第二章(1):白亜の城の新たな日常と、魔王の秘密の準備
ルシアン様と私が魔界へ向かうことになり、その準備に時間が必要だったため、ゼフィルスはしばらくの間、白亜の城に滞在することになったんだ。
彼は魔物だけど、すごく礼儀正しくて、本当にいい人(魔物)。
だから、城のみんなともすぐに打ち解けたみたいで、その順応性の高さには驚かされるほどだった。
特にカスパール君の研究には興味津々で、「これは狭間で手に入れた力ですか!?」と熱心に質問したり、彼の従属魔物であるリトルたちの生態について一緒に考察したりと、共通の研究者魂で楽しそうにしていた。
みんなでご飯を食べたり、ティータイムにスイーツを囲んだりすると、ゼフィルスは目を輝かせ、「こんなに美味しいものは生まれて初めて食べました!」って感動していた。
特に、リリアさんが作った色とりどりのケーキには、感動のあまり「これは芸術品です!」とまで絶賛していたよ。
そして、何よりも「こんな自分にもったいないくらい、皆さんが良くしてくださる……」って、心底嬉しそうにしているのが印象的だったな。
その謙虚な姿勢に、私たちもますます彼を好きになったんだ。
ゼフィルスの白亜の城での日常に、新たに、ちょっぴり変わった習慣が加わった。
それは、ローゼリアちゃんが管理することになった神殿での、毎日のお祈りだった。
私が魔界へ行く準備を進めていたある日、ローゼリアちゃんが心配そうに「セラフィナちゃんとルシアン様の無事を祈りたいの……」と話してくれた。
それを聞いた私は、ピンと来た!
「それなら、いっそ神殿を作っちゃおうよ! ローゼリアちゃんが聖女として、毎日ルシアン様のご加護を祈る場所を!」
私の提案に、ローゼリアちゃんは目を輝かせ、「セラフィナちゃん! すごい!私、それやりたい!」と即答してくれた。
そして、完成した神殿の祭壇中央には、私が前世の日本から持ってきた、エリアス様の神力が込められているというルシアン様のアクリルスタンド(アクスタ)が鎮座している。
他にも、以前、神界で、佐倉花の部屋と繋がった際に、ドーンと出現したルシアン様グッズが、所狭しと並べられているんだ。
もちろん、飾る作業は全て私とローゼリアちゃんで、ノリノリでやったよ!
「このルシアン様のアクスタが置かれている場所には、ルシアン様しか開けられない特別な鍵がかかってるから安心なの!」
私は、自慢げにゼフィルスにそう説明した。
私の並々ならぬ推し愛が、こんなところにまで影響を及ぼしているとは、自分でもちょっと驚きだった。
そして毎朝、私たちはその神殿に集まり、お祈りをすることになった。
「皆さま、ルシアン様の今日一日のご活躍を祈り、世界と私たちの平和を願って、さあ、ご一緒に!」
ローゼリアちゃんの掛け声で、私とアルドロンさん、カスパール君、リル、そしてリリアさんが、アクスタに向かって真剣な顔で手を合わせる。
カスパール君はしぶしぶながらも、どこか律儀に頭を下げている。
リルは目をキラキラさせて、リリアさんは優しい微笑みを浮かべながら祈っている。
その隣で、ゼフィルスは驚愕の表情で固まっていた。
『あ、あの……セラフィナ様……これは……』
彼はアクスタを凝視しながら、さらに言葉を続けた。
『ルシアン様そのものだ……とてつもない力を感じる……!』
まるで本物のルシアン様がいるかのように震えていた。
ゼフィルスは、この神殿がよほど気に入ったのか、毎日暇さえあれば見学に来て、アクスタやグッズを食い入るように眺めていたよ。
そして、そんな私たちの様子を、ルシアン様はいつも少し離れた場所から、少し恥ずかしそうに見守っていた。
頬を掻いたり、視線を逸らしたりする姿は、いつもの威厳ある魔王様からは想像もできないほど人間らしくて!
それがまた尊い!