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転生したら推しが魔王様になってた件~②魔界に行っても推し活は健在です!  作者: 銀文鳥


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第十二章(2)決勝戦:推し活の力


「決勝戦!セラフィナ選手、カイ選手、ご入場ください!」



アナウンスと共に、カイが対面に現れる。


彼の金色の瞳は、昨日と同じように冷たい光を宿していたが、どこか深い闇を湛えているようにも見えた。





私はアリーナの中央に立った。


まだ頬の熱が引かない。



ルシアン様のキスが、まるで全身を駆け巡る甘い毒のように、私の思考を支配していた。


口元が緩みっぱなしで、へらへらと笑ってしまっている自覚がある。





「なんだ、お前、へらへらしてやがって」





カイの冷たい声が、私の耳に届いた。


彼の金色の瞳が、不機嫌そうに私を睨んでいる。



ハッと我に返るが、一度緩んだ表情はなかなか元に戻らない。



(いけない!これは決勝戦。ルシアン様のために、私は全力で戦わなければならないんだ!)


頬の熱を、ぐっと気合で抑え込む。


全身に冷気を走らせ、意識を研ぎ澄ませた。





「始め!」





審判の合図と共に、決勝戦の火蓋が切られた。





私は聖剣を高く掲げた。



光が剣身に集束し、まるで太陽の破片を宿したかのように輝きを放つ。


そして、渾身の一撃を、閃光と共にカイへと放った。



聖剣から放たれた光の波動は、アリーナの床を焦がしながら、カイへと一直線に突き進む。


カイは微動だにせず、漆黒の魔法陣を瞬時に展開し、私の光の斬撃を完全に吸収した。



まるで闇が光を飲み込むかのように。





カイは次に、黒曜石の鎖を幾重にも生成し、私を囲むように放射状に放った。


鎖は生き物のようにうねり、私の回避経路を塞ぐ。



私は聖剣で鎖を打ち払い、間一髪でその拘束から逃れるが、鎖の勢いは止まらない。


アリーナの床に激しく叩きつけられ、轟音を響かせながら、さらに私を追い詰めてくる。



私は光の盾を生成し、鎖の猛攻を防ぐ。


盾に打ち付けられる鎖の衝撃が、腕にビリビリと響く。



カイは容赦なく、さらに強力な闇の魔弾を放ち、私の盾を打ち砕こうとする。



私は盾を構えながら、聖剣で反撃の光弾を放つが、カイは漆黒の魔法陣で全てを無効化していく。


互いの攻撃がぶつかり合うたびに、火花が散り、衝撃波がアリーナを揺らす。





観客の息を呑む音が、ひしひしと伝わってくる。


一歩も引かない、まさに互角の戦い。





戦いの最中、カイの表情が、一瞬、揺らいだように見えた。



その時、私の目に映ったのは、紛れもなくカスパール君の面影だった。


あの、ルシアン様を慕い、いつも影から見つめていた、不器用で優しい友の姿。



「カスパール君!」



思わず、私の口からその名前がこぼれた。





カイの動きがぴたりと止まる。



その金色の瞳に、戸惑いの色が浮かんでいた。


まるで、彼自身がその名前に反応しているかのように。



その隙を見逃さず、私はさらに攻め立てる。



これは、ルシアン様のために、カスパール君のために、そして私自身のために、絶対に負けられない戦い。





「ルシアン様はね、いつも冷静で、どんな時も皆のことを考えていらっしゃるの!その広い心と、慈愛に満ちたお姿は、まさに魔王の鑑!拝むしかない!もう、尊すぎて直視できないレベル!」



聖剣から放つ光の斬撃と共に、私はルシアン様の素敵なところを叫びながら攻撃する。


私の愛が、聖なる光となってカイを襲う。





「ルシアン様は、どんなに強い敵にも臆することなく、真っ向から立ち向かう勇気を持っているの!あの凛々しいお姿を見れば、誰もがひれ伏すわ!私なんて、もう、キュン死寸前よ!かっこよすぎて心臓がもたない!」





「……別に、うるせえ、知ってる」





カイが小さく呟いた。





ツンデレ!





と私の脳内でアラートが鳴る。



「ルシアン様は、誰よりも優しくて、困っている人がいたら、必ず手を差し伸べてくださるの!その温かいお心に、どれだけの人が救われてきたか!私もその一人!ルシアン様しか勝たん!もう、ルシアン様のために生きてるって言っても過言じゃない!」





貴賓席のルシアン様は、私のあまりにも熱烈な「推し活」の叫びに、静かに目元を覆い、深い息をついていた。


その耳の先は、わずかに赤く染まっている。



隣に座るゼフィルスは、静かに微笑み、小さく頷いている。


「その通りでございます」と。





「うるせえ!知ってるに決まってんだろ!いちいち言われなくてもわかってる!ルシアンは、誰よりも強くて、誰よりも俺を理解してくれた!だから、俺は……!」



カイはそう叫び、再び私へと攻撃を仕掛けてきた。


その瞳の奥には、冷たさだけでなく、強い情熱が宿っている。


漆黒の魔導が、今まで以上の力を放つ。





「俺は、どうしてもルシアンと戦いたいんだ!」





カイの声が、アリーナに響き渡る。



彼の動きはさらに激しくなり、魔導の威力も増していた。


彼の攻撃は、私の聖なる光を打ち破り、私を追い詰める。





「ずっと、ルシアンを探してた!ルシアンに追いつきたくて、頑張ってきたんだ!」





カイの言葉が、私の心に深く響く。


それは、紛れもないカスパール君の魂の叫びだった。



彼のルシアン様への執着は、彼自身の存在意義そのものなのだ。


彼がどれだけルシアン様を想い、その背中を追い続けてきたか。


私には痛いほど理解できた。



(カスパール君の願いを、このままただ打ち砕いてしまっていいのだろうか?)


ルシアン様が彼を理解し、救うことを望んでいると知っているからこそ、この場で彼の唯一の願いを絶ってしまうことが、どうしても正しいとは思えなかった。





私は聖剣を下ろし、大きく息を吸い込んだ。




アリーナの熱気も、私の耳には届かなくなっていた。





「……いいよ。カスパール君」





私の声が、アリーナに静かに響き渡る。


その声は、驚くほど穏やかだった。



私は手にしていた聖剣を、ゆっくりと、しかし確かな動作で床に置いた。


カラン、と、聖剣が石の床に触れる音が、静まり返ったアリーナに響き渡る。





「そんなに言うなら……ルシアン様と戦いなよ」





私は、試合を放棄した。





アリーナは、私の突然の行動に、静まり返っていた。


ルシアン様も、きっと驚いていることだろう。



しかし、これでいいのだ。


カスパール君の、あの純粋な願いを、私は踏みにじることはできない。



彼のルシアン様への想いは、私には理解できる。


だからこそ、私はこの選択をした。

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