騎士団長の息子2
全ては先代国王の御乱心から始まった。
小国同士の小競り合いを続けていた我がコムーネ王国が政策を逆方向に転換したのは戦争を停止したことが切っ掛けだった。
戦争の停戦。
それ自体はよくある事だ。問題は出征した先代国王が負傷して帰ってきたことだ。戦地にいたのだ。負傷する事など珍しくもないと思うかもしれないが、先代国王は参謀本部にいての負傷だった。
本来、参謀本部は国の中枢、つまり王都に置かれるものだが、コムーネ王国は少し違った。戦地の傍近くに置かれていたのだ。それというのも数年間勝ち続けた故の結果だった。そう、コムーネ王国は連勝し続けていたのだ。それも先代国王が即位してからずっと。
先代のエマヌーレ国王。
彼は若くして即位し、危うかった戦況をひっくり返し勝利に導いた英雄であった。貿易に力を入れコムーネ王国の経済を活性化させ、友好国から王妃を娶り、跡継ぎにも恵まれた。彼の治世は順風満帆なスタートを切っていた。
それが一度の挫折でここまで真逆の政策を取ることになるとは誰一人として思わなかった。
私にとって、いや、大多数の人にとっては「挫折」とは言い難い。
どちらかといえば「乗り越えられる壁」とも言えるものだ。
だが、今まで失敗一つした事のない天才と言えるべき人物にとってはこれ以上にない「挫折」だったのだ。その事を周りが気付いたのは全てが終わった後の事。
「平和主義」を唱えて全てをひっくり返した後の事だったのだ。




