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第13話 あの日見た理想を

【4】


「久しぶり、ゼイン」


 酒瓶一つと杯を二つ手に持って訪れる。


 あの夜ユノがいた場所に、彼が眠っているであろう場所へと足を踏み入れた。

 迷宮に行って、ゼインと出会って、久利と約束を交わして、ユノの本音を聞いたあの日からもう1ヶ月がたった。


 暖かかった気温が肌寒くなってきて本格的に冬になりかけている。


「俺はボチボチうまくやってる」


 やることは多い。


 次の人魔大戦で時間があるとはいえ、勇者を救うためには詰めれるだけ詰めておきたい。


 戦闘技術はもちろんの事、罠の張り方や情報収集など、本当に誰が教えたのか分からないものまでユノから教えられている。


 お前じゃないだろうなと言いながら杯に酒を注いで墓標の前に置くと、不謹慎にも腰掛けているゼインは笑いながら聞いていた。


「凱殻……いや、本当の名は【凱旋せよ、鑛の攻殻】だった。そして凱旋とは帰ること……お前達が作ったあれのおかげで確かに俺はここにいる」


 お前が残した物はちゃんと受け継がれているよ、ゼイン。


「そう言えばユノが料理を作ったんだ。俺が教えてカミラが好きだったらしい物を作ってくれたんだが、クソ不味くて色々と吐きそうだったけど本当にあれであってんのか?」


 杯を飲み干すと旨いと言ってこちらに器を向け、もう一度注げと言わんばかりに手を振っていた。


「それとさ……関係ないかもしれないけど、俺は十八になった。気づいたのは最近で自分じゃ気付かなかったが──」


 手に持っている杯を一気に飲み干す。


 なんだか言い表しづらい味が口に広がり、旨いとは言えそうにない。


「思ってたより旨くないな、お前本当にこれ好きなのか?」


 まだまだガキだなと、バカにするゼインに酒を注いだ。


「お前が残した写真はリビングのすぐに目に着くところに飾ってある」


 ユノがそうした。自分だけで持っている選択肢はできたはずなのに、彼女はあえてリビングに置く事を選んだ。


 それがどういう意味なのか俺は知っているがあえて言わない、言ったら殴られるだけじゃ済まないだろう。


「ゼイン……俺はお前の仲間だって胸を張って言えるのか…………お前の代わりがしっかり出来るか不安だよ」


 正面からかかる強風に前髪が揺れて、変わらず地面に置かれている杯に波立った


「そうだな、代わりなんかじゃない。俺は俺だ」


 やっぱりお前には頭が上がらない。


「また来るよ、次はもっと旨いやつを持ってくる」


 立ち上がると同時に酒瓶を手にして、残っている中身を全て墓標にかけた。


 一滴残らず全て出し切ってから杯を一個だけ置いたままその場を去る。


 そして最後に何処からか聞こえる声に耳を傾けながら、大きな風が通り抜ける。


 ふと顔を上げると、桜の冬芽が一つ。


 なぁ、お前の魔眼ゆめは何を見る



第二章終わり、次から第三章になる


ここまでで「面白い」とか「早く続きを書けやクソが」と思ったら方はブクマに評価に感想、レビューに誉め殺しをよろしくお願いします。枯渇すると死にます。


次の三章では名前だけで出るアレとか、未だに回収されていない伏線。

別れたっきりになってるお友達、後は『これで終わるわけないだろ』と今まで引きずってるものをどうにかします。


今後とも



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