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転生したら推しが魔王様になってた件~②魔界に行っても推し活は健在です!  作者: 銀文鳥


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第十四章(2):魔王と、魔界の未来


「もう、俺は魔王ではない」



ルシアン様が静かにそう告げた瞬間、アリーナを埋め尽くす魔族たちの間に、張り詰めた、信じられないほどの静寂が訪れる。


まるで時が止まったかのようだ。


そして、その静けさはあっという間に、悲鳴と懇願の渦へと変わっていく。



「ルシアン様!それでは!」


「我らはルシアン様なくして……!」


「どうか、お考え直しください!」



ルシアン様を慕う、魔族たちの悲痛な声がアリーナに木霊する。



彼らが、長きにわたり魔界を統治し、その絶大な力と慈悲で導いてきたルシアン様が魔王の座を退くことを、決して受け入れられないのは当然だろう。


彼の存在は、彼らにとって絶対的なものだったのだから。



その時、ルシアン様が静かに一歩前へ踏み出す。


「静まれ。お前たちの気持ちは理解できる。しかし、俺の決意は揺るがぬものだ。だが、決して見捨てるわけではない」


ルシアン様の凛とした言葉に、魔族たちは再び静まり返る。



ルシアン様は、ゼフィルスをまっすぐに見つめ、その肩に手を置く。



「これより、ゼフィルスが魔王となる。彼の真摯な努力、魔界への深い愛情、そして何よりも、お前たち民の未来を真剣に考えるその心が、次期魔王にふさわしいと俺は判断した。彼は、お前たちが望む未来を築き、この魔界をより良い場所へと導いてくれるだろう」



しかし、ゼフィルスは恐る恐る、それでも真剣な眼差しでルシアン様を見上げている。



「ルシアン様……ルシアン様!魔王の座はルシアン様しか考えられません!」



ルシアン様の蒼い瞳には、魔王の座をゼフィルスに譲るという彼の並々ならぬ決意が見える。





その時、私は閃いたのだ。





「あの、ルシアン様……私の前世の日本には、『代理』とか『副』っていう役職があったんです」





私は、アリーナの静寂の中で、はっきりとその言葉を口にした。



ルシアン様がわずかに眉をひそめ、見慣れない言葉に戸惑いながらも、その意味を測るように静かに耳を傾けている。


(きっと、この提案ならルシアン様も、そして魔界の民も納得してくれるはず!)


私の言葉が、彼の中に新たな選択肢を生み出すきっかけになるだろうと、私は確信し、続けた。



「例えば、社長さんの下に『副社長さん』や『社長代理さん』がいる、という感じです!社長さんは会社の一番偉い人で、会社の大きな方向性を決めたり、大切な時に顔を出したりします。でも、普段の細かいお仕事や、社長さんがちょっとお休みする時なんかは、副社長さんや社長代理さんが代わりにお仕事をするんです!そうすれば、社長さんはもっと大事なことに集中できますし、会社もスムーズに回ります!」



私の言葉に、ゼフィルスはハッとした表情を浮かべ、ルシアン様に向き直った。


彼の灰色の瞳に、希望の光が差す。その顔には、長年の忠誠心と、ルシアン様への絶対的な信頼があるからこその、重い覚悟が浮かび上がっていた。



「ルシアン様!セラフィナ様の言う通りでございます!まさに、それこそが我々がルシアン様にお願いしたいことです!どうか、私を『魔王代理』もしくは『副魔王』として、魔界の未来をお任せいただけませんでようか?あくまでも、ルシアン様は魔王でいていただき、日ごろは私が魔王代理として魔界を統治いたしますが、いざという時には、魔界のあらゆる事象に介入し、守護していただきたいのです!」



その真剣な願いに、ルシアン様は静かに目を閉じた。



ルシアン様は、ゼフィルスの必死な訴えを、一言一句、慈愛に満ちた表情で受け止めていた。


彼の視線は、ゼフィルスの顔から、アリーナを埋め尽くす民衆へとゆっくりと移る。


誰もが固唾を呑み、ルシアン様の次の言葉を待っていた。


深い沈黙が、アリーナに満ちる。


その沈黙の中で、ルシアン様は魔界の未来、そしてゼフィルスの可能性を、静かに見定めているようだった。



彼の蒼い瞳が再び開かれた時、そこには、魔界の民への深い情愛と、新たな未来への決意が宿っている。




「……良いだろう」




ルシアン様がその言葉を口にすると、アリーナ全体が歓喜に沸き返る。



そして、ゼフィルスは感極まった声で、新たな役職名を高らかに告げた。


「これより、ルシアン様は引き続き『魔王』として、魔界の未来を導き、その根幹を守り続けることを、この場で誓ってくださった!皆の者!魔王ルシアン様に、最大級の賛辞を!」



「魔王ルシアン」



それは、魔界の民が彼に捧げる、最高の名誉と信頼の証だ。


観客からは再び、嵐のような歓声と拍手が沸き起こり、ルシアン様もまた、その温かい拍手を静かに受け止めている。


彼の傍らで、私も安堵と喜びで胸がいっぱいになる。

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