宰相の息子1
午後のティータイム。
何時ものメンバーでの楽しいお茶会。
ちらりとアレックスを盗み見る。
変わらない穏やかな笑顔だ。
ワザとではないにしても……あんな会話を聞いてしまった身としては気まずい。もっともアレックスはあんな事があった後も何もなかったかのような態度だ。こういうタイプが政治家向きなんだろうな……。
「うちの馬鹿王子がヤバいかもしれないぞ」
突然アテナ嬢がエドワード殿下の話題を出した。
ヤバいとはどういう事だろう?
元々「ヤバい」王子様だ。
「アテナ、一体何がヤバいんだい?エドワード殿下が愚かでヤバ過ぎる王子様である事はココにいる全員が知っている事だよ?」
「アレックス……相変わらず手厳しいな。だが事実である限り否定も出来ない処が私も辛い」
アテナ嬢も十分辛辣だ。
まあ、ここにいる皆が殿下に好意的でない者ばかりだからな。気にも留めないが、もう少し気を遣うべきだろうな…………。
「リベルタ共和国の者と親しくしている」
「「「……え???」」」
残り三人の声が揃った。
意外な国が出てきたものだ。
「リベルタ共和国の参加は無かったはずだが……」
アレックスが確認するかのように言う。
「ヴィエンヌ王国に音楽留学で来ている学生らしい」
「「「……あぁ……そうか」」」
またしても三人の声が被った。
「音楽の都」と名高いヴィエンヌ王国は、自国の特性を活かして音楽留学生を幅広く受け入れている。たとえヴィエンヌ王国と微妙な関係の国であったとしても、犯罪者でもない限り受け入れる。そういう国だ。だからこそ自国で音楽活動が出来なくなった人達がヴィエンヌ王国に亡命するケースが多い。
中立国だからこそできる行為だ。
まあ、その中立の大半が帝国の後ろ盾あっての事だろう。そうでなければ危ない橋を渡り過ぎている。
それにしても、リベルタ共和国の人間とは。我が国と対極といってもいい政治思想の国だ。国同士の付き合いは最小限といってもいい。殿下は理解して親しくしているのだろうか。……ダメだ。きっと理解していない。思想が違う国の人間だとしても「そうか、だからどうしたんだ?」と感じる位だろう。
きっと三人とも同じような事を考えているんだろう。
厄介な事になった、と。




