第22話 スイセイ完全復活
【3】
目を覚ました先はどこかのテントの中。
野戦病院なのかと見回してみるがテントの中には俺しか居らず、無駄に広い空間を何故か寂しく感じた。
かけられていた毛布を取り払って身体を起こすと、痛みがなかったのを不自然に感じて服を脱ぎ捨てる。
すると傷口は全て塞がっており、流れた血が綺麗に拭き取られていた。
傷が全て治っている事へ不信感を覚えるよりも先に、机の上に乗っている木箱に目が行き、それが誰の物で誰がここまで運んだかは既に分かっていた。
そうして立ち上がり、木箱まで歩み寄って箱を手に取り持ち上げると中身は軽く、開けてみると中には衣服。白色の上衣が小綺麗に畳まれて収まっていた。
「これは……」
この服の形状には見覚えがあった、これを見間違える筈はない。
俺が忘れるはずない。
俺が望んだ物だった、俺が欲しかった物だった。
白色の上衣、ゼインとカミラとディオンが着ていた物と同じ上衣が俺の手の中にある。
そしてこの服の意味を俺は知っている、あいつらがわざわざ揃えた意味を知っているからこそ、自然と涙が溢れていた。
『仲間の証』
これがもらえた事、この証を託してくれたみんなのためにも、
「ありがとう──」
箱の底に敷かれていた手紙を握りしめて涙を拭う。
俺は一人じゃない、いつだって繋がっている。
託してくれたみんなが、受け継いだ意志は今ここにある。
今着ているボロボロの上衣を投げ捨てて、託された証に袖を通す。
ちょうど良い大きさの上衣を『誰よりも家族思いで、理想の為に戦い続けた兄』のように着て、『誰よりも優しく、導いた姉』のように締めて、『誰よりも高潔で、騎士道の意志を持った兄』のように襟を正した。
これから先は地獄だと分かっている、
たくさんの人を殺すかもしれない。
たくさんの人に恨まれるかもしれない。
だけど、
それでも行くよ。そう決めたのだから。
勇者──違うな、輝樹を救うために俺は戦う。そして俺は帰りを待っている奴の下に必ず帰るために生き残る。
理由なんてそれだけで十分だ、仲間のために身体を張る以上の理由があるものか。
「俺はようやくあいつらの仲間になれたのかな──」
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