第七章(2):魔闘会本選、開幕!
天下一品魔闘会の予選が終わり、いよいよ本選の組み合わせが決まる。
トーナメント方式で、選手たちの運命はくじ引きによって決定されるのだ。
アリーナの巨大なスクリーンに、選手の名前が次々と表示されていく。
私の胸は期待と緊張で高鳴っていた。
「セラフィ―……対……ロックゴーレム!」
アナウンスされた瞬間、私の視線はスクリーンに釘付けになった。
なんと、私の試合相手は、あの会議室でルシアン様に歯向かった岩の魔物だった!
彼の名は、グラニート。
ゴツゴツとした岩のような体躯は、まるで巨大な彫刻のよう。
全身を覆う灰色の岩肌は、まるで装甲のように厚く、鋭い眼光は獲物を捕らえる猛禽のようだ。
見るからに手強そうな相手だ。
これは、予選よりもずっと厳しい戦いになりそうだけど、燃えてくる!
他の組み合わせも表示されていく中で、例のイケメン魔物、名前は『カイ』だ。
彼の相手は、狡猾な策略で知られる影魔、アビスらしい。
そして、あの魔界一綺麗なサキュバスの女、イザベルも、無事に予選を通過していた。
そして、スクリーンに最後の、そして最も注目すべき組み合わせが映し出された。
「さあ!……この男の出場を待ち望んでいた方も多いでしょう!魔界に多大なる貢献を果たし、その実力は折り紙付き!特別枠での本戦出場、我らが魔王ルシアン様の付き人、ゼフィルス選手! そして、彼の対戦相手は、魔界の四大貴族の一角を占める、冷徹なる氷の魔物、グレイシア選手です!」
アナウンサーの興奮した声が会場に響き渡る。
ゼフィルスの名前を見た瞬間、私は思わず息を呑んだ。
ゼフィルスが出るなんて、今まで知らなかったから心臓が飛び出るかと思うくらい驚いた。
会場からは驚きと期待のざわめきが起こった。
トーナメント表が完全に決定し、会場のボルテージが最高潮に達したその時、重厚なファンファーレが鳴り響いた。
その音は、アリーナの床を震わせ、観客の心臓に直接響き渡るようだ。
「魔王ルシアン様、ご入場!」
高らかに告げられたアナウンスと共に、アリーナの最上階に設けられた貴賓席に、ルシアン様が姿を現した。
漆黒のマントを翻し、黒曜石のような角が、会場の照明に妖しく光る。
その重厚な雰囲気に、会場中の魔物たちが一斉にひれ伏した。
まるで、巨大な波が押し寄せるかのように、次々と頭を下げていく。
その光景は、圧巻の一言に尽きた。
私も他の魔物たちと同じように、深々と頭を下げた。
魔王としてのルシアン様の威厳は、想像を遥かに超えていた。
彼の存在そのものが、この魔界の頂点であることを示している。
その中で、一人だけ腕を組んだまま、微動だにしない魔物がいた。
カイだ。
彼の表情は読み取れないが、その態度からは、ルシアン様への忠誠心など微塵も感じられない。
むしろ、挑むような、あるいは冷淡な視線をルシアン様に向けているように見えた。
私も他の魔物たちの様子を観察していた。
皆、ルシアン様への畏怖と忠誠心、そしてわずかな恐れが混じり合った視線を向けている。
中には、羨望や嫉妬の眼差しを向ける魔物もいる。
ルシアン様は、彼らのそうした様子を全て見極めているのだろう。
彼の蒼い瞳は、全てを見通すかのように静かに光っていた。
ふと、ルシアン様の視線が、私の方を向いた気がした。
マスクで顔を隠しているけれど、ルシアン様には私がここにいることが分かっているのだろう。
彼の蒼い瞳が、私に語りかけているようだ。
「頑張れ、でも無理するな」と。
その視線に、私の胸の奥がじんわりと温かくなった。
まるで、彼の魔力が私をそっと包み込んでくれるかのようだ。
盛大に開会式が始まった。
魔界の未来をかけた熱い戦いが、今、幕を開けようとしている。
会場全体が、興奮と期待の渦に巻き込まれていく。




