孤児の私が、聖女様の子分になりました。王子様は秘密の金づるだそうです。
「腹減った、、、」
私の名はナッツ、13歳くらいの女の子だ。
と言っても、孤児なので、本当の年齢なんてわからねぇ。
女の子といっても、見た目は男の子だ、、、オシャレって何だろ。
金髪なはずですが、泥で汚れている。
「今年も不作か」
教会でぼやく。今年も、畑の用水路に水が無い。
「おねえちゃん、王子様が畑を見に来るって」
教会に集まった子供たちが寄ってくる。
読み書きを教えるのは私の役目だが、私だってよく解っていない。
教会に来たのは聖女見習い一人だった。
「なんだ、しけてるな」
灰色の祭服、銀髪がキラキラしており、恵まれた暮らしをしてるのが分かる。
私たちは、泥だらけなのに。
小さい子たちは寄っていくが、私は遠目に見ているだけ。
「聖女様は魔法を使えるの? 見たい!」
子供は無邪気だ。魔法なんてあるわけない。
聖女見習いが、子供から四角いハンカチを借りる。
「この横じま模様のハンカチ、今から魔法で模様を変えます」
呪文を唱えながら、手の中でまるめて、広げて見せた。
「はい、縦じま模様になりました、拍手!」
子供たちが、呆れて笑っている。そりゃそうだ。
「そこのお嬢さん、教会を案内していただけませんか?」
聖女見習いが私を見ている。
なぜ、こんな私が女だと思った?
「いいぜ」
「ここで最後、治療室だ」
部屋の中には、ケガや病気で動けない子供が寝ている。
聖女見習いが、一人ひとりに声をかけていく。
(金持ちなら、薬くらい持って来いよな)
「次は、用水路が見たいです」
「少し歩くぜ」
わざと遠い用水路に向かう。
「ほら、これが用水路だ、水がほとんど流れていないだろ」
「そうですね、困りましたね」
能天気な感想だな、オイ。
ん? 聖女見習いが、用水路の上流、山を見ている。
「水源は山奥だ。男でもキツイ場所、誰も見に行かねえぜ」
「大人たちが二つに割れて、いがみ合っているんだよ」
子供でも分かることを、大人は、大人の事情だと言って、動かない。
何も出来ない自分が、悔しい。
「子供がそんな悲しい顔をしないの」
「大丈夫、大人を動かすのは、私にまかせなさい」
ん? 聖女見習いって、何者?
◇
翌朝、治療室から、ケガや病気の子供たちが起きてきた。
「神父様、おねえちゃん、私、歩ける」
奇跡が起きた。これが聖女様の力なのか?
神父様に、聖女様の場所をたずねます。
「大人たちを連れて、水源を見に行ったようじゃ」
「あんな山奥まで? あんな華奢な令嬢が?」
男性の大人でも、キツイのに?
「ナッツ、これを子供たちに配ってくれんか」
「なにこれ? 非常食用のパンじゃん」
教会にパンがたくさん置いてあります。
「聖女様が、隣街などで買ったようじゃ」
「へぇ~」
子供たちを連れて、久しぶりにピクニックへ行くことにしました。
畑の見える高台で、みんなでパンを食べます。
空が青いです。
「あれ? お前たち、仲良くなったのか?」
大地主の息子と、敵対する大地主の娘が、一緒にパンを食べています。
大人が山に向かったので、教会に預けられた二人です。
親父同士が仲が悪いので、子供同士も話すなと言われていたはず・・・
「うん、聖女様が来て、僕たちが二人で握手したら、お父さんたちも握手してた」
「聖女様の手、温かかったよ」
なんだ? よくわからないことが起きていたようです。
「まぁ、いいか」
あの聖女様の能天気が、うつったようです。
でも、この子たち二人は、大きくなったら結婚する、そんな気がします。
「おねえちゃん、水が来た」
え? 用水路に水が流れ、キラキラ輝いています。
「これで、今年は豊作になる・・・」
◇
王子様たちが、帰るからって、教会に来ました。
王子様は、金髪でイケメンでした。
私は、思い切って、聖女様にお願いしました。
「聖女様、私を子分にして下さい」
「いいわよ、私に可愛い子分が出来ちゃった」
ギュってされました。聖女様は暖かいです。
「聖女様は、王子様と結婚するのですか? お似合いだと思うのですが」
この二人は、いつか結婚する、そんな気がします。
聖女様と王子様が、困った顔で、私を見ています。
「う~ん、王子様は、私の、、、、金づるよ、これ内緒よ」
王子様は、両手を広げて、天を仰ぎます。
こんなポーズをする人、初めて見ました。
━━ FIN ━━
お読みいただきありがとうございました。
よろしければ、下にある☆☆☆☆☆から、作品を評価して頂ければ幸いです。
面白かったら星5つ、もう少し頑張れでしたら星1つなど、正直に感じた気持ちを聞かせて頂ければ、とても嬉しいです。
ありがとうございました、読者様のご多幸を祈願いたします。
この短編は独立していますが、フランが主人公の短編
「聖女は謙虚に成り上がる!婚約破棄の原因は、私が平民だから?あんたの浮気が原因でしょ?」
https://ncode.syosetu.com/n8552id/
と一緒に読まれますと、さらに面白いと思います。