるとか?」

「もっとすごいことです」

「おーい、朝飯はパンでいいかー?」

「あ、私ランチパックで」

「じゃあ、私はメロンパンで」

「はいよー」

朝飯を作る概念がないメイドのために、朝飯を買ってくる自分、ステキ。

俺は、リビングのドアを開けて外へ出ようとした。そこで、財布を忘れていることに気づいた。

「おっと、財布財布」

慌てて戻ってリビングのドアを開けると

「いったっ!」

ドアの前に立っていた(かえで)にぶつかった。

「ああ、ごめん。大丈夫か?」

「えぇ!本当に?」

楓は(あかね)の方を見ながら、そんな事を言った。当の本人はクスクス笑っている。

「どうしたんだ?」

「いえ、私は信じませんよ!」

「もしかして俺、見えてないのか?」

「見えてますよ〜」

茜がひらひらと手を振りながら言ってきた。

「何があったんだ?」

「時間は1分くらい遡ります」




「もっとすごいこと?」

「そうです。楓、少しリビングのドアの前に立っていてください」

「? いいですよ」

てくてくとドアの前に立って、茜のほうに振り返った。

「これでいいですぐぁっ」



…で今に至るって所です。

「......じゃあお前」

「そうです!私、未来が見えるんですよ!」

高らかに腕を掲げて、茜がそう言った。

「じゃあ、俺将来どうなっている?」

「そうですね〜、私の代わりにメイドの仕事をしていますねぇ」

芝居がかった口調で、そんな事を言った。

「絶対嘘だろ、それ」

「どうでしょうねぇ」

「よし、今からパン買って来るだろ。それの種類を当てろよ」

「早くしてくださいね」

「OKだ」

俺は、財布をとって、全力疾走でコンビニへ行きランチパック (ハムマヨネーズ)と、メロンパンを買ってきた。

「へいただいま」

往復で10分足らずで買ってきた。

「さあ茜さん、ランチパックの種類は?」

「そ、そうですねぇ。ちなみに旦那様はどの種類が好きですか?」

誰が旦那だ。

「俺はたまごかな、普通に」

「なら、たまご味だ!」

ビシッと指をさして、犯人はおまえだ!の構えでそう言い放った。

「余裕でハズレだな」

「なにぃ!」

「かえでのメロンパンをください」

「おう、ほらよ」

「ありがとうございます」

「もう少し反応してくださいよ」

「いや、もう嘘だってわかったしな」

「違うんですよ、私が見える範囲は5分くらいなんですよ」

「5分くらい?」

「そうなんです、少し待ってくださいね」

念じるように、目を閉じて茜が静止した。

「あれ、(はじめ)さんは、パンを買ってないんですか」

「え?ってあぁぁ!忘れてた」

急いでいたせいで、自分の分を買い忘れていた。

「なら私のを半分あげます」

「えっ、まじで?」

「未来の私が買いに行かされていましたから」

「なら、買ってくるか?」

「そんな未来はない!」

「なんでカッコよく言ってんだよ」

ランチパックの半分をほうばりながら、買いに行かせるのは諦めた。

「で、どうして未来なんかがみえるようになったんだ?」

「それなんですけど、前にカレーを作ったじゃないですか、その時にメイドレベルがアップしてですね」

「メイドってレベルアップとかあるんだな」

「そうなんですよ、で、その時に得たアビリティがこれの正体ってわけです」

なるほど、分からん。

「でも、使うたびに頭痛くなるし5分先が見えるくらいなので、使う機会少なそうですね」

「なんだよその微妙なスキル」

「そういえば、私新しい服をゲットしたので買い物とか行きたいです」

俺が買ったんだけどな。

「それならさっさと着替えて準備しろ、パジャマなのはお前だけだぞ?」

「むむっ?」

「なんだよ…」

「ご、五分後に何かが来ます、注意してください」

「また未来見てたのか?」

「まぁ、一応」

「なんで何かなんだ?」

「いや〜ドアが開いた音と同時に終わってしまったんで」

「チャイム押してないのかよ…」

「ご両親の方が帰られたとかですか?」

「いや、まだ帰ってこないはずだが」

「てことは泥棒⁈」

「んなわけないだろ」

ガチャ

………。

「いま扉開いた音がしたよな?」

「足音も近づいてきますね…」

「まだ五分経ってないだろ⁈」

「多分、五分以内の出来事なので」

「曖昧なスキル覚えてんじゃねえよ!」

「き、来ます!」

ガチャ…

「やあやあ城田くん、親友の訪問にお出迎えもなしかい?」

「なんだお前かよ…」

「なんだとはなんだ?久方ぶりに会えたっていうのに」

「おうおう、てかチャイムも鳴らさずに勝手に入ってきてんじゃねぇよ」

「それは君と僕の仲じゃないか、ところで…さっきからソファーの後ろでこっちを見ている彼らは、君の彼女かい?」

「彼女が二人いたら、それは修羅場になるんじゃないか?」

「なら、僕を合わせて三人だから、戦争になりそうだね」

「はじめさん、本当ですか?」

「…ああ本当だ」

「えっ、(はじめ)さんって本当は」

「本当に冗談をいっている」

「そうですか」

「なんで若干残念そうなんだ」

「で、結局どういう関係なんだい?まさか本当に彼女ってわけではないだろう?」

「うちのメイドだ」

「…じゃあ横にいるのは?」

「メイドの妹だ」

「………」

「なんで黙るんだよ」

「くっ、あっはっはっは」

「楓、あの人若干変ですよ、なんか私怖いです」

「姉さまもそう思うですか、やっぱり私達って家族ですね」

「そこ、きこえてるよ!」

ビクッと二人が反応した。

「で、お前は何をしに家へきた?」

「暇だったからさ〜」

あーっはっはと豪快に笑いながらドスンと腰を下ろした。さながら仕事帰りのおっさんである。

「自己紹介がまだだったね、僕は新井(あらい) (りん)だよ、よろしくね」

新井 凛、ショートカットの白髪に小柄な見た目だが、好奇心旺盛で、昔はよく振り回されていた。

「ほら、お前らも」

「…サトウヨシコです」

「その妹です」

何時代だよ。

「真面目に答えろよ」

「メイドです」

「その妹です」

「話を聞けよ!」

「大丈夫大丈夫、メイドの方が茜さんで妹さんの方が楓さんですよね?」

「えっ、なんで知っているんですか、もしかしてストーカーですか?」

「そうかもしれない」

「どういうことですか?」

「こいつは何故か情報が早いんだよ、そりゃあもうビビるほど」

昔に親にコレクションの位置をバラすぞって脅迫されたことが何度かある。

「そんなに褒めたら情報がでるよ〜、ベッドの下のコレクションに新しい聖書が加わっt」

「はぁ?なんでそんな事知ってんだよ!あの時は確かネットで」

「聖書とか読むんですか?」

「姉さま、察してください」

できれば察して欲しくない。

「で、結局お前は何しにうちへ来たんだ?」

「愛する君に会いに来たのさ」

「その……(はじめ)さんはホモなのですか?」

「なんで俺なんだよ」

「ヒドイなー、僕は正真正銘女だよ、なんなら見てみる?」

「なんで俺に見せようとしてるんだよ!」

「…では、(はじめ)さんの彼女?」

「俺にも人を選ぶ権利はあるんだ」

「一さんとはどういう関係でって、うぁぁあ⁈」

楓は新井に捕まってしまった。

「な、何ですか⁈」

「きみ〜、小さくて可愛いね〜ちょっと触っててもいいかな?」

「ギャァァッ‼︎」

楓は逃げ出した、しかし、逃げられなかった。

「そいつは俺の幼馴染みだ」

「じゃあなんで掴みかかってくるんですかー?」

「自分より小さいものが好きだからなぁ」

「仕方のない事みたいに言わないで下さい、助けてください!」

「僕が世知辛いこの世の中から救ってあげるよー!」

「イギャァァー!」

声にならない絶叫が、部屋の中に響いた。

「あーすっきりした!」

栄養分を取られた植物のように、楓が枯れ落ちた。

「おいおい、大丈夫かよ」

「大丈夫さ、魂は取ってないから」

じゃあ何を取ったんだよ。

「さてと、そろそろお暇しますかねぇ」

「結局何しに来たか分からなかったな」

「挨拶に来たんだよー、近所に引っ越してきたからさ」

「へ?」

「それじゃーバイビー!」

「お、おい」

嫌な予感がする。

「かえでー生きてますかー」

「わ、私はもうそう長くはなさそうです、姉さま、立派なメイドになって、くだ、さ…」

「かえでえー」

「なんでお前棒読みなんだよ!」

そうして楓は生き返った。






「さてと、準備はできたか?」

「出来立てです」

「できました」

「じゃあ行くか」

あれから、俺らは買い物に行くことにした。もともとそういう話が上がっていたのと、楓の気分を晴らすためだ。

「もう…出ませんよね?」

「あいつは幽霊かよ」

「幽霊より怖いです」

確かにそうだな。

「そんな話をしていると寄ってきますよ〜」

「わーいかえで、お買い物たのしみー!」

「露骨すぎるだろ…」

結局、道中で会うことはなく店に着くことができた。スーパー以外にも雑貨屋さんなどに寄って、二人が生活に必要なものは買わせておいた。

「よかったですね、エンカウントしなくて」

「い、言わないでください!帰るまでが買い物ですよ!」

「本当に苦手なんだな」

「そういえば、楓は何を買ったんですか?」

「私は日用品ですよ、それ以外は小説など」

「お前は何を買ったんだ?」

「私ですか?私はお茶とお菓子と枕ですね」

「なんなんだよそのチョイスは」

「今度お茶を淹れますね」

「まあいいけど」

そんな他愛ない会話をしながら家の扉の前についた。それと同時に茜の動きが止まった。

「む、この気配は?」

「おいおい、なんだよ」

「なんかいるんですか?」

「メイドの勘ですが」

「お前予知系好きだな!」

茜がゆっくりとドアを開け、俺と楓がそれの後ろに続いてゆっくりと家に入る」

「…………。」

「…………。」

「..............?」

「誰も…いないみたいだな」

「そう…みたいですね」

茜の方を見ると気まず気に目を逸らしている。

「さっきの勘はなんだったんだ?」

「メイドスキル、メイドの勘です。稀に当たります」

誰だってそうだろ。

「まあ、いいか」

「そうですね、いいですね」

「お茶淹れてきますね」

いつ出てくるかわからない緊張感から解放されて、俺と楓は大きくため息をついた。それからのんびりと各々の荷物を片付けに入った。

「さてと」

あらかた片付いたので、リビングに戻ってゆっくりする事にした。少ししたら楓が来て、お茶とお菓子を持った、茜が来た。

「お茶は作れるんだな」

「そりゃあ溶かすだけですから」

そんなことを言いながら、三人分お茶をテーブルに置いた。

「なんかすごい色だな」

コーヒー豆とか入ってないだろうな?

「コーヒー豆とか入れてませんよ」

睨まれた。

「お、おう」

少しだけ飲んでみた。若干苦かった。

楓が懸命にお茶を冷ましていると茜がまた硬直した。

「またそれか?」

「はい、というより悪寒が」

バターン!

「やあみんな、みんなのアイドルリンリンだよ!」

「で、でたぁぁぁー!」

リンリンがあらわれた。

「そんな、僕は幽霊じゃないよ」

「それ(はじめ)さんにも言われました…じゃなくてなんでいるんですかー!」

「いやーさすがに何も持たずに訪問ってのも悪いと思ってね、これを奪っ…借りてきたのさ」

そう言って、右手に持っていた袋を開けて、箱を取り出した、その中には饅頭が入っていた。

そして俺は、食べ物は借りるものじゃないと思った。

「前のお詫びもかねて、さあ召し上がってくれ」

「お前そのためだけにわざわざ一旦帰ったのか?」

「いやー僕のことはなんでもお見通しだね!」

お前の方が知ってるだろ。

「あ、ちょうど喉が乾いてたんだよね」

そう言って温度高めのお茶を一気に飲み干した。熱くはないのだろうか?

「それじゃあどうぞ」

全員がテーブルに座って一緒にその饅頭を食べた。そして、一名を除いた三人が同じような反応をした。

「ゔぉう」

「ゔぅん?」

「ゔぅっ」

なぜかって?そりゃあ饅頭が不味(まず)かったからだよ。

「なんだこれ」

「何ですかこれ」

「おかしいなー」

三人が(いぶし)げな反応をする中、茜だけがケロっとして「あ、おいしー」とか呟いていた。

「新井さん、これどういうことですかねぇ?」

「そんなはずはない。まず、これはとある社長の弱みを握った時に口止めとして貰った箱なんだから」

なんだよそれ。

「だからこれ、二重構造になっているんですね」

「だからってなんで茜だけ食えてるんだ?」

茜は二つ三つと美味しそうに食べている。

ん?茜だけ?

「そういえば茜、このお茶の名前は?

「え?たしかギムネマ茶だったと思います」

「新井、ギムネマ茶って?」

「僕は検索エンジンじゃないよ、たしかギムネマはインド南部などの熱帯に自生するガガイモ科の植物だよ。ギムネマ酸には糖分の吸収を抑制するさy」

「それだぁぁー!」

「最後まで説明させてよ」

「茜、お前はそれを知っていたのか?」

「..........。」

茜は饅頭に視線を戻した。

「そうか」

三人はお互い向き合い、頷いた。いま自分達がやらなければいけないこと、それを理解したのだ。

新井が茜を背中からホールド、そこから俺が全力で沸かしたギムネマ茶を楓が茜の口にねじ込む。

時間にして一瞬だった。茜は抵抗する暇なく、口の中が苦味で満たされた。

「お、おーまいがー」

「これは然るべき処置だぞ」

「この饅頭、どうしましょうね」

「明日には食べれるさ」

「僕は何でここにいるんだろう」

「半分はお前のせいだろ」

切に思った、普通にお茶と饅頭を頂けたらどれほど幸せだっただろうかと。












これからはキャラを増やしていきたいと思ふ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ