選ばれる者たち
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王立剣術院の中央訓練場。
普段とは明らかに違う空気が漂っていた。
見習いだけじゃない。
教官、上級剣士、そして――
貴族。
観覧席に、明らかに“身分の違う人間”がいる。
「……マジかよ」
完全に大ごとじゃねえか。
「選抜試験って、こんな感じなのかよ……」
「そうだ」
後ろから声。
ケッヒル隊長。
「ここで選ばれた者は、特別課程に進む」
「へえ……」
つまり――
ここから先が“本物”ってことか。
「落ちれば?」
「元に戻るだけだ」
……それならまだいいか。
「ただし」
一瞬、間が空く。
「ここで目をつけられれば、その後の扱いは変わる」
あー、はい。
完全に人生イベントだこれ。
「逃げたいっすね」
「逃げるな」
即答。
ですよねー。
「エイゼンシュタイン」
名前を呼ばれる。
「第一試験に出ろ」
いきなりかよ。
「……はい」
前に出る。
視線が刺さる。
めちゃくちゃ見られてる。
やめてくれ。
ほんと。
「第一試験――対人戦」
やっぱりそれか。
「相手は――」
一瞬、間。
「レオン・ヴァルハルト」
……はい?
ざわっ――!!
観覧席まで含めて、どよめきが広がる。
「いきなりかよ!?」
「初戦で!?」
「組み合わせおかしいだろ!」
俺もそう思う。
なんで初戦であいつなんだよ。
「……マジかよ」
ため息が出る。
一方で。
レオンは静かに前に出てくる。
無駄がない。
やっぱり、違うな。
「いい機会だ」
小さく言う。
「ここで証明する」
何をだよ。
「どちらが上か」
あー、はいはい。
そういうやつね。
「始め!」
合図。
空気が変わる。
さっきまでの模擬戦とは違う。
張り詰めてる。
レオンが動く。
速い。
昨日より、明らかに速い。
「っ……!」
一撃目。
受ける。
重い。
でも――
見える。
やっぱり。
全部。
「……」
レオンの動き。
無駄がない。
綺麗だ。
正統派ってやつか。
でも――
「ちょっと、遅い」
思わず、口に出た。
「……!」
レオンの目が、わずかに揺れる。
その一瞬。
体が動く。
スッ――
最小限で踏み込む。
「なっ――」
初めて、レオンが崩れる。
でも。
決めきれない。
距離が、足りない。
「……ちっ」
舌打ち。
即座に立て直される。
さすがだ。
簡単にはいかない。
「今の……」
レオンが呟く。
「見えているのか」
「まあ、ちょっとは」
軽く返す。
でも、内心は違う。
ちょっとどころじゃない。
全部、見えてる。
「……面白い」
口元が歪む。
「ならば――」
構えが変わる。
さっきまでと違う。
空気が、重くなる。
「ここからが本番だ」
……うわ。
これ、やばいやつだ。
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