誰ですのん?
4115日後に死ぬ秀次
「信吉よ、お主にはまだ早かろうて」
ふと気がつくと目の前でおっさんが話していた。
「まだ齢17のそなたに2万の命が預かれるか? しかも初陣からまだ毛が生えた程度であろう?」
おっさんは続ける。
いやあんただれ?
板張りの床の和室になんか和風の服着たのおっさん。頭にはヒラヒラした帽子。数メートルの距離からこっちに向かって話してる。誰に話してんの?
「恐れながら申し上げる。孫七郎殿は昨年の戦にてすでに2万の兵を率いたと聞いておる。命を預かれる器にござる」
真横から声がしてビクッと左を振り向けばまた別のおっさん。
いや近いな。
おっさんの横顔からワイの顔まで1メートルもない。
また古風な服着て、頭はスキンヘッド。
「紀伊守殿。信吉を立ててくれるのはありがたいが信吉自身に問うてみたい」
最初のおっさんが再び話す。
あ、このおっさんズの服、見覚えあるわ。大河ドラマで見たことある。鎧脱いだらこんな服来てたわ。
「かしこまった」
キーのカミと呼ばれたスキンヘッドおっさんが返す。
どうやらこの場には他に信吉と孫七郎というやつがいるらしい。誰か知らんが。
「さ、孫七郎殿。ガツンと思いの丈を筑前殿にお伝えなされ」
なんとスキンヘッド氏がこっちに顔を向けて話しだした。目の前数十センチの人に話しかけるようなトーンで。
ワイのすぐ右隣に誰かいるのかと思ってそっちを見たら誰もいない。いやむしろいっぱいいる。
ここで初めて部屋全体を見渡すとワイの周りはおっさんだった。おっさん、おっさん、おっさん。おっさんの園。
なんだか興奮してきたな。
正方形に近い、教室よりも広いような部屋の真ん中にぽつんと座るワイとスキンヘッド氏。正面にボスっぽいおっさん。そして両サイドの壁際にはおっさんたちが群れをなしてあぐらで座る。みんな古風な服着てる。頭はヒラヒラ帽子かスキンヘッド。
ここで時代劇でも撮影してんの?
ボス
お お
お お
お お
お スキン ワイ お
お お
お お
お お
お お
右に孫七郎と思しき距離感の人はいない。なんかみんな遠い。
ワイは再び左を向いて自分の鼻を人差し指で指差す。スキンおっさんが力強くうなずく。
え、ワイ、孫七郎なの?
へー、そうなんだ。
あの孫七郎がワイだったなんてなあ。
いや誰?
ここどこ?