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ドワーフの村

 その日、オレとサンドラはとある小さな村に来ていた。この村を知っている人間や魔物は少ない。大きな森の中にあり、その道中は、更に外部の者が近づけないよう迷路になっているのだ。彼らはそこでひっそりと平和に暮らしている。


「おぉお! 

 久しぶりじゃな、アレックス!

 元気にしておったか? 」


 そう明るくオレに話しかけてくる背が低く、異常な筋肉質の男の名はテオドル、ドワーフである。


「まぁまぁだな。 」


「わっはっは! 

 相変わらず元気そうで何よりじゃ。

 それにしても、アレックス、お前… 

 ついに結婚する気にでもなったのか? 」


「何言ってるんだ? じーさん? 」


「何って?

 お前の横で腕を組んでいる美人は彼女じゃないのか? 」


 左に目を向けると、サンドラがオレの腕を組んでいた。迂闊にも気を抜いていた。鎧越しである事もそうだが、余りにも自然に腕を組んできていたようだったので気づかなかったのだ。ちなみに、普段オレは黒のフルプレートを装備している。暗黒騎士と呼ばれているのはその影響が大きい。


「って、サンドラ、何してんだ? 」


「彼氏と腕組んでるだけだよ! 」


「彼氏になった覚えはないが… 」


「ま、これからなるからいいんじゃない? 

 私、アレックスの事、好きだよ! 」


 はぁ… 、相変わらず強引な女である。しかも、何気に告白してきやがった。まぁ、美人に腕を組まれる事を敢えて断る理由もないので、そのままにしておくことにした。


「お熱いのぉ! 

 若いって素晴らしいわい!

 で、アレックス、今日は何の用じゃ? 」


「ああ、魔術師専用の武器と防具を作って欲しくてな。 」


「魔術師専用? 

 ………

 なるほど、そのお嬢ちゃんは魔術師という事か。

 しかし、それなら儂らに頼むよりもエルフの方がいいんじゃないのか? 」


「まぁ、それもそうなんだが。

 サンドラは黒魔術専用の魔術師なんでな。

 ダークエルフを探す前に護身用に装備させておこうと思って。」


「えー! 

 私強いから必要ないよー! 」


「ま、サンドラが強いのは認めるがこれは保険だ。

 魔法詠唱している間に襲われたらどうするんだ? 」


「そんなの考えた事ないよ! 

 だっていつも先に勝っちゃうから! 

 それに武器と防具を持ったら素早さが落ちちゃうよー 。」


「サンドラの強さはわかるが、オレと一緒に居たいのならテオドルの作ってくれる武器と防具を装備しろ。

 それが嫌なら、サンドラとはここでお別れだ。 」


「えー! 

 わかったよ~… 」


 サンドラは渋々承諾をしてくれたようだ。テオドルにサンドラの為の武器と防具の作成を依頼した後、オレたちはこの穏やかな村でのんびりと過ごしていた。一週間ほどが経った日、依頼していた武器と防具ができたと宿に連絡が入ったので、オレたちはテオドルの鍛冶屋に向かう事にした。


「今回もかなり気合いを入れて作ったから大事にしてくれよ、お嬢ちゃん! 」

 テオドルはそう言うとサンドラに黒の胸当てと黒の短剣を手渡した。


「何これ!

 超軽くて丈夫なんだけど! 」


「そりゃ、そうさ。

 鍛冶の天才ドワーフの中でも、最高の職人テオドルが作ったものだ。

 しかも、その素材は特殊なもの。

 いわゆるレアメタルだ。

 最高に軽くて最高に丈夫、この世界では貴重なものだ。」


「レアメタルって!

 あのレアメタル!!! 」


「そうじゃよ、お嬢ちゃん。

 これだけの量があれば、人生一生を遊んで暮らせる程の価値の物じゃ。

 アレックスのフルプレートも全てレアメタルで儂が作ったものなんじゃよ。」


「なんで?

 何でそんな貴重な物私のために?! 

 それにどうやってそんな材料集めたの? 

 お代はどうするんの!? 」


「一応、仲間だからな。

 簡単に死なれたら困る。 

 それに代金ならかなり昔に支払っている。」


「アレックスの言う通りじゃ。

 代金は十分過ぎる程もらっておる。

 それに彼は儂らの命の恩人じゃからな。

 それと、レアメタルは昔アレックスから預かっていたものじゃ。

 今でも倉庫に大量にあるぞ。

 それよりもお嬢ちゃん。

 どうやらアレックスに相当愛されているようじゃな! 」


「え!

 アレックス、そうなの? 

 私、超嬉しいー!! 」


「何をバカなことを言ってるんだ? 

 仲間が死ぬのはもう嫌なだけだよ… 」


「仲間… 

 騎士団の件か… 。

 あれは仕方無かったと儂は思っておる。

 それにお前がいなければ、儂らはもう… 」


「そんな気にすんなよ。

 オレが落ち込むならまだしも、じーさんが落ち込んでどーすんだよ。

 ただ、新しくできた仲間には長生きして欲しいだけさ。

 じゃ、ありがとな、じーさん。

 また来るよ。 」


 オレはテオドルにそう告げると、サンドラの手を引きドワーフの村を出て行ったのである。

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