十把一絡げの悪役令嬢もの
お約束の婚約破棄を言われる場面だけ抜き取って、そこで一発逆転するいつものパターン。
お暇ならどうぞ。
ここはどっかにあるのかも知れない、魔力とか魔法とかが存在する西洋風ファンタジーな異世界。
そんな世界のどっかにある王国。
ここには西洋中世風の世界ながら現代日本的な価値観が若干混じっていたり、品種改良なんてしてる余裕どころかそもそも品種改良なんて概念すら無かっただろう時代で現代並に美味しい食べ物があったり、国内の貴族の同年代の子女達が1箇所に集まって勉強する学校なんて江戸時代の参勤交代の様な制度を制定していたりする不思議な王国。
この王国で今、貴族の子女が集まる学校のイベントが行われていて、その中で起きた突発イベント。
「――――ティアマリー・クロノス公爵令嬢! 貴様は私、第3王子たる者の婚約者に相応しくない!」
イベントには国王陛下も御臨席を賜っていて、その場でのコレ。
はい、来ました。
これを私は知ってる。
私の前世で、女性向けの恋愛アドベンチャーゲームで人気と話題と問題になった作品の、悪役令嬢を断罪するワンシーン。
私もやってたから知ってる。
知ってるから、このティアマリー・クロノスが悪役令嬢ポジションだったのも知ってる。
そして前世の同好の士のSNSのコミュニティで、公式ファンブックに載ってたヤベー事実として事件になった裏設定も覚えてる。
この王子ルートってパッケージの中央にいたしメインヒーローっぽい立ち位置だったんだけどね?
今ネタバラシする理由にいかないから、ちょっと待っててね。
この右手に付いてる、誰にも見えない不思議な腕時計型ウェラブルデバイスを操作して……っと。
「ティアマリー・クロノス! 何をしt――――」
はい。
このウェラブルデバイスって、便利よ〜?
使える機能はこのストップウォッチ機能と、運動量や体温や心拍数等を確認する健康管理機能と、事実上の念話な電話機能位だけど。
それでストップウォッチ機能を使うと私以外の時間が止まって、私だけ自由に動けると。
それでこの王太子の懐をちょっと失敬。
…………う〜む、この細身なのにガッシリした胸板はホントにメロい。
撫で回してクンカクンカして……ってやってる場合じゃないから我慢する。
なんでこんな見た目してるのに、こんな腐った性格になっちゃったのやら。
……ごそごそ。 お、あった。
私が見つけた物は、折り畳まれた手紙。
失礼して開くと……はい。 コレね。
『王子である殿下の婚約者であるティアマリー・クロノスとの婚約を破棄し、こちらが貴国へ潜入させた令嬢と婚約して頂ければ、貴方を国王になる後ろ盾として支えます』
意訳するとこんな感じの、隣国の印が押してある王子へ宛てた手紙が。
そう、やっぱコイツはこう言う奴なのよ。
……ん? この手紙?
隣国との内通書。
王太子……つまり未来の王に成れない不満につけ込まれて、隣国の傀儡になっちゃってた証拠の品。
はい。 これが裏設定。
王子ルートのエンディングだけ後日談が無い代わりに、なんかやたらと力を入れた未来が明るい! な描写がゲームにあったから、その演出に引っかかってた同好の士がそれなりにいたのです。
その同好の士達が怪しんで語り合ったけど推測の域止まりで、後にファンブックが出て同好の士達の推測が正解だったと判明するまでは、謎とされていたと。
この判明した事実がSNSで広まると、ゲームそのものを指す言葉で売国王子が定着したほど。
それで婚約者として人となりを観察していた結果、この王子は誰も信じていない。
王子の公務で王都を離れる時に証拠は無いかとストップウォッチを使って侵入して家探ししたけど、何も見つからなかった。
隠し部屋とか隠し金庫とか探してみたけど、隠された部屋や金庫はあったけど、中身は何も無かった。
だから誰も信じていない感じからして、部屋を離れる時は懐へ忍ばせているんだろうなと。
その時にインテリアとかを戻す場所がミリ単位のちょっとズレただけで、留守中に誰かが部屋に入ったのか!? なんて荒れた時はビビった。
どれだけ調べても誰も入ってない(私は時間停止中に出入りしたので、目撃者ない)と分かると、気の所為だったのかと言いながらも、なんか余計に神経質になったし。
とにかく内通の手紙が見つかって良かった。
この手紙を開いたまま、陛下のすぐ目につく場所へ置いて。
後は私がいた場所へ戻って。 と。
「――――eいるんだ!」
いるよ。 なんだよ、eいるんだ! って。
…………あ。 何をしているんだ、ね。 ストップウォッチを使う前に何か言ってたのをつい忘れてたわ。
まあそんな事より陛下よ、陛下。
お? 早速見てくれてる。
「貴様が我が愛しの……………」
顔をしかめた。 陛下の変化に気付いた宰相が陛下へ寄ってきて、陛下が手にしている紙をサッと見て……赤くなったわね。
「だから貴様を私は…………」
宰相に呼ばれて近衛騎士、しかもかなり高位の近衛達が集まってきたわね。
「おいコラ、ティアマリー・クロノス! 聞いているのか!?」
知らねえ、聞いてねえ。
それより宰相の命令でちょっと困惑顔をしながらも、しっかり命令に従う近衛達が王子の後ろに。
「丁度いい所に来たな! 近衛、この痴れ者を捕縛せよ!」
近衛の接近に気付いた王子が調子に乗って命令を出すも、近衛達は応じず。
「どうした!? 近衛が王家の命令を聞けないのか!!?」
王子が近くまで来た近衛の顔を見て怒鳴るけど、当人達は困惑した顔のまま、王子の腕をや肩をガッチリ掴んで代表者が告げた。
「殿下を退出させよと。 陛下からのお命じです」
「…………は?」
「なので自室へお送りします」
「なんで!?」
「命令ですので」
などとちょっと悶着が起きるけど、近衛達の身体能力に敵うはずもなく連行される王子。
その様子をこの場にいる全員で静かに見送ると、陛下が静かに立ち上がって宣言した。
「本日の催しはここまでとする。 皆はこの場で起きた事は誰にも知らせぬ様に!」
この言葉に全員で膝をつき頭を垂らし、恭順の意を示す。
作中には書いてませんが王子は頭や勘が妙に良くて、時間停止で何度か王子の部屋に潜入すると、隠し場所を変えます。
それでも繰り返すと変えるだけでなく、バレないよう燃やして証拠を隠滅します。
なので王子の調査にクロノスが一回だけ使ったのは正解。
クロノスの能力からして、ここぞの一発以外に使うものではないので。
クロノスは内通の証拠が本当にあるのか、一回ちょっと見に行った以外はマジで何もしてません。
名前すら出てないヒロインちゃんに嫌がらせも何もしていません。
ただ流れに身を任せて、もしこの場面が来た時はどう動くかを考えながら、この場面が来ないよう心の中で祈りながら生活していただけです。
一応クロノスの侍女は王子へ嫁ぐ時には一緒に行って、西洋の中世でもあったとか聞く、夜伽にも参加する侍女だったとか。
それで王家の優れた血が入ったら、実家へ養子とか婚約者として引き取らせて王家の血筋とか言えなくても、自家の血統を高めるのに使えるとかシビアな考えを持ってたガンギマリ侍女だったとか。
それで王家の血が流出しても、王家は王家で何かあって王家の直接的な血が絶える事故が起きても、遠い王家の血筋の末裔として王家の血を守る打算をしていたとか。
細かい話を取っ払ったら、なんかすんごいアッサリしたモノになった。




