狼と先生
確かに俺は姫宮カノンの言ったとおりで沖本智恵が好きだった。やはり幼馴染フィルターを通したらやはり可愛く見えてくるものだし、昔はボーイッシュな田舎娘といったところだったが高校生になってから髪も伸ばし始め大人っぽくとても可愛い女の子に成長した。小さい頃から知っている彼女だからこそ意識するものがある。さっきのように優しい一味面もあり、内面もしっかりとした子なのだ。
俺は学校に行ってる時間が今一番気が紛れる時間だった。
家に帰りたくは正直なかった。
日が進むに連れ歯車を狂わしていく母親を観るのがあまりにも辛かった。
母親は夜な夜な父親の名前を何度も叫んでいた。
俺をよく父親と勘違いする日もあった。
重いずっしりとした扉を開くと色白で痩せ細った母親の姿が目に飛び込み、何処でぶつけたのか足元にはアザが出来ている。
玄関廊下に横たわる母親を抱きかかえ、寝室に連れ込む。
最初は無抵抗だが、何かを感じたのかいきなり足をジタバタさせる。母さんごめんね…俺は謝りながら力任せに母親を運ぶ。
こんな日が一日でも早く終わってほしい。
早く父親に戻ってきてほしい。
もう自分では食事や排泄も満足に出来ない時のある母親をどうしようか俺は考えた…。
学校をやめようかとも俺は思っていた。
こんな現実から目を背けてしまいたいけれど、母親一人この家に置いておくのはやはり危険だと思う。俺は翌日にでも藤井先生に相談することにした。