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狼ヶ嶽村  作者: 百鬼 俊介
第一章
3/14

狼と学校


おはよー!っと挨拶しながら橋野隆太が教室に入ってくるが静けさを教室はまとい、重苦しい空気が立ち込めていた。

それもそのはずで、昨日の夜に連絡網が入りクラスの女子生徒香川美幸が家に帰ってきて居らず、行方不明となっているということだった。

こんな小さな村で行方不明など考えられるわけもなく、一番は隣街にでも連れ去られたのではないか?というものだ。

連絡が回ってきてからは村総出で女の子を探したが手がかりもなく、今でも村の人や警察で捜索しているということだ。

そんな状態で橋野隆太がいつも通り賑やかに教室に入ってきた所でこの灰色の空気を断ち切れる訳もなく、気味悪い程静かな教室で彼はひとり浮いていた。

そんな彼を姫宮カノンと飯島は呆れ返ってみていた。俺はアイツが本当は心配しているが、少しでも皆を励まそうと無理している様にも見えた。ただ生徒会長の長谷川眞は違った。普段おとなしいタイプの人間だが今回ばかりは行方不明になった香川美幸を庇ってか、声を上げた。

橋野君、君ってやつは本当に幼稚だな…クラスの皆や村の皆がどんな気分だか考えた事あるのか?

長谷川眞はそうとうキレているようだ。まあ確かにそれはそうだが、たった一日家に帰ってこなかっただけだ、村の生活が嫌になって新幹線で都会に遊びに行ってるのかしれないしすぐに帰ってくると思われる状況でそこまで言わなくてもと俺は思っていた。

長谷川眞に怒られて橋野隆太はシュンと小さくなって椅子に座った。

授業が終わってから担任の藤井先生に生徒達はなるべく保護者に迎えに来てもらうようにと支持を出した。できない生徒は先生が家まで送ってやるといっていた。

俺は父親が在宅業だった為、父親に迎えに来て貰えるように学校の公衆電話から家に電話をかけた。








ジッジッー…。


おかしいなぁ繋がらない、というか掛かってはいるようだが変な音が聞こえるだけで呼出音がならない…。

受話器を元に戻すと入れた十円玉が返却口からひん曲がって出てきた。

なんだか凄く気味が悪い光景だった。そういえばこの十円玉は昨日、自分と沖本知恵と行方不明になった香川美幸でこっくりさんをした時に使った十円玉だと思い返した。その頃俺達はこっくりさんとかキューピットさんとかやたらと狐の霊を呼び出して遊ぶ小学生じみた事が好きだったため、普通ならそんな十円玉は当日に使ってしまわなきゃイケナイモノでも普通に財布にしまっていたようだった。

俺はその十円玉を財布にはしまわず、横にあるタウンページにこっそりはさみ他の十円玉を使って父親と連絡をとった。次はすんなり家にかかり、10分位で父親は学校についた。

橋野隆太と沖本知恵と飯島は親の都合で迎えにはこれないらしく俺は家が近所ということもあり沖本知恵を父親の車で送っていって貰うことにしてそう藤井先生にも確認をとった。

先生は一人で狼ヶ嶽村に住んでいる橋野隆太と村役場で両親ともに働いている飯島を自身の車に乘せていった。

俺と沖本知恵は俺の父親の車に乗せられ家に帰った。車の中で、父親とはまだ香川美幸は見つかっていないと聞かされ昨日は子供でも探せたが、何が原因かわからないから子供は外出禁止だと村長が決めたらしいと聞かされた。

俺はこれを聞かされた時、とっさに父親に村長が何か知っているもしくは香川美幸行方不明の問題に関わりがあるんじゃないかと思うと声に出してしまった。

だって、普通に考えて子供は危険だって言うのには早すぎるし連れ去り魔か何かが現れたって知ってない限り子供達の情報源は大事だと思うのに禁止にする理由がないからだ。

ただ俺は凄く後悔した。

その後の父親の顔は一瞬で青ざめ、ハンドルを握る腕や手はガタガタと震え何かに怯えているような気がした。触れてはいけない話題に触れたようだ。

そこから俺は口を一切開かなかった。






沖本知恵を送ってから自分の家のガレージに付けてから父親は後で話があると俺に告げた。話しなら今聞くけど?と俺が言うと後でと言ったただろうと父親が声を荒げたので俺はそそくさと車から降りて家に入った。ただ父親にはそれっきりでこの日父親を見る事はもうなかった。











       ___________狼ヶ嶽___


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