表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/70

騎士団長の息子

かつての王都は荒んでいた。

活気に溢れていた街並みはスラムと化している。


敗れた民になったせいか、それとも暴力化した後に襲った諦念か。


「上がアホだと国が亡ぶ典型だな」 


王を名乗った男は、この荒廃を見たのだろうか?

瓦礫が積まれ、ゴミが散乱している町を。再建するのに何年かかるか分からないというのに。悔い改めることをしない男だ。今も「何が悪かったのか」と嘆いているのだろうか?それとも我々に対する怨嗟か。帝国軍人はあの男(エドワード)は後悔していると言うが、到底信じられない。


戦争が終わった事を伝えに言った時の声がこだまする。



『何の真似だ!? 何故こんな真似をした!』


『僕を裏切るだけでは飽き足らず、帝国に祖国を売るとは!!!』

 


仇敵と言わんばかりに睨まれたが、言っている意味に心当たりがなかった。

裏切りならお前が先だ。

祖国を共和国に売り渡したのもお前だ。


言いたいことは山ほどあると言うのに何故か、言葉に出る事は無かった。


『王都民は受け入れましたよ、我々を』


それだけ告げると踵を返した自分の行動が信じられなかった。


今思うと怒りを通り越して、憐れみすら覚えるのだ。彼は何を恨めば良いのか分からず彷徨っていたのだろうから……

だがそんな彼には最早、何の力もない。いや仮に力があったとしても彼の望む世界が訪れることはない。

そう確信すると胸の奥底にある澱のような物が消えていった。



内部から食い散らかそうとする共和国の工作員はまだ此処にいる。

王都は数年後には中立の自治領が誕生する。帝国の肝入りだ。経済都市として発展する事は間違いない。共和国も更に動くはずだ。いや、もう動いているに違いない。

獲物が網にかかりやすいように誘導するのも旧王国人の務めだ。


地下に潜ったネズミどもを炙り出したら、あの男に見せにいくのも良いかもしれない。


  



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ