封鎖
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誰も、すぐには口を開かなかった。
クレイスだけが、欠けたページを見ている。
銀のレンズが、静かに光っていた。
やがて。
クレイスが低く呟く。
「……切り取られた時期が新しい」
レオンの目が細くなる。
「新しい?」
「紙の劣化が一致していません」
「最近、抜き取られた可能性があります」
グリードが顔をしかめた。
「いや待てよ」
「そんな簡単に持ち出せんのか?」
クレイスは静かに答える。
「通常は不可能です」
アルスの表情から、軽さが消えた。
「内部か」
ケッヒル大佐が、低く口を開く。
「この区画を知る者は限られる」
空気が変わる。
ミオが、不安そうに辺りを見る。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ……」
「なんか話、大きくなってません?」
いや、もう、それ。
ほんとヤバいだろ。
クレイスが、静かに報告書を閉じた。
乾いた音が響く。
「この件は、外部漏洩を前提に動きます」
レオンの表情が険しくなる。
「つまり」
「内部に、“白い存在”に関する記録へ接触した者がいる可能性があります」
背筋が冷えるわ。
なんなんだよ、それ。
ケッヒル大佐が、短く命じる。
「記録区画を封鎖」
「閲覧権限を再確認しろ」
「はっ」
本軍兵士たちの空気まで変わっていた。
兵たちが即座に動き出す。
さっきまでとは違う。
完全に実戦前の顔だ。
え〜っ。
こんなヤベぇところに、なんで俺がいる?
アルスが、小さく息を吐いた。
「……こりゃ洒落にならないねぇ」
グリードまで黙っている。
その時。
ケッヒル大佐の視線が、こちらへ向いた。
鋭い目。
「エイゼンシュタイン」
「……はい」
喉が乾く。
ケッヒル大佐が、低く言う。
「しばらく単独行動は控えろ」
「は?」
思わず変な声が出た。
「いや、なんで俺――」
クレイスが静かに口を挟む。
「君は、“視認後も正常を維持している”」
銀のレンズが、まっすぐこちらを向く。
「現時点で、最重要観察対象です」
「言い方を変えると、君は”保護対象”というわけです」
”保護対象”?
なんだそれ。
全然嬉しくねぇ。
リシェルの手に、ぎゅっと力が入る。
フィナまで、不安そうに俺を見上げていた。
……なんなんだよ。
なんで、俺なんだ。
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