逆戻りした異世界勇者、異世界を救う
『異世界勇者して帰還したらスギ花粉が魔王より強いんだが?』
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の続編です。
花粉勇者シリーズにしようそうしよう。
アレルギーをせめて小説ではぶったたく、そんな小説。
オッス俺の名は羽田勇気。異世界で勇者やってます。
完璧で究極の勇者様には一つ弱点があった。
花粉ですよ、花粉。
あいつほんとヤバイ。世界を救ったし、じゃあ帰るぜって颯爽とかっこよく去ったのに、花粉野郎のせいで元の異世界……元の異世界? いやいや、我ながらおかしいこと言ってる。まあいいや。魔王が倒され平和がもたらされた世界に逆戻りした。
花粉が倒せないせいで、俺はこちらの世界で一生を終えることにしたんだ。女神様がそうしなさいって。まあ、花粉のない空気最高なんで、まあ……まあいっか!!
そんなわけで出戻り勇者を暖かく迎えてくれた元パーティーメンバーと、なんかとてつもなくでかいお屋敷で楽しくヤってます。いぇーい、オタク君見てるー!?
やがて俺の身体についてきた花粉が進化し、まさかのこちらの世界で花粉を振りまく魔物に変化。俺を発狂せしめたのも遠い昔……一昨年のことだ。
増殖するんだよ。わさわさってね。振りまいた花粉で一年でスギの木溢れる世界になってしまいました。魔物は倒せる。俺が倒した。根こそぎ。でも、いついてしまった杉の木。木の時点では手が出せない。森林保護法とか持ち出してくるんだよね。何それ……どこの法治国家だよ。で、やがては育ちきった中から選ばれた杉の木が魔物化する。花粉振りまくの最悪のパターン。
俺は恐怖した。
こちらの世界で無敵のヒーローやっていた俺が鼻水と涙にまみれて恐怖した。
あいつらヤベーのよ。季節関係ないわ、杉の木の成長速度異常だわ。現地民はいい木材だって喜んでる。鼻水垂らしながら。自分の不調より、加工しやすい良い木材に喜ぶって! もっと自分を大事にして!!
でもさ、人って窮地に追いやられると最高のひらめきを得られるんだよね。
作りましたよ、無花粉スギ。チートスキル【植物知識】で無花粉スギに改造してやったもんね!!
お前らは生殖せずに一代限りで終わりだ!!! ハッハッハッ!!
元の元の世界……ややこしいな。高校生やってた世界よりもスキルの効きがいいので俺の【植物知識】が火を噴きました。
あちらよりも法律がとかあんまりないしね。変な森林保護とかあるけど。
ということで平和にのんべんだらりと暮らしていたんだ。
「ねえ、ユウキ、お金がない」
「はえ……」
今日も午後の惰眠をむさぼっていた俺に、パーティーメンバーで今はお嫁ちゃんになってくれた聖職者のメリア・クリプトから突然の悲報が告げられた。
「お金?」
「そう……私の実家に頼ってもいいんだけど、結局一時的なものでしょう?」
「え……結構な額の、一生遊んで暮らせそうな額のお金を各国からいただいた気がしたんだが」
魔王討伐記念に。いや、それくらいのことしたんだよ、ホント。
「ユウキの金銭感覚がどんなものかは知らないけど、この大きなお屋敷の維持にはお金がかかるの。使用人の給金だってバカにならない」
「いやいや、それでも、俺が計算したところ、ざっと五十年は遊んで暮らせるレベルいただいたんだが?」
「けい、さん……?」
「計算。普通に計算。月々の支払い。各所への支払い。最初の数ヶ月で、だいたい算出できたし。急な出費に備えて財産の五分の一は触らないようにした上で計算して五十年。つまり、もう十年は余分にいけるくらい。おかしいな。帳簿あるかな。執事呼んでくれる?」
自室のソファから立ち上がって部屋を出ようとすると、メリアが俺を止める。
「そんなものどうでもいいの。実際お金がないのよ。再来月の給金が払えない」
顔色のおかしいメリアをじっと見つめる。
彼女は鳶色の瞳をすっと横へ反らした。
つやつやとした金の髪の毛。お肌もつるつる。赤ちゃんのほっぺみたい。今日のドレスも似合っていて、胸元の大きな宝石はお初にお目にかかります。
でけえな。
ホント、胸元の、宝石、どでかい。
「俺のさ、支出計画にさ、メリアへの小遣いも含めてたよね?」
日本の高校生なめんなよ。計算くらいできる。しかもどんぶり勘定多めに支出設定してるんだよね。普通に暮らして、お小遣いの範囲内で生活していたら、五十年余裕なんですよ?
「お前の宝飾品部屋に連れて行け」
「ダメえええええ!!!! あそこは私の大切なコレクション部屋!!」
「お前えええええ!! いくら使ったんだよて、はっ? 五十年分使ったの?」
はーーーーーーーっ!?
「解散!! 解散だ。このお屋敷手放します。俺1LDKで暮らせるもん。庭付き一戸建てで十分楽しく暮らせるもん! なんなら安宿でいい。安宿ならちょっとギルドの依頼受けたら一瞬で泊まれるくらいになるもん!! 飯だって洗濯だって自分でできるもん!! 選べっ!! 手切れ金にそのお前の胸並みにでかい宝石握りしめて実家に帰るか、俺と街中で一戸建てで住むか!!」
でかい宝石と抱えられるだけの宝飾品ぶんどって出ていったよ。
オッス俺勇者。離婚しました。
残っていた宝飾品を売り払い、雇っていた使用人たちに十分な退職金を支払う。執事さんなんか、どこまでもついて行きますよとか言ってくれたけど、老後をゆっくり過ごしてくれ。俺、勇者だからどーにでも生きられるんだ。
多少残った現金で城下町の一軒家を購入。
気楽な独身暮らしやってます。
ギルドに行ってお飾りになってた最高ランクの依頼こなしたり、たまーに緊急招集がかかるのをやっつけてたりしていたら、それでも使い切れないくらいの報酬を得られるんだよね。ぜーんぶ俺のチートスキル其の35【収納】に放り込んでます。
「たっだいまー」
「……お帰りユウキ」
離婚して一人暮らしを始めた途端、パーティーメンバーだった魔術師のプラティが転がり込んできた。
「おい、俺が依頼受けて出ていったときと変わらない服装じゃねーかよ。また風呂キャンしてんだろ-、おら、風呂に入れ。飯作るからそのまま寝ろ!!」
勝手に一部屋を占拠すると実験室に改造してしまったのだ。一緒に旅する前から研究好きで寝食を忘れるタイプだ。
日本人として風呂は欠かせない。一戸建てを購入したとき無理やり改造して風呂場を作った。水を入れて、弱めのファイアーボールをジュッとするといい湯加減になる。プラティを放り込むと、今度はキッチンで買ってきた材料を使って料理を作る。我ながら仕事のできるいい男だ。うん。
「ほら、とっとと食おうぜー」
プラティは種族エルフ。とても長命な種族で、現在二百歳オーバー。お婆ちゃんである。言うと怒られるけど。ずーっとこんな不摂生な生活をしているらしい。せめて俺がいる間はまともに飯を食ってくれ。
「ユウキのご飯は美味しい」
「だろ~。くっそ、執事についてきてもらえばよかった」
執事の給金くらいはちょっと働けば払えるのだ。俺が依頼で留守にする間、お婆ちゃんの身が心配だ。
「そうだ。最近謎の奇病が流行ってる」
「奇病?」
「街の人に相談されたけど、わからない。医者もお手上げ」
「へえ……症状は?」
「倦怠感、口の中が腫れたり、じんましんが出たり」
「……」
「引きつけを起こしてしまう人もいる」
「……」
「そんなに多いわけじゃないけど、ある程度いる。調べたら貴族にも多い症状」
俺の頭の中に、ある文字がチカチカとネオンのように光っている。
「アレルギー症状に似てる……」
調べたらまあ、一発ですよ。と言うか俺には召喚者固有スキル【鑑定】がある。
アレルギーって出たね、アレルギー!!
スギ花粉でアレルギーが出ても、どちらかというとくしゃみ鼻水が多かったせいで関連付けては考えられなかったようだ。【鑑定】のおかげで、食物アレルギーって出てきた。
以前花粉症になったとき調べた、シラカバ、ハンノキ系のアレルギーだと、リンゴやもも、サクランボなどのバラ科の食物で引き起こされたりする。
まさにそれでした。
唇の腫れなんかもある。
下唇ぽってり美人になったて喜んでたご令嬢、それ、アレルギーですからっっ!!!!
今までこの世界になかったスギ花粉というものがちょっとした事故によって流入し、この世界の人間がアレルギー体質になってしまったのだ。
墓場まで持っていかねばならない事実だ。
「ってことで、バラ科のもん全部始末してくるわ!」
サムズアップしたら、プラティに杖でぶったたかれた。
「極端が過ぎる」
正座させられました。
『勇者よ……責任はとりなさい』
「突然の女神様、お久しぶり。でもこれさ、元はと言えば女神様がこっちの世界に花粉を持ち込んだからだろ!?」
『……勇者よ……責任をとるのです』
誤魔化しきれない焦りを感じる。
だがしかし、大本を始末できない。さらに食べ物には変な改造はできないとなると、どうしたものか。
「女神様からのお告げか?」
「お告げ……お告げねえ」
『勇者よ、責任をとってこの事態をおさめるのです』
女神様の失態を取り戻せと。
さてどうするべきか。
「原因がわかったら、普通は薬を作るものだ」
そう、プラティは優秀な魔術師だ。研究が大好きな薬師でもある。
そう、そう、薬だ!
薬を作るのだ。
「抗アレルギー薬かっ!!」
俺はチートスキル其の……何か忘れたが、山ほどあるチートスキルの中の【薬学】を使ってアレルギーを緩和する薬を作った。ちょっと眠くなるのが玉に瑕だが、口の中が腫れて器官が詰まるよりずっといい。アレルギー症状の出た者は、火を通して食べるよう言ったらましになった。
不思議なくらい元の世界とこちらは似ているのだ。剣と魔法のファンタジー世界なのにね!
そして俺はまた金持ちになった。
抗アレルギー薬はそこまで高くはない。高くしなかった。高いと市民が症状緩和にと買うことができないから安い素材で作れるよう研究してもらった。そのかわり貴族には効きのいい薬を高い値で売りつけるのだ。
「執事の君が帰ってきてくれてよかった」
家の規模は変えていない。
老後を静かに過ごしていた執事は、俺の状況を聞いて、暇すぎるのだと通いで世話をしにきてくれた。
俺じゃなくてプラティの世話を。
俺は相変わらずギルドで難しすぎて塩漬けになっていた依頼を受けている。他の街や国で同じような依頼があるから受けに来てくれと連絡も来る。
俺は完璧で究極の勇者様だから助けを求められれば赴くしかないのだ。
「それじゃあ行ってくるよ、後はよろしく」
二つ目の部屋をプラティに乗っ取られたが、まあいい。
今回は三つ隣の国の依頼だ。ちゃっちゃっと行って依頼料をもらって帰ってこよう。
確かあの国の名産は美味い海産物だ。
エビとかカニっぽいヤツ。美味しいんだよね~。
なんとも楽しみだ。
今年の花粉もひどかったですねっ!
薬を夜、寝る前に飲むようにしているんですが、忘れちゃうことがたまにある。
そうするともう、朝、耳の中がかゆい。
舌がかゆくて歯でがりがりやっちまってる。
鼻が詰まっていて口呼吸になるから喉が痛い!!
まーひどいありさま。
そんなことで、今度はシラカバですよ。
北海道には杉がない!! 素敵っ! とか思っていたら、シラカバアレルギーになったらもう大変じゃん……。
一応前回の振りを二年越しに回収しておきました。
無花粉杉!! おおお……われらが救世主になるのはいつのことか!!




