おっさんと別部屋に2人。何も怒らないはずがなく。
「孫七郎殿! どうなさったのだ!? 軍議の途中より何かおかしかったぞ」
別部屋に入るやいなや怒られた。
おかしいのはなんもかんもだよ!
さっきの部屋を退出したあと別部屋にスキン氏と2人きりにさせられた。
それまでに通った廊下や縁側から察するにここは日本の屋敷か、もしくは城だろうか?
「あの、すみません。私誰ですか?」
「は? 正気でござるか?」
「鏡とかありますか?」
「もしかして記憶をなくされておるのか?」
ワイはうなずいた。
「おお、なんということだ。おい、鏡を出せ」
「はっ」
スキン氏は部屋の外に控えていた若者に命じて部屋の中の荷物箱から鏡を取り出させた。歴史の教科書で見る銅鏡のような金属の円鏡だった。
ようなというかもしかしてこれを銅鏡っていうの?
「何か思い出すやもしれん。顔をごらんなされ」
スキン氏が差し出した鏡にはワイをAIイラストの性転換フィルターで変換したような顔の男が映っていた。そこそこイケメンだった。顔を触ってみる。
マジだわ。
ここに来てワイは初めて自分の身なりに目をやる。おっさんたちと何も変わらない。なんかの和服に、頭にヒラヒラ帽。
そして股間に手をやる。
なんか付いてた。
これ夢なのかな。現実かわからないのに現実感はある。もうよくわかんない。寝よ。というか起きよ、夢から。
ふと目を開けるとそこは自分の部屋だった。
パソコンを前に座ったまま居眠りしてたんだろうか? いやなんかすごい変わった夢見たな。
パソコンに目をやるとGPTのセッションが開かれていて
ChatGPT「GPTプログラム起動します」
とあった。何だろ、これ?
そういやさ、さっきの夢、戦国時代にタイムスリップしたぽげだったよね。脳が見せた適当な夢なのか、現実とも一致してる夢なのか調べてみる。まず筑前殿から。あの人達ってもしかして……。
マジだったわ。
筑前殿→秀吉
紀伊守→池田恒興
って出てきたわ。夢ってさ、自分の脳内で作るものだよね? じゃあ妄想はあっても知らない事実が出てくることなんてないよね。筑前も紀伊も知らなかったもん。いや仮に聞いたことあって意識下に記憶されてたとしよう。でも絶対に信吉と孫七郎は聞いたことない。
信吉と孫七郎は豊臣秀次のことらしい。なんで別々の名前で呼ばれてんだよ、まぎらわしい。
そんであの場はおそらく小牧長久手の戦いでの羽柴方のどっかの城。別働隊派遣の会議だろうか。
たしかにあの夢の直前にその話題をGPTとしていたからそんな夢を見やすくなる可能性はあるけど、なんで知らなかった呼び名まで夢で出てくるんだろう?
そういや夢見る前はたしかマッマに夕飯で呼ばれてブドウでスキップして階段を1階に向かってダイブして。
それから……。
それからどうして今ここで寝てたんだろう?
はて?
ワイはドアの方へ振り向く。立ち上がって近づいてドアノブに手をかける。