温めますか?
彼女の名前を知ったのは、カードの裏に名前が書いてあったから。
浅野さんはよく、炭酸水とプリンを買いに来るお客さんだ。
毎日のように買い物に来る。
スーツを着ているから、社会人なのだろうか。
声を掛けようか…
でも僕なんかが急に話しかけても彼女は驚くだけだろう。
そんな事が頭の中でループする。
特に弁当を並べているとき。
別に僕は、疚しい気持ちで声を掛けようかと思った訳ではありません。
常連客なので親しくなりたかっただけです。
深夜のコンビニは一人なので、話し相手がいなくて寂しくなります。
日曜日の深夜2時
トラックの運転手のおじさんと親しくなった頃、また彼女の声を聞きました。
「あの、ジャンプってまだ出てないですか?」
久しぶりに聞いた声に少しだけドキッとしました。
僕は、営業スマイルで「すみませんこの時間だとまだ届いていないんです。」
彼女は少し残念そうに「やっぱりまだでしたか」
と、笑った。
これは親しくなるチャンスだ、思いきって話しかけよう。
「僕もジャンプ読んでるんで、早く読みたいんですよ」
彼女は、笑いながら「そうなんですか!?何読んでます?」
内心予想以上の反応に、びっくりしながら会話した。
そして色々と趣味を知った。
彼女はラブコメよりもギャグやほのぼの、スポーツ系が好きなそうだ。
些細な事を知るだけで、ドキドキしてしまう僕がいる。
そして彼女は、プリンとおにぎりを持ってレジへ。
「温めますか?」