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狼ヶ嶽村  作者: 百鬼 俊介
第一章
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狼とご飯











母親は以前まで普通の人間だった。田井中クリニックで普通に看護師してたし、今の様な狂った行動を起こしたことは一度もなかった。自分な旦那がいなくなったことに関してあまりにもショックだったのはわかるが…深夜徘徊や器物破損はあまりにも行き過ぎていて、旦那失踪くらいでは説明が効かないのだ。田井中クリニックの先生は、街の大きな病院にあるような精神科に行くようにと俺に勧めてくれたけど父親がまだ見つかっていないとこの土地を離れるようなこと母親は出来ないだろうと俺は思った。
















ある日の事だった。

また長谷川眞が橋野隆太に対して厳しくあたっていた。

俺は教室の扉を開けてから自分の席につき、またどうせ橋野隆太が悪いわけでないけど空気の読めない行動に長谷川眞がキレてるだけだろうと思いまとめに聞く耳は持っていなかった。

たが、そこに飛び込んできた情報は聞き捨てならないものであった。

長谷川眞が言うには村ではお前が神隠しの犯人なのではないかと疑われているんだぞというものだった。俺は目を丸くしてあたりを見回した。その瞬間気がついたが皆その事を知っているような素振りだったことにも驚いた。

俺は母親があんな状態なため外部からの情報が最近少なく、警察や田井中クリニックの人、後は学校くらいしかまともに有益な情報を得られる手段が無い為その事は全く知らなかった。誰も橋野隆太のことを庇おうとはしないのはそういう事なのではないか…。

俺の時間が止まっていくような…表現し難い感情が心臓の奥で起き上がってきていた。




橋野隆太は村育ちの俺にとって初めて都会から引っ越してきて出来た村出身者以外の友達で、悪目立ちばかりするがほんとは勉強も出来て友達思いのとっても良いやつである。

確かに褒められるようなことをする子ではない。タバコやら酒やら何でもするし、授業もまともに受けてない。小さい村だから村ぐるみの祭事はとっても大事な事だが彼は全く協力的じゃないから村でも浮いた存在なのは確かだ。ただ人を殺めたりとかそういう人間なのだろうか…。違うと信じたい。




「てかさー、橋野って美幸が居なくなった時探しに行かなかったってマジ?」

姫宮カノンが重たい空気の中、悲しげな表情を浮かべながら橋野隆太に問う。

「そういえば…私、あの日の夜、橋野くん観てないなぁ」

飯島も続けた。確かに俺も橋野隆太が香川美幸が居なくなった晩に観てはいない。クラスで見ていない人間は橋野隆太だけだ。

橋野隆太は困ったような顔をしてそこから口を閉ざしてしまった。バツの悪い顔をして机の横にかかっているカバンを手に取り教室を後にした。

その後を沖本智恵は追いかける様に走っていく。

「みんな、橋野くんは犯人なんかじゃないよ…みんな酷い!」

沖本智恵は涙声で俺達にうったえかけながら彼のあとを追った。

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