駄メイドカレー
夜寝付けない時とかにどうぞ。
学校から帰り、いつもなら親が面倒そうに晩飯を作っている頃だ。
「今日のご飯はどうしましょうか?」
「…えっと、親は?」
「親子丼ですね。」
「……。」
「?」
「い、家間違ったかなぁ?」
「いえ、間違ってません。」
「……。」
「ダジャレじゃないですよ?」
「なんじゃこりゃあー⁉︎」
今日はメイド服を着た人が家にいました。
「親はどこへ行った?」
「ハワイの方へ」
「何も報告なしでか⁈」
「そちらの方に書き置きが」
「どれどれ」
Dear 息子
アメリカのとある会社に呼ばれたので行ってきます
面倒はそこの人にお願いね
by親
「全然わかんねー⁈」
どうやら我が家の親は暫く帰ってこないらしい。そんなことよりも今一番重要なのはこっちを見ているメイドの事だ。
身長は俺と同じくらいで典型的なメイド服を着ている。黒髪で俗に言う綺麗系の女性だ。
「とりあえず自己紹介しておきます?」
「いえ、晩御飯の方が重要かと」
抑揚のない声でそう言ってきた。
「じゃあ、親子丼を作るのか?」
「いえ、今日はピザをとりましょう」
「え?メイドじゃないのか?」
「? はい、メイドですけど」
俺が困惑している間に、ピザを取り始めた。
ピザをとるのに慣れているのか3分程度で注文して戻ってきた。
「ピザが届くまで時間があるので自己紹介をしておきましょう。私は今日からあなたのお世話をさせていただきます。春咲 茜 と申します。
「俺は城田 一だ。よろしく」
「..... じゃなくて今の状況を説明してくれ」
「ピザの配達を待っています」
違う、そうじゃない。
「そうじゃなくてなんでうちのメイドになったんだ?」
「お仕事がきたからです」
なんか、そっけなく返された。
とりあえず落ち着くためにコーヒーでも淹れようかと台所へ行くと、メイドもついてきた。
「どうなさいました?」後ろの方でそんなことを言ってきた、と、ふと思った。
「そういやメイドなんだろ?コーヒーを淹れてくれないか?」
「茜とお呼び下さい、私のことは」
そう言いながら、そそくさとコーヒーを淹れる準備を始めた…ように見えた。
「おいおいおい、何やってんだ?」
なんとコーヒー豆をやかんに入れ始めたのだ。
「何か?」 きょとんとして、なんの悪びれた様子もなく答えてくる。
「コーヒーを淹れるんだろ?」
「はいそうですよ」
「今までコーヒーを作ったことはあるのか?」
「初めてですね」
何故か嬉しそうに少し微笑みながら答えてきた。
見た目だけならかわいいのだろうが、やっていることがやっていることなので、俺には狂気に満ちた表情に見えた。
「コーヒーは自分で入れるから取り敢えず座ってろ」
「いえ私が必ずや!」
「なんでノリノリなんだ⁉︎」
なにこのメイド、こわい。
結局コーヒーができることはなく家のチャイムが鳴り、ピザの配達がきた。
「私が出ますね」
「え、ああ、よろしく」
いつもなら普通にうまい晩飯を食っているところなのにいまはどっと疲れている。
俺の家は3人家族で、決して家は広くはないがメイドを雇うほどではない。
俺自身何もできないわけでもない。
ではなぜ親はメイドを雇ったのか? そんなことを考えているとメイドが帰ってきた。 「では、晩御飯を頂きましょう」
とても嬉しそうな顔をしてそんなことを言ってきた。こいついったいなんなんだ?
ピザのパッケージをウキウキしながら開けているメイドに燻げな目を向けていると7対3に分けてピザを差し出してきた。
3の方を。
「なんで俺の方が少ないんだ?」
「ダメですか? 」
上目使いで聞いてきた。
なんだこいつ。
とりあえず二切れぼど奪い返してやった。
そうしたらさっきまでの瀟洒な態度とは一変、急にピザを我が子を守るようにして威嚇してきた。
「なんでメイドのくせにお前の方が食うんだよ?」
「いいじゃないですか。あと、茜とお呼びください」
そんなことを言いながら見た目からは想像できない勢いで残りのピザを平らげた。
仕方ないので俺もとりあえず残りのピザを食べることにした。
結構うまいな、これ。
飯を食い終わり、部屋へ戻ろうと立ち上がると、俺が立ち上がると同時に茜も立ち上がった。
とりあえず無視して部屋へ向かおうとすると某RPGの仲間みたいに後ろからついてきた。
自分の部屋が近づいてきても一向に離れようとしないので自室の前で180度回転し、リビングの方へ向かってみた。
案の定ほぼシンクロした動きでついてきた。
一瞬当たり判定がなかったような気がする。
ウインドを開いたらステータスとか名前とか出てきそうだな、と思いながら、仕方なく話しかけることにした。
「俺は今のところ用がないからリビングの方でゆっくりしてたらどうだ?」
「いえ、一様がお休みになられるまではお世話をさせていただきます」
さっきの食事の時とは打って変わり、涼しい顔でそんなことを言ってくる。
そもそも一度たりともお世話になってないが言っても無駄だと思い「そうか」と返した。
しかし、俺もそこまで優しくない。
「あっ、UFO」
自分の言語のレパートリーの少なさに少し泣きそうになったが、どうやら効果があったようだ。
茜が振り向いたと同時に猛ダッシュで部屋に飛び込み鍵をかけた。
「今日は早く寝よう」
数少ない特技である早着替えを繰り出し、俺はベッドに転がった。今日は一段と居心地が良い。
俺がベッドのありがたさを再確認しているとドアの方から嫌な音が聞こえてきた。
ガチャッ。
なんと鍵を開けて堂々と茜が部屋に入ってきたのだ。
「っておい⁉︎なんで部屋の鍵とか持ってんだ⁉︎」
「お母様がこれをと」
「なんで渡してるんだよぉぉぉ⁈」
半ば半泣きの俺をよそに、興味深そうに部屋を見渡しているあいつは、どうやらしばらく居座る気でいるらしい。
「とりあえず出て行ってくれないか?」
「それはできません。それだとお仕事ができないですから」
「いや、もともと何もしてないだろっ⁈」
もはや悲鳴に近い声でそう言った。
さして気にする様子もなく部屋にいるこいつはもうどうにもならないと理解し、最終手段無視して寝るを実行した。
「? 今日はとても早くおやすみになられるのですね」
おとなしく電気を消して部屋を出て行ってくれたので、俺はそのまま寝ることにした。
ピピピピッ ピピピピッ
携帯のバイブレーションと共にけたたましい
音が鳴り響いた。
どうやら朝になったらしい。
世間一般では、休みの日はアラームをかけていないかもしれないが、俺は一応、一定の時間には起きるようにしている。
起きたらお昼とか嫌だからね。
今は冬の中頃で、ベッドから出ると死ぬほど寒い。
いつもなら少し携帯をつついて覚悟を決めてからベッドから出るのだが、今日はやけに背中の方が暖かい。
あと、自分のではない寝息が、一定のリズムで聞こえてくる。
「って、何やってんだぁぁぁ⁉︎」
人生で初めて抱き枕にされていた。
「ん?ああ、おはようございます。一さん」
「おう、おはよう…じゃなくてなんでここで寝ているんだよお前はっ⁉︎」
「暖かそうでしたから」
「だからって背中にはりつくんじゃない‼︎」
なんかいけない事をしているみたいじゃないか!
「それはあれです。私って枕とか毛布とかを抱いて寝るタイプですから、仕方のないことです。そんなことより朝ごはんの準備をしますね」
そう言ってベッドから上半身だけ起き上がり、フリーズして、また毛布をかぶり直した。
「もう少し、ゆっくりしませんか?」
同じベッドでこのシチュエーションでのその言葉はなんかエロい。
てか普通に近い。心臓がさっきからバクバクして止まらないんだが。
これ以上は精神が持たないので覚悟を決めてベッドから出た。
想像以上に寒かったが。
「あーもう」
俺はとりあえず着替えを持ってリビングの方に向かった。
「なんで俺がこんな」
急いで着替えを済ませ、自分の部屋のドアを開ける。
茜のやつは、まだ気持ち良さげな寝息を立てて眠っている。
「我が家の究極奥義を出す時が来るとはな」
俺はそう呟くとエアコンのリモコンを手にとった。
「んん?ああ、わざわざ暖房まで、ありがとうございます」
なんか言っているやつは無視して、俺はリモコンのスイッチを押した。
冷房の。
「なんかやけに暖まりませんね。というより冷えているような、ってこれ冷房ですよね⁈私を虐めて楽しもうって魂胆ですか!見かけによらずドSなんですね‼︎」
いよいよキャラが掴めなくなってきたな、こいつは。
「あと数分もすればここは極寒の地となる。おとなしくベッドから出てきてもらおうか。」
奥義[ブリザードブレス]である。
なかなか俺が起きない時に母によって生み出されたこの技は、部屋にいる生物を外に出すことが出来る。
ちなみに夏は[煉獄の火炎]になる。
「ほら、早く起きて着替えてこい」
「ううっ、私にこんなことまでするなんて。いくらご主人様といえ度が過ぎてます」
なんでそんな変な言い方をするんだこいつは。
「いいから早く着替えてこい」
うらめしそうな顔をしながら布団を身にまとって部屋から出て行った。
「さすがに今のままじゃあまずいよなぁ」
考え込む俺をよそに、茜はバタバタとリビングで着替えている。
「せめて俺が見えてないところで着替えろよ」
家族か!
ようやく着替え終わったのか、パタパタと、こちらに近づいてきた。
「改めておはようございます。今から朝ごはんの準備をしますね」
「ちょっと待て、朝ごはんって何を作るんだ?」
「何を作るのでしょうか?」
頬に指を当てて聞き返してきた。
こいつ、今までよくメイドとして生きていけたな。
まあ、朝飯を作れないことは薄々気付いていたので、今更取り乱したりはしな
い。
「よし、これから俺が、家事のノウハウを教えてやる」
出来ないのなら出来るようにすればいいじゃない。
そうして、俺の駄メイド教育生活が始まった。
「まず初めに、朝ごはんと言えば何が思い浮かぶ?」
「そうですね…コンビニの…菓子パン?」
途切れ(とぎ)途切れそう答えた。
「そうだな。それでもいい。でもでもでも〜メイドをやるからには自炊は基本じゃあないかなぁ〜?」
薄々気付いていたんだろう「うっ」と言って目を逸らした。
「大体なー朝は飯と他に弁当を作らないといけないから、早起きも大事なんだぞー」
「ハヤオキ?ナニソレオイシイノ?」
片言で返してきた。未だにこいつのキャラが掴めん。
「要は間に合うくらいにな、今日は学校休みだから別にいいけど、掃除やら洗濯、買い物もしなくちゃならない。」
「そんなに⁈」
「…… なんでメイドやっているのにこんな事も知らないんだ」
思わず頭を抱えてしまった。
「でも買い物はできますよ。電話してちy」
「自分の足で、スーパーに買い物に行くんだ。」
「でも私、何故かスーパーに行くとチラチラ見られるんですよ!」
「普段からそれを着ているのか?」
「はい、結構お気に入りです」
「側から見たら、コスプレだぞ」
「な、なんだってぇー⁈」
仰々しくポーズを取りながらそんな事を言ってきた。
お前気付いてなかったのかよ。
「ではどうすれば良いのでしょう?」
「普段着とか持ってないのか?」
「持ってません!」
「なんでだよ⁉︎」
「メイドですから」
「メイドだからメイド服しか着てはいけないという法律はないぞ?」
「知ってますよ。そんなの」
なんかバカにされた。
「とにかく服買ってきて下さい!」
「ああわかったよ!」
このままではらちがあかないので、サイズを聞いて買ってくることにした。
その時ついでに、夕飯の買い物を済ませ、茜にカレーを作らせようと意気込んだ。
そうして我が家へ帰ってきたわけだが。
「何やってんだ?」
リビングには正座している茜がいた。
そして茜の前に小柄な少女が座って、茜に説教をしていた。
「あ、おかえりなさいませ」
「お、おう、ただいま。で、誰?」
俺は謎の少女を指差した。
「人を指さすなと、親に言われませんでしたか?」
そう言いながら謎の少女が立ち上がった。
小学生くらいだろうか、赤茶色の髪で、気の強そうな風貌から、茜より上位の生き物のような気がした。
「何ジロジロ見てるんですか」
「い、いや。ていうか誰ですか?」
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私は春咲 楓と言います。春に咲く楓です」
なんかやけに誇らしげに言ってきた。
「俺は城田 一だ。春咲ってことはまさか」
「そうです。妹です。姉さまがお世話になっています」
まったくだ。
心の中でそう思ったが、言葉に出すと色々とあれなので黙っておいた。
「で。なんで妹さんが我が家に?」
「そりゃあ姉さまが心配で…」
「てかお前らの家はどうなってんだ?」
「姉さまがメイドになりたいって母さまに言ったら、なってみたら?と言われてメイド服を着て家を出て、私が心配で追いかけてたってかんじですね。」
「お前らの親てきとうだな⁉︎」
自分が言えた立場じゃないが。
「てことで私もこれからお世話になります。」
深々と礼をしてきた。どう見ても茜より大人びてみえる。
「むっ、さっき私より楓の方が大人だな〜とか思いましたね?」
さっきまでしゅんとしていたのに、なかなかの洞察力だ。
「ああ、思ったよ」
「いやそこは気を使ってくださいよ」
「嘘はいけない」
「嘘は人に優しいんですよ」
「なら狼少年はめちゃくちゃ優しいんだな」
「そうかもしれません」
「… なに二人で楽しそうにしているんですか」
どういう風に見たら楽しそうに見えるんだ。
「そういえば私の服、買ってきましたか?」
「あ、そうそう。ほれ」
俺は右手に持っていた袋を茜に渡した。
「姉さまに変な服着せようとしてないでしょうね?」
メイド服の時点で若干変だろ。
「いや、普通に買ってきたぞ」
「まあいいです。私は準備してきましたから私の方はお構いなく」
「ずるいですよ楓だけ。私の分も持ってきてくださいよ」
「普通持っていったって思うじゃないですか!なんで財布まで忘れてるんですか!」
ここに呼ばれなかったらどうするつもりだったんだろうか、茜のやつは。
「それはそうとして、これからお前はどうするんだ?」
「私は姉さまを監視します」
「あと、私の抱き枕一号ですから」
「お前、妹を抱き枕にしていたのかよ」
親に見られたら勘違いされるぞ、絶対。
「そういえばもう一つの袋はなんなんですか?」
「これか? これは夕飯の買い物の材料だ」
「何を作るんですか?」
「カレーだ」
「へぇ、いいですね」
「もちろん作ってもらうからな」
「やっぱりですか…」
こいつ、我が家のニートになりに来たのかよ。
「姉さまが作るのなら私もお手伝いします」
「おうそうか、二人ともカレーを作った経験は?」
「『ありません』」
見事にハモって言った。
「なんとなく分かってたよ。ほれ、ついてこい」
相変わらず真後ろにつけてついてくるんだな、こいつは。
楓もついて三人パーティができた。ちなみにジョブは「学生」「メイド」「妹」である。
キッチンに行ってとりあえずカレーの大まかな作り方の説明をすることにした。
「カレーなんだが、材料切って、炒めて鍋に入れて、ある程度煮たらルーを入れて完成だ。細かな事は、追って説明するからその時にな」
「『はーい』」
家庭科の調理実習みたいな雰囲気で、メイドとその妹にカレーの作り方を教えているんだが、他所からみたら結構シュールだ。
「先生、材料ってどんなものですか?」
茜がそんなことを聞いてきた。
「にんじんやら玉ねぎやらジャガイモやらそんなところだ」
「先生、スパイスはどんなものを使うんですか?」
どんだけ本格的なカレーだよ。
「いや、市販のカレールーを入れるから、スパイスは使わないぞー」
「へー、ここではそうなんですね」
一般的にそうなんですけどね!
心の中でそう思いながら俺は材料の皮むきを始めた。
「ほれ、二人もやってみろ」
そう言ってピーラーとにんじんを二人に渡した。
二人は見よう見まねでにんじんの皮を剥き始めた。
調理実習とかやらなかったのか?こいつらは。
俺もジャガイモの皮を剥き始めて3つ目くらいに茜に話しかけられた。
「これでいいですか?」
茜がヒラヒラしたオレンジの長方形を俺に見せてきた。
「なんでだよぉ〜!」
ジャガイモならわかるんだ。だからニンジンにしたのに!
「皮だけでいいんだ。わかるだろ⁈」
「なるほどですね」
楓の方を見てみるが、案の定ヒラヒラした長方形を持っている。
「……。とりあえず皮だけ剥いてくれ」
カレー作りは二人には難しいようだ。
皮を剥き終わり、材料を切って鍋に入れていい感じに仕上がってきた。
「私知ってますよ!あくを取るんですよね!」
妹のほうがそう言ってきた。
「そうだな、なら任せていいか?」
「任せてください!」
しかし鍋を見るには若干身長が足りないので来て早々、まごついていた。
「姉さまー、抱っこ」
「ほいほーい」
姉が妹を持ち上げて、その妹があくをとるというなんともシュールな状態になった。
俺はそんな微笑ましげな状態を眺めながら、袋からルーを取り出した。
「そろそろいい頃だな」
俺は、カレールーを鍋に溶かし始めた。
「そういえば一さんはなんで料理とかできるんですか?」
茜が興味深そうに鍋を見ながら質問してきた。
「親が仕事で離れることとか、学校の調理実習とかでな。お前はそういうのなかったのか?」
「私の家は料理は作る人がいたので」
「どういうことだ?」
「私たちの家はお手伝いさんとかがいて、身の回りのことはある程度やっててくれたので」
妹の方が答えてきた。
「ってことは、結構金持ち?」
「そうかもですね。誕生日に遊園地貸切にしたり、車を買ってくれたり」
絶対車いらねーだろ、それ。
「てことは結構なところのお嬢様ってことだろ?なんでこんなところでメイドやってんだよ」
「それは姉さまの気分で」
どうなってんだよ。
「まあここの家の人と知り合いらしいですし親もあまり気にしてませんでしたから」
俺の心情を察したかのように楓が答えてきた。
「だいたいわかった、だが俺はどこのお嬢だろうが容赦はしないからな」
「え、何ですか、もしかして私の貞操ピンチですか?」
さらっと変なことを言うんじゃない。
「姉さまになにいってるんですかぁ!」
「お前まで反応するんじゃない!」
歳が足りないのに理解するんじゃねぇ。
いろいろあったがなんとかカレーを作ることができた。
「やっとできましたね」
「ああ、やっとできたな」
「おなかすいたー」
俺は、やっとできたカレーを眺めながら、食事の準備をしようとした時に重要な事を思い出した。
そういえば、米炊いたっけ?
「あー」
………。
横目に二人を見てみると、やり遂げたような顔の茜と、疲れきった顔の楓がいた。
嘘は人に優しいというのなら、現実は人には厳しいんだろう。
俺は二人の方に振り返り、真実を告げることにした。
「すまん。米がない」
「…………。」
ひらひらしたオレンジの長方形を見ながら、二人からだんだん色が抜けていった。
物好きな方、こんにちは。
初めて書いてみたのですがなかなか粗末な物が出来ました(遠い目)
これからも夜寝付けない人が寝付けるような、そんな物を書けたらと思います。
では失礼