表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/70

新王

何故だ!?

どうして、こんなことになった?


王宮の周りをおびただしい数の軍隊が取り巻き、訳も分からないまま圧倒的な大人数で囲い込まれた。身に付けていた武具を全て取り上げられた。そのまま塔に連れて行かれた。塔の小窓からは帝国の旗が王宮に掛かっているのが見えた。


これはいったい、どうしたというのだ?

帝国が何故!?


塔での幽閉。

それは思っていたよりも酷くはなかった。元々、市井の身分の低い女性を囲うために何代か前の国王がわざわざ建てたものだ。中は貴族牢よりも良いくらいだった。帝国軍の指揮官から説明を受けた。僕はリベルタ共和国に踊らされていたということを。彼らの目的は「革命」の輸出。リベルタ共和国は他国に多くの間者を送り込んで「自由と平等の精神」を広めている。それだけを聞けばとても良いことをしているように思えるが、実際はそうじゃなかった。思想が汚染された国は大なり小なり痛手を受けたという話だ。彼らの甘言に乗せられた者達の末路は悲惨としか言いようがなかった。


『共和国人が何故、思想の輸出を始めたかご存知ですか? 自国の国王を始め王族の死刑、大勢の貴族を断頭台に上げた彼らが造った国。そんなもの、他国は誰も信用しません。国交を結んだ処で何時後ろから撃たれるか分かったものではありませんからね。勿論、共和国と国交を結んだ国もあります。その殆どが小国ばかり。国力が同じか上の国はまともに相手はしませんよ。だからこそ、意識改革を狙ったんでしょうね。他国の価値観を自分達に染め上げるという異常な行動を――』 

 

説明されたときに全貌が嫌でも理解でき、僕は眩暈がした。


耳触りの良い言葉に酔いしれ、国を破滅させた王。

いや、王ですらない。簒奪者、偽王。それが僕だった。


僕の政府は解体され、多くの者達が処刑された。


国家反逆罪として―― 



トムとアンは真っ先に処刑された。

王都民を煽り続け、間違った報道をし続けたとして。

大勢が死んだ。

宰相位に就いていたエドはいつの間にかいなくなっていた。新政府発足から片時も傍を離れなかったというのに……。不思議に思っていたところ、帝国軍人が教えてくれた。なんでも、彼は共和国の工作員の一人だったのだ。そのため、尋問室で情報を吐かされているらしい。

処刑された売国奴のリスト。

帝国はそんなものまで作って僕に渡してきた。

見たくもないが、見ない訳にもいかない。リストの中にジンが居なかった。トム達とつるんでいた彼だが何故?と疑問に思ったものの、ジンは売れない芸術家だ。政治批判はしても政治そのものには関わっていなかったことを思い出した。


「結局、ジンが僕達の中で一番正しかったのかも……」


捻くれ者だったが、思い返してみると間違った事は言っていない。

世間を斜めに見ていた彼だが「政治なんて所詮、綺麗ごとではできない」と言ってよくトム達と口論していたのを思い出す。


こうして、以前なら思い出しもしなかった昔の事が次々と思い出されていく。娯楽のない場所だ。時間だけはあった。恐らく、僕も彼ら同様に処刑されるだろう。それが明日なのか、一週間後なのか、それとも一年後なのかは分からない。僕と共に捕まったアリスは自我を失い精神病院に移されたと聞いた。元々、精神不安定な処があったのでそのせいだろう。


残りの時間がどれだけあるか分からないけど、僕は懺悔の日記を書き続ける。

死後に誰かが読んでくれるといい、そう願いながら―― 



 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まぁ帝国なら反面教師用の文献として残しそうではある
[良い点] お前(バカ王)、反省する機能とかあったんだ!?
[一言] やらかしたアホ王子の言い訳日記とか、反面教師にもならんやろ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ