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転生したら推しが魔王様になってた件~②魔界に行っても推し活は健在です!  作者: 銀文鳥


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第十二章(1):魔王の決意、推しのキス

準決勝での激闘を終え、私は自室に戻っていた。



決勝を翌日に控え、ルシアン様が私の部屋を訪れてくれた。



「セラフィナ、今日の試合は素晴らしかった。」



ルシアン様はそう言って私の頭を優しく撫でた。


彼の温かい手に触れると、張り詰めていた心がゆっくりと解けていくのを感じる。


安堵と喜びが込み上げ、まるで心に光が差し込んだようだ。



「特に、あの聖剣の輝きと、お前の指輪の共鳴……。あれは、お前の揺るぎない想いと、俺との絆が力を増幅させた証だろう。並大抵のことではない。」



ルシアン様は感嘆するようにそう付け加えると、微かに口元を緩めた。



「……それにしても、イザベルの声はよく聞こえたな。全く、俺がお前の『推し』だと魔界でも広まってしまうではないか」


そう言ってルシアン様は私の顔を覗き込み、楽しげな笑みを浮かべた。



その言葉に、私の顔はカッと熱くなった。


それでも、彼の楽しそうな表情を見れば、イザベルの狙い通りだと苦笑が漏れた。





ふと、真剣な表情に戻る。


「ところで、カイ。…彼の力は想像以上でした。彼はカスパール君と同じ系統の魔導を使っていました。もし彼が優勝したら……カイが魔王になってしまうのでしょうか?」


私の声には、隠しきれない不安の色が滲んでいた。



カイのあの金色の瞳に宿る冷たい光と、カスパール君そっくりの魔導を操る姿が脳裏に焼き付いている。


もし彼が魔王になったら、ルシアン様の目指す魔界の未来はどうなってしまうのだろう。



ルシアン様は静かに首を横に振った。


「カイは、カスパールの『負の感情』が生み出した存在。彼は、魔界の統治に興味はないだろう。彼の目的は、ただ俺への執着……俺と戦うことだけだ」


彼の言葉に、胸の奥が締め付けられる。



カスパール君の負の感情。


そして、その感情がルシアン様への執着となって、カイを生み出してしまったという事実。


それは、ルシアン様にとっても、深い悲しみと苦悩を伴うものなのだろう。



その重みに、私まで心が痛む。


「でも、もしカイが優勝してしまったら、ルシアン様はどうなさるのですか?」


私が尋ねると、ルシアン様は私の目をまっすぐに見つめ、静かに答えた。



「その時は、俺が彼を止めるまでだ。しかし、まずはお前が彼と向き合う必要がある。セラフィナならできる」


ルシアン様の言葉は、まるで魔法のように私の心に力を与えてくれた。



そうだ、私はルシアン様の隣に立つ者として、負けるわけにはいかない。


彼の隣にふさわしい、強く優しい私でいなければ。





そして迎えた決勝当日。



アリーナへと向かう通路で、ルシアン様が待っていてくれた。


通路の先で彼の姿を見つけた瞬間、胸が高鳴り、足が自然と早くなる。



「セラフィナ。頑張れ」



そう言って、ルシアン様は私の頬にそっと手を伸ばした。


彼の指先が私の頬に触れる。



そして、少し躊躇うように、彼の蒼い瞳が私を見つめた。



それから、ひんやりとした彼の唇が、私の頬にそっと触れる。



その瞬間、私の顔はカッと熱くなり、全身の血が沸騰したかのように真っ赤になった。


ルシアン様の唇の感触が、頬に残り、心臓が大きく高鳴る。



まるで時が止まったかのように、その一瞬が永遠に感じられた。





「……こんな感じで、いいのか?」





ルシアン様の声は、普段の落ち着きをなくし、ほんの少し震えているように聞こえた。



彼の頬にも、微かに朱が差しているのが分かる。


彼自身も、初めてのことで照れているのだ。



その珍しいお姿に、私の胸はさらに高鳴った。





(ひええええええええええええ!! ルシアン様が、ルシアン様が私にキスしてくださったあぁぁぁ!!!!!しかも、照れてらっしゃる……!尊い!尊すぎる!!)





脳内で大音量のファンファーレが鳴り響き、私は完全に「推しフィーバー」状態に突入した。



頬に触れたルシアン様の唇の感触が、あまりにも尊すぎて、身体が痺れる。



視界がルシアン様の色に染まり、他の全てが霞んで見えた。


この一瞬で、私の胸は満たされた。



ルシアン様が私を信じ、応援してくれている。


それだけで、私はどんな困難も乗り越えられる。



どんな相手が相手でも、彼のために、彼の隣に立つために、私は戦い抜くことができる。



私の「推し」が、私を信じてくれたのだ!



もう、この喜びだけで、今日の試合はどうでもいい!



いや、だめだ!


ルシアン様のためにも勝たねば!





「では、アリーナで待っている」


ルシアン様はそう言って、優しく私の頭を撫でると、貴賓席へと向かう通路の奥へ姿を消した。


私は、興奮冷めやらぬまま、深呼吸をして気持ちを切り替える。



私はアリーナの中央へと足を踏み出した。


私の心は、ルシアン様への愛と、勝利への確固たる決意で満ちていた……はずだった。

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