王子2
「王妃様主催の妃教育?」
「あぁ。シルバー夫人が辞めてしまったので他に適任者が見つからないんだ」
「あれは、あのおばさんがいけないのよ!何度も同じことをやらせてはダメだしするんだもの。私は完璧にやっているのに!男爵家に居た時は誰もおばさんたちのような事は言わなかったわ」
「アリス、シルバー夫人が教えていたのは高位貴族令嬢としてのマナーなんだ」
「?令嬢のマナーに高位も何もないでしょう?マナーはマナーよ?」
「少し違うんだよ……」
「何も違わないわよ。エドワード様までおかしなことを言わないで」
「う…ん……」
高位貴族と下位貴族の違い。
それは天地ほど違うものだ。
だが、アリスを傷つけずに説明する事は難しい。
「折角、エドワード様が、あの口煩いおばさんをクビにしてくれたのに……」
シルバー夫人は自ら辞職していったのだが、アリスは私が夫人を辞職させたと思っている。
訂正しようにも、最初の教育係をアリスの目の前でクビを言い渡したせいで他の教育係も同じだと勘違いしてしまっているのだ。
「ねぇねぇ、エドワード様。私にはもっと優しい先生が良いわ。王妃様の指導も今までの先生たちみたいに厳しいはずだもの。虐められるかもしれないわ。エドワード様から上手く断っておいて頂戴」
「アリス、両陛下が決めた事は絶対なんだよ」
「そんなぁ~~~」
可哀そうに思うが、こればかりは仕方ない。
「王妃様は御優しい方だ。アリスを害する事なんてないよ」
「でも……王妃様はお義姉様を凄く気に入っていたのでしょう?城のメイドたちが言っていたわ。私とお義姉様を比較して酷い事を言われるに決まっている。エドワード様、怖いわ……」
「それなら大丈夫だ」
「王妃様の教育を断わってくれるのね!」
「違うよ。アリスの教育に私も参加するんだ。万が一、王妃様に何かされたとしても助ける事が出来る」
「え?エドワード様も参加するの?」
「僕だけじゃない。父上も一緒だ」
「国王様も……」
「父上は僕たちの事を応援してくださっている。私たちが傍にいるならアリスも安心だろう?」
「……そうね」
何故か浮かない顔のアリスだが、一体、どうしたのだろう。
王妃様からの教育に不安なのだろうか?
だが、こればかりはどうしようもない。