第0話 俺は君のためだけに生きる
「大罪人水成。貴様の処罰が決まった」
それが俺に与えられた名前だった。
狭苦しく、暗い部屋の中に閉じ込められ、まともな飯すら食わせてもらえず監禁される。
出ようとすればいつでも出られる部屋だったけど、出た後に待っているみんなの視線にどうしても耐えられず、繋がれることを選んだ。
ただ怖くて、苦しくて、それでも誰にも言うことなく俺は部屋に閉じこもった。
誰も開けてくる事のない部屋の中を、俺しかいない暗闇の中に塞ぎ込んで、そうしてずっと時間を潰した。
誰も助けてくれることはない、全てが俺を憎んでいると知っていたから。
もうここで死んでもいいんじゃないかとさえ思えた。
沢山の人を絶望の淵に陥れた俺は、順序よく死ぬべきだった。
鎖に繋がれ、人に蹴られ、多くの罵詈雑言を浴びせられ、挙げ句の果てには身代わりとして殺される。
誰も助けてくれない、ずっと一人だった者の末路。
だがそれが、俺が死ぬ事が正しいんじゃないか。
いや、それが正しいことだ。
最後まで一人で、死に絶える意識の中で後悔ばかりを募らせて、でも仕方ないんじゃないかって思いながら正しい出来事を認めた。
なのに。
「生きててくれてありがとう」
彼女は俺は必要としてくれた。
当たり前の言葉が、あって当然の幸せを失った俺にとって、その言葉を他の何よりも欲していた。
生きてていいんだと、俺は生きてもいいんだって。そう思えた。
だからその時決めたんだ。
俺の命は彼女のために使い切ろうと。
そのためならばどんな犠牲でも払ってみせる。
たとえそれが──誰が相手であろうとも。