第七章(1):天下一品魔闘会、予選開始!
サキュバス、イザベルの言葉に、心はズタズタだったけれど、ルシアン様には悟られたくなくて、精一杯の笑顔を作った。
「大丈夫です、ルシアン様!なんでもありませんよ!」
私の震える声に、ルシアン様は眉をひそめ、何か言いたげな顔をしたが、私がそう言うならと、それ以上は何も聞かずに引き下がってくれた。
彼の心配そうな視線が、私の背中に突き刺さるようだ。
***
そして、いよいよ天下一品魔闘会の予選が開催された!
魔王城の敷地内に設営された大規模な会場は、熱気に包まれている。
黒曜石のような光沢を持つ広大なアリーナが中心にあり、その周囲には観客席が幾重にも連なっている。
事前の筆記試験をパスした、選りすぐりの魔物たちが闘志を燃やして集まっているのが見て取れる。
私もその中に身を置いていた。
そばには、ゼフィルスが付き添ってくれていた。
「セラフィナ様、お気をつけて」
ゼフィルスはいつも冷静だけど、その言葉には深い心配が込められているのが分かった。
さすがにルシアン様がこの会場にいると目立つだろうし、万が一、敵対勢力に狙われても困る。
それに、あのイザベルの話が頭に残っていて、正直なところ、ほんの少しだけルシアン様と距離を置きたい気持ちもあった。
「ルシアン様は来なくていいですよ。私が頑張ったところを、後でゆっくり報告しますから!」
そう言って、ルシアン様を説得したのだ。
私は念のため、顔を隠すために黒いマスクを着用していたので、人間だとはバレていないようだ。
出場名は『セラフィ―』と名乗っている。
予選では、5名ほどのグループに分けられ、その中でバトルロイヤル形式で戦う。
各グループで勝ち残った者だけが、本選に出場できる仕組みだ。
私の戦うグループには、蜥蜴のような皮膚を持つ魔物、巨大な棍棒を振り回す鬼のような魔物、影のように素早い動きをする魔物など、多種多様な魔物がいた。
「始め!」
審判の魔物の声が響き渡ると同時に、闘いの火蓋が切って落とされた。
私は久しぶりに、のびのびと剣を振るう!
勇者として培ってきた身体能力と剣技が、魔界の舞台で存分に発揮される。
まず、眼前にいたのは、鋭い爪と牙を持つ獣型の魔物。
低い唸り声を上げながら、私に飛びかかってきた。
私は冷静にそれをかわし、一瞬の隙を突いて剣を振るう。
キラリと光る聖剣が、魔物の側腹を浅く切り裂く。
怯んだ隙に、素早く背後に回り込み、剣の柄で首元を叩きつける。
魔物はよろめき、その巨体が鈍い音を立てて倒れた。
次に、全身を黒い影で覆ったような魔物が、私の足元から這い上がってきた。
その動きは異常なほど素早く、捉えどころがない。
しかし、私は冷静だ。
影が伸びる瞬間に、聖剣に魔力を集中させ、一閃!
聖なる光が影を切り裂き、魔物は悲鳴を上げて霧散した。
そして、最後に残ったのは、巨大な棍棒を両手に持つ鬼のような魔物だった。
その棍棒は、振り下ろされるたびに地面を揺らし、恐ろしい風圧を巻き起こす。
私は彼の攻撃を紙一重で避け続け、その動きを冷静に分析した。
重い武器を振り回す分、動きに大きな隙がある。
魔物が棍棒を大きく振り上げたその瞬間、私は地を蹴り、一気に距離を詰めた。
聖剣に輝く赤い宝珠が、熱を帯びて光を放つ。
力が増幅し、全身に漲る。
その力を乗せて、私は渾身の一撃を鬼の魔物の眉間に叩き込んだ。
ゴオォォォォン!!
まるで雷鳴が轟いたかのような音が響き渡り、鬼の魔物は一瞬で吹き飛び、アリーナの壁に叩きつけられた。
全身から力が抜けていくような、心地よい疲労感。
私は剣を肩に担ぎ、勝利を確信する。
「セラフィー強い!さすが!」
観客席からゼフィルスの感激した声が聞こえてくる。
そうでしょう、そうでしょう!
だって私、勇者だからね!
久々の実戦に、血が騒ぐ。
身体中を駆け巡るアドレナリンが心地よい。
あっという間に、私のグループの魔物たちは次々と倒れていった。
そして、最後に残ったのは、私一人。
「勝者、セラフィ―!」
審判の声が響き渡り、会場がどよめく。
人間界とは違う、魔物の力強さに少し圧倒されつつも、私自身の成長も感じることができた。
他のグループの予選も気になって見てみると、なんと例のイケメン俳優みたいな魔物が、圧倒的な力で勝ち上がっていた。
彼は余裕綽々といった表情で、倒れた魔物たちを見下ろしている。
彼の力、やはり只者ではない。
本戦で彼と当たる可能性もある。気を引き締めなければ。




