評価の変化
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翌日の訓練場。
空気が、昨日と違う。
「……おい、あいつだ」
「昨日の模擬戦の……」
「マジで強かったらしいぞ」
やめてくれ。
めちゃくちゃ見られてる。
「はぁ……」
だるい。
こういうの一番苦手なんだよ。
静かに棒振ってたいだけなのに。
「おい」
またかよ。
振り向くと、グリードがいた。
昨日の対戦相手。
「……なんすか」
「昨日は……その」
珍しく歯切れが悪い。
「悪かった」
……は?
「正直、舐めてた」
頭をかく。
「見習いだと思ってた」
いや、見習いなんだけど。
「でも、違った」
まっすぐ見てくる。
「強かった」
……なんだよそれ。
「いや、まあ……どうも」
こういうの、どう返せばいいかわかんねえ。
「またやろうぜ」
にやっと笑う。
昨日とは違う顔だ。
「ああ、まあ……機会があれば」
なんとなく、答える。
悪い気はしない。
「……へえ」
横から声。
レオン。
やっぱ来るよな。
「ずいぶんと評価が変わったな」
「……ヴァルハルト」
グリードの表情が少し締まる。
「当然だろ」
「結果を見ればな」
レオンは俺を見る。
昨日より、明らかに目が違う。
「だが――」
一歩近づく。
「それで満足するな」
いや、してないけど。
「昨日のは、あくまで“基礎的な相手”だ」
グリードがムッとする。
「言い方気をつけろよ」
「事実だ」
一切ブレない。
「お前も、こいつもな」
空気がピリつく。
……めんどくせえな、ほんと。
「エイゼンシュタイン」
名前を呼ばれる。
「はいはい」
「今日の午後、空けておけ」
「は?」
「隊長から通達が来ている」
……ああ、嫌な予感しかしねえ。
「“選抜試験”だ」
ざわっ――と、周囲がどよめく。
「は!? 早すぎだろ!」
「まだ見習いだぞ!?」
「しかもあいつ北部出身だろ!?」
うるせえな。
俺が一番びっくりしてるわ。
「なんで俺なんすか」
レオンに聞く。
「知らん」
即答。
「だが」
少しだけ口元が歪む。
「面白くなってきたな」
完全に楽しんでやがる。
「俺も出る」
やっぱりな。
「……マジかよ」
最悪だ。
めちゃくちゃ面倒な展開じゃねえか。
「逃げるなよ」
またそれか。
「いや、別に逃げないっすけど」
「ならいい」
レオンはそれだけ言って去っていく。
……ほんと自由だなあいつ。
「大丈夫か?」
グリードが聞いてくる。
「いや、全然大丈夫じゃない」
即答。
「選抜試験って、あれだろ」
「ああ」
グリードが頷く。
「実力があるやつだけが進めるやつだ」
「だよな」
めんどくささが加速する。
「でもよ」
少しだけ笑う。
「お前ならいけるだろ」
……なんだよそれ。
「期待してるぜ」
肩を叩かれる。
痛えよ。
「……はぁ」
またため息。
なんでこうなるかな。
「――呼ばれてるよ」
振り向く。
リシェル。
「隊長が探してる」
やっぱりか。
「逃げられないね」
くすっと笑う。
「……そうみたいっすね」
「でも」
少しだけ近づいてくる。
「楽しみじゃない?」
「いや、全然」
即答。
「そっか」
でも、どこか嬉しそうだ。
「私は楽しみだよ」
「なんで」
「だって」
少しだけ、目を細める。
「あなたの剣、もっと見れるでしょ?」
……あー、なるほど。
この人、そういうタイプか。
「物好きっすね」
「そうかも」
あっさり認める。
「でも」
小さく笑う。
「好きだよ、ああいうの」
……またそれかよ。
「……はぁ」
なんか調子狂うな。
「じゃあ、行ってきます」
「うん」
軽く手を振る。
「頑張って」
……頑張るかどうかは別として。
とりあえず。
「行くしかねえか」
呟いて、歩き出す。
隊長のいる方へ。
――選抜試験。
剣士への道。
その一歩。
「……めんどくせえ」
でも。
まあ、ちょっとだけ。
ほんの少しだけ。
悪くないと思った。
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