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転生したら推しが魔王様になってた件~②魔界に行っても推し活は健在です!  作者: 銀文鳥


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第十五章(3):永遠の誓いと、漆黒の指輪


「はいっ……!喜んでっ……!」


私は、ルシアン様の胸の中で、何度も何度も頷いた。


この瞬間のために、私は転生してきたのだ。


彼の腕の中で、私は人生で最高の幸福を感じていた。





しばらくの間、ルシアン様は私を優しく抱きしめてくれた。


彼の腕の中は、何よりも温かく、安心できる場所だった。


やがて、私はゆっくりと顔を上げ、彼の蒼い瞳を見つめる。


私の目からは、まだ涙が止まらない。



「ルシアン様……本当に、本当にありがとうございます……私を、選んでくれて…」



「セラフィナ。お前だからだ」



ルシアン様は、私の頬にそっと手を添え、優しく涙を拭ってくれた。


その指先が触れるたびに、私の心臓は甘く締め付けられる。





「さて、指輪の話だが……」



ルシアン様は、いつもの穏やかな表情に戻り、「お前が前に言っていた通り、石言葉が良いものを、お前に選んでもらいたいと思っている」



彼の言葉に、私はハッと顔を上げた。



そうだ、指輪のこと。



もちろん、彼がくれるものなら何でも嬉しい。


でも、せっかくなら、私が本当に欲しいものを伝えたい。


私の脳裏には、ある一つの輝きが浮かんでいた。



私の視線は、自然と自分の右手薬指へと向けられた。


そこには、魔界に来る直前にルシアン様が贈ってくれた、漆黒の輝きを放つ指輪が嵌められている。


まるでブラックダイヤモンドのように神秘的なその石は、私の魔界遠征のお守りでもあった。



「ルシアン様……」



私は、その指輪をそっと撫でながら、震える声で言った。



「もし、もしよろしければ……今、私が右手の薬指にはめている、この指輪が良いです」



私の言葉に、ルシアン様はわずかに目を見開いた。


彼の瞳に、驚きと、そして微かな困惑の色が浮かぶ。



「この指輪をか?」



ルシアン様は、私の指輪を見つめ、再び私の顔を見た。



「本当に良いのか、セラフィナ?これは、お守りのつもりで贈ったものだ。婚約指輪には、もっと美しく、輝かしい石を選んでやりたいと思うが……」


彼の心配そうな表情に、私の心は温かくなった。


彼は、私のことを本当に大切に思ってくれている。


だからこそ、最高のものを与えたいと思ってくれているのだ。




でも、私にとっての「最高」は、そこにあった。




この指輪は、ルシアン様が私を魔界へ送り出す際に贈ってくれた、初めての贈り物。


私を想い、守ろうとしてくれた、その温かい心が詰まっている。



「はい!本当に、これがいいです!」



私は、ルシアン様の目をまっすぐに見つめ、強く頷いた。



「この指輪の石は、まるでブラックダイヤモンドみたいで……『成功』『不屈』『超越』っていう石言葉があると言いましたよね?魔界遠征にはぴったりのお守りだって。だから、私はこの石に、ルシアン様の強さ、そして、闇の力さえも受け入れて、世界を守ろうとしたルシアン様の優しさが、込められているって思うんです」



私の言葉に、ルシアン様の表情が、少しずつ和らいでいく。



「それに……私、ルシアン様のファンクラブの初代会長を務めさせていただくことになりましたから!その記念に、ルシアン様の象徴とも言える、この指輪を婚約指輪として身につけて、常にルシアン様を感じていたいんです!」



半分は冗談めかして言ったつもりだったが、私の本心でもあった。


ルシアン様の象徴を身につけるなんて、私にとって最高の誇りだ。


ルシアン様は、私の言葉を聞いて、小さく息を漏らした。


そして、ふわりと、とても優しい笑みを浮かべた。



「……ふむ。なるほど。お前らしい理由だな」



彼は、もう一度、私の指にはめられた指輪を見つめた。


その瞳には、私の言葉を受けて、新たな光が灯ったようだった。



「わかった、セラフィナ。お前の願いを叶えよう。この指輪を、お前との婚約指輪としよう」


「ありがとうございます!」


私は、嬉しさのあまり、思わずルシアン様に抱きついた。



「そして、セラフィナ……」



ルシアン様は、私の右手薬指にはめられた指輪をそっと撫でた。



「お前の前世の日本では、婚約指輪や結婚指輪は、左手の薬指にはめるんだったな」


私の記憶を、彼はしっかりと覚えていてくれた。



私は驚いて顔を上げると、ルシアン様は優しく微笑んでいた。



「そうですね……!」



私の言葉を待たずに、ルシアン様は私の右手の指輪を優しく外した。



そして、私の左手の薬指に、ゆっくりと、その漆黒の指輪を嵌めてくれた。


指輪が吸い付くように私の指に馴染む。



「これは、お前と俺の、婚約の証だ。そして、いつか結婚したら……結婚指輪を、お前の左手の薬指にはめてやりたい」



ルシアン様はそう言って、私の頬に優しく口付けた。


その温かい感触が、私の心に深く刻まれた。

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