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国王3

「本当ですか!?本当に僕とアリスとでヴィエンヌ王国の使()()()に加われるのですか!?」


「ああ、本当だ。他には宰相の息子や近衛騎士団長の長男、その二人の婚約者の令嬢も一緒に参加する」


「父上!ありがとうございます!誉れあるヴィエンヌ王国行きの使()()()に僕とアリスを選んでくださって心よりお礼申し上げます!」


「エドワード……此度は、若い世代だけでの交流会となる。お前は出来る限りアリス嬢のフォローに徹しろ。宰相や騎士団長の息子たちが諸外国の王侯貴族の相手をしてくれる」


「父上、それでは僕とアリスが他国の王族たちと交流が出来ないのではありませんか?」


「……それでいい」


「は!?よくはないでしょう。僕は王国の唯一人の王子、アリスはその僕の婚約者なのですよ?他国の者との交流は僕達が先頭になってするのが筋というものです!」


()()()()()()()そうだな。

今まではキャサリンが婚約者であったからこそ、エドワードは次期国王と見られていたのだ。そのキャサリンの婚約者でなくなったエドワードの価値は著しく低い。


王妃の話では、キャサリンとの婚約破棄によってエドワードは王位継承権を返上したもの、と見られているという。

そんなバカなと思うものの、宗主国の皇族を蔑ろにするという事は、そう言う意味を持つのだと諭されてしまった。それが無くとも、エドワード程度ではキャサリン同様の活躍は期待できない、とも言われてしまった。流石にそれは言い過ぎだと思うが、王妃の笑っていない目を前にすると反論する事が出来ない。


「エドワード、他国は既にキャサリンが王国に居ない事を知っている。それ以前に、お前の新しい婚約者がキャサリンの義妹である事も承知の上だろう。そんな中で親しく付き合ってみろ、必ず、他の者はキャサリンとアリス嬢を比べるだろう」


「言いたいことは分かりますが、最近ではアリスも随分とマナーが良くなってきています。そこまで心配なさる必要は無いと思います。寧ろ、アリスの良さを理解していただく絶好の機会です!」


「……最低限の礼儀作法が出来るようになったのは確かに喜ばしいが、問題は、それ以外の事だ。アリス嬢の妃教育はマナーに集中しているが、礼儀作法だけやっていれば良い訳ではない。

他にも学ばなければならない事は山のようにある。アリス嬢は出来て当たり前の事が出来ないでいる状態なのは今も変わらん。親しく交流したいお前の気持ちは分からなくもないが、産まれた時から高位教育を受けてきた他の王侯貴族たちとの会話にアリス嬢が付いていけるはずもあるまい」


「そ、そのような事はやってみなければ分からないではありませんか!幸い、訪問するのはヴィエンヌ王国。ヴィエンヌ王国は芸術と音楽が盛んな国です。音楽が得意なアリスならヴィエンヌ王国の者達と親しくなれるはずです!」


息子よ。

お前は何を言っているんだ。交流するのは王侯貴族であって、一般市民とではないのだぞ?音楽家や芸術家と交流するとでも思っているのか?


ヴィエンヌ王国は音楽が盛んだというが、王侯貴族は「鑑賞する側」だ。自らが音楽家になる者などおらん。


アリス嬢がプロ並みのダンスや音楽を披露した処で意味はない。

何故、それが分からんのだ?



「父上ご安心ください!僕はアリスがキャサリンよりも素晴らしい女性である事を認めさせて御覧にいれます!他国で認められれば、我が国の頭の凝り固まった貴族たちもアリスを正式に王子妃と認めるでしょう!ああ!ヴィエンヌ王国に行くまでの間に、アリスに似合ったドレスを新調しなければなりませんね!なにしろ()()()()()()()()()()()のですから!それでは父上、僕はこれで失礼致します」


エドワードは一礼すると優雅さを失わない速さで退出した。

本人が申告した通り、今からアリス嬢の元に行くのだろう。


頭が痛い。

王妃に「エドワード殿下に婚約者共々、大人しくヴィエンヌ王国に滞在するように説得なさっておいてくださいね。間違っても御自身たちが前に出て活躍するなど馬鹿げた振る舞いをしようなどと考えないように諭しておいてください」と言われていたというのに。


どうするべきか……。


ここは宰相や近衛騎士団団長の子息たちに期待する他あるまい。

エドワードが退出した直ぐ後に、宰相と近衛騎士団団長を呼び出した。



「忙しい処、時間を割いて済まぬな。そちらに少々頼みがあってな」




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― 新着の感想 ―
[一言] 王子の現実認識が回を重ねるごとに退行しているような。なんでここまでアリスに対して楽観的になれるのやら。
[一言] 仮に演奏する側になるとしても演奏する曲に対する深い知識は必要だろうしねぇ
[一言] 少々……。頼みごとの正しい規模としては「少々」にあまりあると思うのですが。
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