王子
「我が国も議会政治に移行していくべきだ!」
「おいおい、うちの国は元々議会制だろう?何を今更……」
「そうとも言い切れん!前時代的な議会制だ。国王の力が強すぎる」
「王妃がいるだろう?確か共同統治ってやつか?しているはずだ」
「あんなもの所詮名ばかりのものだ!裏では国王が独裁を敷いているに違いない!」
「まあ、どちらにしても王家に力が集まり過ぎているな」
「ああ、時代は変わり始めている。何時までも一部の権力者たちが国をいいように操っていくのはよくない!」
下町に酒場で若い男達が頭を突き合わせて自国の将来を語り合っている。
これだ。
これこそ僕が求めていたものだったんだ!
「エドもそう思うだろう?」
「勿論!民衆が圧制に苦しめられているのは特権階級が居るからだ!」
「そうだろう!お前も同じ意見か!飲め飲め!今日は俺の奢りだ!」
この場所で僕は「エド」と呼ばれている。
王子である事は内密でお忍びできているのだ、父上には「民の暮らしぶりを直で見て感じたいのです」と要望したら酷く喜ばれた。下々の者達の声を聞くのは王族として大事だと同志に教えられたからな。ヴィエンヌ王国で出会ったリベルタ共和国人。彼らとの友情は一生の宝だ。今までにない発想と価値観。是非とも我が国にも導入したいものだった。
彼らは言ってくれた。
「我々は友人というよりも同じ志を持つ『同志』だ!君が導く国はきっと今よりも素晴らしいものになる」と。
「エドワード。若い者が失敗の二度や三度あるのは当然だ。それをさも君一人の責任とされるのは間違っている。コムーネ王国が窮地に陥っているのには他にも何か理由があるに違いない」、そう言ってくれた。
彼らと話しているうちに「確かに」と思える場面が幾つもあった。年若で世慣れていない僕にこれ幸いと罪をでっちあげ責任を負わされている、と。そうでなければ変だ。たかが婚約破棄だぞ?それでどうかなってしまう方がおかしい。以前、アレックスが僕のせいで多くの者が不幸になったと言っていたが、今思うと誇張して伝えてきた可能性がある。
そうだろう?
一般庶民が集う「酒場」はこんなに活気に溢れているじゃないか!




