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キミの幻影
「その後、俺は『ゲーム』にまだ勝ってはいない」
墓石の様に、ただ立っている少年の目に光を呼ぶ。
俺は、俺と桜庭の物語を絶やしてはいけないと思った。
これ以上、過去の記憶を絶やしてはいけない。
これ以上、命を落とす御使いを増やしてはいけない。
これ以上、絶望に苛まれる幻影を増やしてはいけない。
「これで俺と桜庭の物語は終わりだ。キミの使命に役立つことを、願うよ」
俺は、少し目に光を取り戻した少年の元を去る。
もう1つの分家の末裔であり、小さいながら重い使命を背負った、少年に。
「もう15年前、か」
15年。
それだけの間、桜庭の生まれ変わりと思しき者には出会っていない。
でも。
俺は探し続ける。
このゲームに、負ける訳にはいかないのだから。
"心から屈服するまで、負けじゃない"
そう言ったのも、桜庭だ。
だから、俺は諦めない。
時間の流れに屈服しない。
そして、今度こそあの懐かしい声で呼んで貰おう。
俺の名前を。
「キミ」じゃなくて、「悠」という名で。
もう、桜庭家という柵は解けたのだから。
もう、幻影ではないのだから。
「キミ」はもう幻影じゃない。
どんな名前かも分からない、桜庭の生まれ変わりももう幻影じゃないのだから。
今日も、俺はゲームに挑戦し続ける。




