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狼ヶ嶽村  作者: 百鬼 俊介
第一章
4/14

狼と父親

俺の母親は看護師をやっていて村の診療所の田井中クリニックに勤めている。だからたまに帰りが遅かったりするんだが今日もまた帰りが遅くて22時くらいに帰ってきていた。

俺は風呂を済ませ一人部屋で横になっていた。することもなかったし、父親が話に来るかもしれないからだ。ただ話に来たのは23時をまわってからで来たのは母親の方だった。

父さんが何処にもいない。母親は凄く深刻そうな顔で俺の部屋のふすまを開けて半ば泣きそうになりながら俺にうったえかける。俺もいくら仕事が忙しくてもそろそろ話には来るだろうと思っていた父親がなかなか来ないのは不思議に思っていたが忘れているもしくは行方不明になった香川美幸を捜索しに行っていると思っていたのだがどうやら何処にも居ないらしい。仕事場にも家にももちろんこんな時間には捜索活動はしていない…田舎村だからコンビニもないのでフラフラ散歩するあてなんかそそもない。ただ何も言わないで出て行ったりするような人ではない…。父親はどこへ行ったのだろうか。




とりあえず香川美幸の行方不明事件のこともあり、俺と母親は警察に捜索願を出した。警察もこんなくらい時間では見つからないだろうということもあり早朝から探すと約束してくれたのに、母親は1人父さんを探すと言い出した。言っても聞かない人間なのは俺が良く知ってるわけでむりやり引っ張って家に連れて帰った。母親は家の中をずっと落ち着きなく歩き回り、父さん…父さん…と呟きながら父親の帰りを夜中待ち続けていた。流石に危ないと思い、俺は両親の寝室に母親を連れていき部屋の中から鍵をかけ母親を落ち着かせた後寝かしつけ自分もその部屋で一夜を過ごした。





翌朝になって昨日の疲れも感じさせないくらい母親は早起きし日が昇るのと同じくらいに出かけ父親を探しに行った。

村ではよからぬ噂が立ち込めていた。小さな村で、短期間に二人も行方不明者が出たのだから確実に誰かに意図的にしこまれていると思っても無理はない話だ。

俺自身、一人ならまだしも二人…そして二人目は自分の父親だと思うと確実に何かあるんじゃないかと疑ってしまう話だ。

そして昨日の父親の言動。俺に話があるといって何も言わずに何処かへ行ってしまった。そして行方不明について村長がなにか知っているんじゃないかと言った時の父親の顔…。俺の考えとしてはそれについての話だったんじゃないのかと思ってしまう。まあ、一人目の行方不明者香川美幸はわからないが父親は数日したら戻ってくるだろう。そう俺は思っていた。




父親が失踪してから一週間が過ぎた。



一週間近く過ぎても行方が知らず、その前に居なくなっていた香川美幸も姿を見せていなかった。

父親が失踪して母親は、常軌を逸してしまった。

急に夜中に立ち上がり村の中を裸足でさ迷うとするのだった。俺が目を覚まして止めに入れれば良いのだが、あまりにも不定期に起き出して毎晩するためとめられない時もあり村の人から好奇な目で見られるようになってしまった。

ただそれだけなら良かったのだが、あの奥さんがほんとは旦那さんをヤったんじゃない?だとか、あの奥さんだから旦那さん蒸発したんじゃないの?だとかありもしない確証もない口からでまかせをでっち上げられて溜まったもんじゃなかった。まあ、その頃の母親はそんな噂すら耳に入って来やしないほど危ない状態だったのだが…。

ただ噂ではやはり誰かの手による意図的な連れ去り事件だって言われているらしく、警察もその事を視野に入れているようだった。




ついには学校でも事情聴取をされるようになっていた。

授業中一人ずつ呼び出され、交番のお兄さん二人と生徒と校長先生で香川美幸の失踪前のことやその後のこと、これは俺だけかもしれないが父親について…15〜20分程度と長めにうけた。

一週間も立ってしまったが…あの日の父親のことはちゃんと記憶している。

あの日父親は俺に何を告げようとしたのか…今になっては9割は絶対帰って来ないだろうと思われる父親の本当に告げようとした真実を自分で謎といてみようとまで思っているくらいだ。そして一番あやしい存在を俺は導き出した。ここでいうあやしいはヒントになる存在であり、犯人とはまた違う人物だが…今の状況下では何もヒントにはなり得ないだろう。







そう、俺の母親だ。








    _____________狼ヶ嶽村___


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